近藤麻理恵(KonMari)ムーブメントで見えてくるEコマース

消費者が自宅に持ち込むアイテムを選定する手順(と「ときめき」を得られないアイテムを返品する手順)を小売業者側が改善するにはどうすればよいかを学びましょう。そして消費者の真のニーズを紐解き、競争力を大いに高めましょう。

ネットフリックス(Netflix)の新年は、「KonMari~人生がときめく片付けの魔法~(原題:Tidying Up with Marie Kondo)」のドキュメンタリーシリーズ番組で始まりました。各エピソードで、近藤麻理恵は、モノが多すぎる部屋で暮らすカップルに、“コンマリ”流のモノ持ち術や、「ときめき」を得られるアイテムだけをとっておく方法を伝授しています。この番組は大流行し、人々は生活の“コンマリ”化をスタート。放映間もなくして、ソーシャルメディアのニュースフィードは、きちんと折り畳まれた服が並ぶ引き出しの画像であふれるようになりました。

近藤 の人気が大いに高まったのは、ミンテル によるアメリカのオンラインショッピング・レポート(2018年5月)でネットショッピングの小売売上高が過去6年で2倍を記録した時期でした。また、この番組が消費者の反響を呼んだということは、消費者のネットショッピング体験を向上する余地があると言えます。とにもかくにも、消費者は、自身が実際に手にしたことのないアイテムから「ときめき」を得られるかどうかをどのように判断すればよいのでしょうか?

問題は、最初の決定的瞬間が「すでに消費者の自宅に“モノ“がある」状態になるまではやってこないということです。

従来、最初に決定的瞬間が訪れるのは、実店舗で最初に製品を目にした3~7秒と言われていました。店舗ではその場で触ったり、手に取ったり、試着したりしてから、購入するかどうかを決めることができます。しかし現在では、オンラインでの意思決定の瞬間は、グーグルが“ZMOT(Zero Moment of Truth)”と提唱する 時代となり、最初の本当の決定的瞬間は「消費者の自宅に“モノ”がすでにある」という状況になるまでやってこないのです。玄関に届いたばかりのアイテムに「ときめき」は感じられるのでしょうか?ある商品カテゴリーでどのアイテムが他のものよりも「ときめき」をもたらすかどうかを予測できるのでしょうか?また、消費者が、自身の家にすでに届いたものの、「ときめき」を得られないアイテムを返品する可能性はどれくらいあるのでしょうか?

オンラインショッピングで消費者の満足度が最も低いアイテムは衣料品とインテリア用品

コンマリ流の片付けメソッドには、「自宅内の無秩序な状態にアプローチする場合は、部屋ごとではなく、製品カテゴリーごとに行う」と説明されています。そして、おそらく偶然ではないと思われますが、近藤 は片付けを衣料品からスタートします。消費者が頻繁にネットで購入するのは、他のどの製品カテゴリーよりも衣料品です。そしてネットで注文した衣料品に満足する可能性はかなり低いのです。

消費者は衣料品を他のどの製品カテゴリーよりも頻繁にネットで購入し、衣料品に対して満足する可能性はネットで注文する他の種類の製品に比べて最も低いのです。

消費者が辿る評価プロセスを、小売業者側で改善できる好機 がここにあります。サイズの手引きや、消費者レビューのもっと先へ---MeTail などのテック企業はそれを目指しています。MeTailは、消費者が、自身の体のサイズを測定・入力し、そのサイズに 基いたアバターを自身で作成、そのアバターが仮想試着室で服を試着できるようにしました。

家具・インテリア用品は、衣料品と同様に実生活でアイテムを見たときに消費者ががっかりしてしまう可能性が高いカテゴリーですが、ザ・ホーム・デポ(Home Depot :住宅リフォーム・DIY小売チェーン)や 、イケアのような小売業者も、家具・インテリア用品のネットショッピング時の消費者体験向上を目指し、拡張現実 (AR)を使い始めています。

消費者はネットで購入したパーソナルケア 用品・美容化粧品にはおおむね満足していますが、このようなアイテムは通常、補充目的で購入されます。セフォラ やウォルグリーン などの小売店では拡張現実(AR)を採用しているほか、定期購買用のサンプルボックスを導入しています。これにより消費者は、eコマース環境であっても、リスクの低いあるいはリスクゼロの方法でお試しができ、新しいパーソナルケア用品・美容化粧品を発見できるようになりました。

欲しくないアイテムをいつも返品できない消費者は全体の70%

「ときめかない」アイテムはどうなっているのでしょうか? 調査で「完全に満足できなかった服は、いつも返品している」と回答した消費者はたったの30%でした。つまり「ときめかない」服はクローゼットにしまい込まれてしまう可能性が高く、その後“服の山” (Marie Kondoシリーズ番組の各エピソードのDay1には服を積み上げた大きな山が出てきます)へと変貌を遂げ、どんどん山は大きくなっていきます。

「完全に満足できなかった服はいつも返品している」と回答した調査対象はたったの30%でした。

これは、小売業者にとって、消費者が不要なアイテムを返品しやすい環境を作る好機と言えます。なぜなら、イプソスのアンケート調査では「返品は簡単にできる」と回答した人の割合が半数ほどにしかならなかったからです。消費者がアイテムを返品しやすい環境を作れば、小売業者にとってそれが成長の好機になるとはなかなか想像できないでしょう。しかし、寛大な返品ポリシーがあると売上げが増えるという証拠は十二分にあります。消費者は、実店舗にアイテムを返品できることと、返品物を自宅に取りに来てもらえることを、返品手順をより簡単にする方法だとしています。

自動配送車での配送を実施するにあたって、ラストワンマイル の所要時間を短縮する技術の開発・テストが現在進められています。たとえば、Amazon Scout はクーラーボックスサイズの自動配送車で、人が歩く早さで歩道をコロコロと進み、個人宅の玄関前まで物品を配送します。将来、アマゾンプライムの利用世帯がアマゾンに物品を返品できる個人用のScoutを所有できる日もやって来るでしょうか?

近藤麻理恵が絶大な人気を博したことで、小売業にある根本的な問題と小売業者にとっての好機が指摘されました。

近藤が大人気となったことで、根本的な問題が指摘されました。製造業の「問題ではなく、プロセスを修正せよ」という原則を拝借すると、消費者が熱心に家の中を一掃してすっきりさせようとする一方で、小売業者にとっては問題の根幹を解決する好機と言えます。消費者が自宅に持ち込むアイテムを選定する過程や、「ときめき」を得られないアイテムの返品方法を改善する小売業者が出現すれば、そのような小売業者は消費者ニーズを紐解き、大きな優位性をつかむことができることでしょう。

オンラインアンケート調査を通じて自身の体験をすすんで共有してくださったみなさま 、そして、インスピレーションを与えてくださったデジタルマーケティング戦略クラス関連のみなさまに感謝の意を表します。

コンシューマー&ショッパー