インバウンド調査とは|訪日外国人向け調査の手法・費用・進め方を徹底解説【2026年最新】
インバウンド調査とは、訪日外国人観光客の行動・意識・消費実態を把握するために行うリサーチです。国内消費者向けの調査とは異なり、①調査対象が「一時滞在中の外国人」であるため接触機会が限られる、②多言語・多文化への配慮が不可欠、③国籍・旅行形態(個人旅行か団体旅行か)によって消費行動が大きく異なる、という3つの特徴があります。訪日外国人旅行消費額は2025年に9兆4,549億円(前年比16.4%増)と過去最高を更新しており、企業がインバウンド需要を取り込むうえで、精度の高い調査設計はこれまで以上に重要になっています。
本記事では、インバウンド調査でわかること、主な調査手法と費用感、進め方、調査設計で陥りやすい失敗までを、観光庁の最新データと市場調査の実務知見をもとに解説します。
この記事でわかること
- インバウンド調査とは|最新の訪日動向データ
- インバウンド調査でわかること
- インバウンド調査の主な手法と費用相場
- インバウンド調査の進め方【5ステップ】
- 調査設計で押さえるべきポイント
- よくある失敗と対策
- よくある質問(FAQ)
インバウンド調査とは|最新の訪日動向データ
「インバウンド観光客」とは、観光・ビジネス・親族訪問などを目的に来日し、一定期間内に帰国することを前提とした、現在日本に一時滞在中の海外在住者を指します(日本に居住している外国人は含みません)。この定義に基づき、インバウンド調査は「今まさに日本を旅行中、あるいは旅行を検討している海外在住者」を対象に実施されます。なお、リピーター(過去に来日経験のある人)ももちろん調査対象に含まれ、初訪日かリピーターかは重要な調査項目の一つです。
| 指標 | データ |
|---|---|
| 2025年の訪日外国人旅行者数 | 4,268万3,600人(過去最多、初の4,000万人突破) |
| 2025年の訪日外国人旅行消費額 | 9兆4,549億円(前年比+16.4%、過去最高) |
| 2026年1〜3月期の旅行消費額 | 2兆3,378億円(前年同期比+2.5%) |
| 2026年1〜3月期 消費額上位5か国・地域 | 台湾、韓国、中国、米国、香港 |
| 2026年4〜6月期の旅行消費額 | 2兆5,096億円(前年同期比+0.2%) |
| 2026年4〜6月期 消費額上位5か国・地域 | 米国、台湾、中国、韓国、香港 |
| 政府目標(2030年) | 訪日6,000万人・消費額15兆円 |
出所:観光庁「インバウンド消費動向調査」(2025年暦年速報、2026年1〜3月期・4〜6月期1次速報)
2026年に入り、四半期ごとの消費額上位国の顔ぶれが変動している点は注目に値します。1〜3月期は台湾が首位でしたが、4〜6月期には米国が首位に浮上しました。このように国籍別の動向は四半期単位で変化するため、自社のターゲット国・地域に絞った独自調査が、公的統計だけでは見えない解像度をもたらします。
インバウンド調査でわかること
インバウンド調査を行うことで、訪日外国人の行動や意識を多角的に把握できます。主な調査項目は以下の通りです。
基本属性・旅行形態
- 国籍・地域・年代・性別
- 個人旅行(FIT)か団体旅行か
- 家族連れか一人旅か
- 初訪日かリピーターか
消費行動・所得レベル
- 富裕層向けサービスが刺さる層か、コストパフォーマンス重視の層か
- 費目別の支出配分(宿泊費・買い物代・娯楽等サービス費など)
- 購入した商品・サービスへの満足度
情報収集・行動チャネル
- SNS・動画サイト(TikTok・YouTubeなど)の利用実態
- 旅行アプリ・口コミサイトの活用状況
- 訪日前の目的地選定プロセスと、訪日後の行動変化
イプソスとTikTok For Businessが共同で実施したグローバル調査では、旅行者の42%がTikTokなどのデジタルプラットフォームを通じて新しい目的地を発見し、37%がそのプラットフォーム上で旅程を確定させていることが分かっています。この調査結果は世界の旅行者全般を対象としたものですが、イプソスはこの傾向が訪日インバウンド集客にも当てはまるとして紹介しています。インスピレーションの獲得から予約までが1つのセッション内で完結する「旅行の圧縮時代」において、検索エンジンでの能動的な情報収集を待つだけでは不十分であり、デジタル上での偶発的な接点づくりがインバウンド集客の重要なテーマになっています。
インバウンド調査の主な手法と費用相場
| 手法 | 特徴 | 向いている目的 |
|---|---|---|
| 出口調査・ストリートキャッチ | 観光施設や空港などで、旅行中・旅行直後の外国人に直接声をかけて実施。事前アポイントが取りにくいため現地での即時実施が基本 | 施設の利用実態・満足度・選定理由の把握 |
| Web調査(オンラインパネル) | 訪日経験者・訪日予定者を対象に、海外パネルを通じて実施 | 訪日前の意識調査、大規模サンプルでの動向把握 |
| SNS・口コミリスニング | SNS投稿や口コミサイトのデータを収集・分析 | 自然発生的な評判・トレンドの把握 |
| 同行観察・エスノグラフィー調査 | 旅行者に同行し、実際の行動を観察・記録 | 言語化されない行動パターンやニーズの発見 |
| 有識者インタビュー | インバウンド業界の専門家・現地旅行会社などへのインタビュー | マクロなトレンドや業界構造の理解 |
費用は手法・対象国数・サンプル数によって大きく変動します。出口調査は現地での人員配置が必要なため単価が高くなりやすく、Web調査は比較的低コストかつ短期間で多国籍のサンプルを収集できます。目的に応じて手法を組み合わせることで、コストと精度のバランスを取ることが可能です。
インバウンド調査の進め方【5ステップ】
- 調査目的とターゲット国の明確化:集客戦略・施設改善・商品開発など、意思決定に直結する問いを言語化し、消費額上位国など優先度の高い国籍を絞り込みます。
- 調査手法の選定:出口調査・Web調査・SNSリスニングなどを、目的と予算に応じて組み合わせます。
- 多言語対応の準備:質問票の翻訳、通訳・多言語対応スタッフの手配を行います(詳細は次章)。
- 実査:出口調査であれば繁忙期・閑散期の両方を含めた実施時期の設計、Web調査であればスクリーニング条件の設計が精度を左右します。
- 分析・レポーティング:国籍・世代・旅行形態別のセグメント分析を行い、マーケティング施策への落とし込みまで含めたアウトプットを作成します。
調査設計で押さえるべきポイント
接触タイミングの制約を前提に設計する
調査対象は現在日本を旅行中の外国人であるため、観光や買い物の合間、または直後に接触する必要があります。事前に連絡先を取得してアポイントを取る手法は現実的ではなく、出口調査やストリートキャッチなど、現地で即時に実施できる手法が基本となります。
多言語対応は「翻訳」だけで終わらせない
質問票の翻訳は、単なる直訳では意図が正確に伝わらないリスクがあります。海外市場調査と同様、原語→現地語→原語への逆翻訳で照合する「バック・トランスレーション」の実施や、現地の文化的ニュアンスを踏まえた表現調整が、データ品質を左右します。
国籍・地域ごとの嗜好の違いを前提にする
訪日外国人といっても、国・地域ごとに嗜好や消費行動は大きく異なります。前述の通り、消費額上位国の顔ぶれも四半期単位で変動しており、「訪日外国人」を一括りにした調査設計では実態を見誤るリスクがあります。ターゲット別のセグメンテーションを前提とした調査設計が不可欠です。
FIT(個人旅行)と団体旅行を区別する
個人旅行(FIT)か団体旅行か、家族連れか一人旅かによって、情報収集の方法も消費行動も異なります。観光庁の調査によると、団体旅行から個人旅行(FIT)への移行は継続的な傾向として確認されており(2012年は個人手配比率60.8%、2018年には78.7%まで上昇)、旅行形態別の分析軸を持つことが重要です。国・地域によってもFIT比率には差があり、一般的に欧米諸国からの旅行者はFIT比率が高く、団体ツアーの利用率が相対的に高い国・地域もあるため、ターゲット国に応じた前提の確認が必要です。
よくある失敗と対策
| よくある失敗 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 事前アポイント前提の調査設計で対象者が集まらない | 訪日外国人という対象特性を考慮していない | 出口調査・ストリートキャッチなど、現地即時型の手法を基本とする |
| 質問の意図が正確に伝わらない | 直訳のみの質問票を使用 | バック・トランスレーションと文化的ニュアンスの調整を行う |
| 「訪日外国人」全体の傾向として一般化してしまう | 国籍・地域別のセグメント分析を行っていない | 消費額上位国など、優先度の高い国籍ごとに分析軸を設計する |
| 公的統計と自社調査の使い分けができていない | 観光庁データで十分と誤解し、自社商材に特化した調査を実施しない | マクロ動向は公的統計、自社商材への反応は独自調査と役割を分ける |
よくある質問(FAQ)
Q. インバウンド調査と観光庁の統計データは何が違いますか?
A. 観光庁の「インバウンド消費動向調査」は、訪日外国人全体のマクロな消費動向(総額・国籍別構成比・費目別支出など)を把握するための公的統計です。一方、企業が実施するインバウンド調査は、自社の店舗・商品・サービスに対する満足度やニーズなど、意思決定に直結する独自データを得るためのものです。マクロ動向の把握には公的統計を、自社商材への反応把握には独自調査を、という使い分けが基本です。
Q. インバウンド調査はどの手法から始めるべきですか?
A. 予算が限られる場合は、SNS・口コミリスニングなど比較的低コストな手法から着手し、仮説を立てたうえで出口調査やWeb調査に進む方法が現実的です。すでに来店・来場している外国人がいる場合は、出口調査による直接ヒアリングが最も解像度の高いデータを得やすい手法です。
Q. 訪日前の外国人にもアプローチできますか?
A. 可能です。海外在住の訪日予定者・訪日経験者を対象としたWeb調査(オンラインパネル)を活用することで、訪日前の目的地選定プロセスや情報収集チャネルを調査できます。
Q. 国籍によって調査設計を変える必要がありますか?
A. 推奨されます。消費額上位国の顔ぶれは四半期ごとに変動しており、国籍・地域によって消費行動や情報収集チャネルが大きく異なります。「訪日外国人」を一括りにせず、ターゲット国籍ごとのセグメント分析を前提とした設計が精度を高めます。
まとめ:インバウンド調査は「量」の公的統計と「質」の独自調査の両輪で
訪日外国人旅行消費額が過去最高を更新し続けるなか、インバウンド調査の重要性は今後さらに高まります。観光庁の統計はマクロな動向把握に有効ですが、自社の商品・サービスに対する具体的なニーズや満足度を把握するには、出口調査・Web調査・SNSリスニングなどを組み合わせた独自調査が不可欠です。事前アポイントが取りにくいという対象特性、多言語対応の品質、国籍・地域別のセグメンテーションという3つのポイントを押さえることが、精度の高いインバウンド調査の成功につながります。
90か国以上で実績!イプソスのインバウンド調査・海外市場調査
イプソスは世界90か国以上で市場調査実績を持つグローバルリサーチファームとして、多言語での質問票設計や、国籍・文化的背景を踏まえた調査設計に強みを持っています。訪日外国人の消費者体験(CX)調査から、SNS上の旅行者行動分析まで、インバウンド需要を取り込むための調査を幅広くご支援しています。
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