データで読み解く日本の世論と政治ー2026年6月
6月の世論は、「物価の高止まりと気候変動への不安が同時に押し寄せる中、春闘の賃上げ効果への期待と生活実感のギャップが続く」という日本の複雑な心理を映し出しています。 「正しい方向に進んでいる」という認識は前月から1ポイント上昇し38%となりましたが、依然として「間違った方向」と感じる人が62%にのぼります。気候変動への懸念が前月比6ポイント増と急伸した一方、インフレは引き続き最大の懸念事項として首位を維持しており、名目賃金の上昇が家計の実感に届いていない現状が浮き彫りになっています。
国は正しい方向に進んでいるのか?
「国が正しい方向に進んでいる」という認識は38%で前月から1ポイント増加しました。前年同月比では+14%と大幅に改善しています。
国際的には、38%が「自国が正しい方向に進んでいる」と答えており、前月から1ポイント減少しました。最下位はフランスで、「正しい方向に進んでいる」と回答した国民は12%です。
日本での懸念事項
日本ではインフレ(34%)が最重要課題として首位を維持し、次いで貧困と社会的不平等(30%)、課税(29%)、気候変動(29%)、犯罪・暴力(25%)が続きます。注目すべきは、気候変動への懸念が前月から6ポイント急増したことです。 気候変動の懸念急伸の背景には、2026年の梅雨の気象的特徴があります。毎年夏に繰り返される豪雨被害や熱中症リスクの高まりが、気候変動を「身近なリスク」として国民の意識に定着させていることが数字に表れています。
一方、インフレは引き続き最大の懸念事項で、前月から変化なし(前年同月比+4ポイント)です。総務省の消費者物価指数によると、2026年5月の全国CPI(総合)は前年同月比1.5%の上昇で、政府補助金の終了に伴い電気・ガス価格の下落が緩和されたことが押し上げ要因となっています。
日本の経済状況
日本の経済状況を良いと考える人は15%で、前月から1ポイント増加しました。
前年と比較すると+2%と緩やかな改善傾向にあります。 2026年春闘では、賃上げ率が5.26%と3年連続で5%を超える歴史的な水準を達成しました(連合第1回集計、3月23日公表)。また、日本経済研究センターによると、2026年1月・2月と実質賃金がプラスに転じるなど、長年続いたマイナスからの転換の兆しが見られます。しかし、名目5%超の賃上げのうち、物価上昇・社会保険料の段階的引き上げ・2026年4月からの子育て支援金の新設などが合計で約4%を吸収し、実際の手取り増は限定的にとどまるとの試算もあります。「賃上げの数字は増えているのに、生活が楽になった実感がない」という国民のフラストレーションが、依然として経済状況への低い評価につながっています。
世界の動向
2026年6月の調査では、世界全体でも犯罪・暴力(32%)とインフレ(32%)が懸念のトップを占めています。イスラエルでは軍事的対立への懸念が前月比11ポイント上昇し、中東情勢の緊張が世論に直接反映されています。アルゼンチンでは失業への懸念が前月比15ポイント増と急増した一方、アイルランドやオランダでは移民管理への懸念がそれぞれ13ポイント増と大幅に高まっており、欧州各国で移民・難民問題が引き続き政治的な争点となっていることが確認されます。
詳細は 世界が懸念していること – 2026年6月をご覧ください。
著者

イプソス日本 代表取締役
内田 俊一(うちだ しゅんいち)
1985年ニューヨーク州立大卒業後、日本の商社、欧州のメーカーを経て、1993 年現イプソス株式会社の前身日本統計調査株式会社入社。2008年同社代表取締役就任。一般社団法人 日本マーケティング・リサーチ協会 前会長。