データで読み解く日本の世論と政治ー2026年5月
5月の世論は、「大企業は儲かっているのに、私たちの生活は物価高と税負担への不安で苦しくなる一方だ」という国民のフラストレーションを如実に表しています。
政府は夏に向けて電気・ガス代補助の再開などを検討していますが、国民が求めているのは一時的な対症療法ではなく、「物価上昇に負けない手取りの増加」と「将来不安のない納得感のある税制」です。このミクロの痛みをどう払拭していくかが、今後の「国の方向性」への評価を左右する最大の鍵になるでしょう。
国は正しい方向に進んでいるのか?
「国が正しい方向に進んでいる」という認識は37%で前月から2ポイント減少しました。前年同月比では+18%と大幅に改善しています。
国際的には、39%が「自国が正しい方向に進んでいる」と答えていて、前月から1ポイント増加しました。最下位はフランスで、「正しい方向に進んでいる」と回答した国民は12%です。
日本での懸念事項
日本ではインフレ(34%)が最重要課題であり、次いで貧困と社会的不平等(31%)と課税(31%)が同率です。国家間の軍事的な対立(23%)への懸念が前月から6ポイント下落しました。
これは、4月に極度に高まっていたイスラエルとイランの直接衝突の危機が、5月に入り一旦小康状態(全面戦争の回避)を見せたことが最大の要因です。
ただし、前年同月比で見ると依然として「+12ポイント」と非常に高い水準にあります。目の前のパニックは過ぎ去ったものの、中東情勢の不安定さや、それがもたらす原油高・エネルギー供給リスクに対する潜在的な不安は、日本人の心の奥底にしっかりと根付いてしまっています。
日本の経済状況
日本の経済状況を良いと考える人は14%で、前月と横ばいです。また、前年と比較すると+7%と高い水準です。
トヨタ自動車が日本企業として初めて売上高50兆円を突破するという歴史的な決算発表があり、日米の株価指数も高値圏で推移しました。しかし、こうした「大企業の好業績」や「株高」が、一般家計に全く波及していないことが数字に表れています。円安基調(160円台の攻防)が続き、実質賃金のプラス転換が肌で感じられない中、国が「正しい方向」に向かっているという指標も2ポイント下落してしまいました。
世界の動向
2026年5月の調査では、米国での汚職懸念やハンガリーでの国への高評価が過去10年で最高水準を記録したほか、イスラエルでの犯罪懸念が前月から急増するなど、各国の世論に大きな動きが見られました。カナダのインフレやポーランドの医療、ブラジルの税金問題も含め、各国がそれぞれ独自の多様な課題や関心事に直面していることが浮き彫りになっています。
詳細は 世界が懸念していること – 2026年5月をご覧ください。
著者

イプソス日本 代表取締役
内田 俊一(うちだ しゅんいち)
1985年ニューヨーク州立大卒業後、日本の商社、欧州のメーカーを経て、1993 年現イプソス株式会社の前身日本統計調査株式会社入社。2008年同社代表取締役就任。一般社団法人 日本マーケティング・リサーチ協会 前会長。
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