今月の5つの注目点「世界が懸念していること調査」より
世界の様々な国や地域の人々に影響を与えているものは何か、「世界が懸念していること調査(What Worries the World)」から探ってみました。グローバルな状況を把握するためにフルレポートをご覧ください。
イプソスが毎月実施している「世界が懸念していること調査」では、10年分のデータをもとに、一般の市民が現在最も重要な社会問題や政治問題は何であると考えているのかを調査し、最新のスコアとその背景を探ります。今ウェーブは、2022年12月22日~2023年1月6日に実施されました。
今月の主な注目点は以下の5つです:
1. コロナへの懸念、アジアで再び
2022年にパンデミックへの懸念が一旦は落ち着いたものの、新年を迎えて懸念が再び高まっています。今月は29カ国中18カ国で新型コロナウイルスのスコアが上昇しました。グローバルの平均では2ポイントの上昇にとどまりましたが、アジア太平洋地域では顕著な上昇が見られ、マレーシアとインドでは12月以降2桁の増加が見られました(それぞれ18ポイントと11ポイント)。
この地域が上位を独占し、コロナについて最も懸念している国はAPACの4カ国となりました。マレーシアは37%がコロナウイルスを懸念事項として選択しており、次いで日本(33%)、タイ(27%)、インド(26%)となっています。
マレーシアのイプソスカントリーマネージャーであるArun Menonは、今月マレーシアで懸念が高まった主な3つの要因は、「コロナ患者数の復活、観光主導のビジネスへの影響、そして1月第3週までに迎える旧正月に向けた国内旅行の規制への可能性だろう」と説明しています。
「ここ数年、マレーシアの人々は移動規制のために旧正月に家族と再会することさえ憚られており、他の選択肢は考えられなかっただろう」
2. 人々は自国での生活状況についてより前向きに捉えている
厳しい状況が続いた2022年を経て、多くの人が新年における自国の方向性に前向きな姿勢を示しています。「世界が懸念していること調査」に掲載された29カ国のうちほぼ3分の2(18カ国)で、先月に比べ、自国は正しい方向に向かっているかについてのスコアで上昇が見られます。10人に4人(40%)が自国は正しい方向に向かっていると答え、12月の38%から上昇しました。
パンデミック初期の3カ月間(2020年4月~6月)以外では、世界的に、自国が正しい方向に向かっているかを問うスコアが高くなった月は過去に2回しかありません。2018年1月と7月には、グローバルで41%が「自国は正しい方向に向かっている」と回答しました。
3. 英国に楽観的な見方はない
自国の方向性について肯定的な国がある一方で、そうでない国が英国である。4人に1人(24%)しか「自国が正しい方向に向かっている」と回答していません(上図参照)。 それでもこの数字は以前より少しは改善されています。2ヶ月前、英国の現状に満足していると答えた人はわずか16%で、この10年間で最低のスコアを記録しました。
このような不満を反映して、景気が良いと回答した人は5人に1人(20%)に過ぎず、これをけん引しているのは高齢者層です。55-74歳では、現在の経済状況を「良い」と答えたのはわずか8%で、この年齢層では同程度の低いスコアとなりました(これまでの最低値は2022年11月)。このスコアは、2020年3月当時、55-74歳の60%が景気は良いと回答していたパンデミック以降、急落しています(下図参照)。
英国人の懸念は経済だけではありません。2023 年 1 月時点で、45%が自国に影響を及ぼす最大の懸念事項のひとつは医療であると回答、前月より 5 ポイント上昇し、英国はこの懸念事項に関して 29 カ国中第 4 位となりました。女性の方がより英国での医療サービスの現状を懸念しており、女性の2人に1人以上(54%)が医療を懸念事項として挙げているのに対し、男性は35%にとどまっています。
4. スウェーデンにおける経済的な圧力
国民が経済に不満を抱いている国は英国だけではありません。今月はスウェーデンがこの指標で過去最低のスコアを記録しました。3分の1強(35%)のみ自国の経済を「良い」と回答しています。これと相まって、2015年4月以来スウェーデンの最大の懸念事項となっている犯罪と暴力に関する懸念が増加し、懸念は2022年12月から5ポイント上昇し53%となりました。
イプソススウェーデンのカントリーマネージャー、Fredrik Hallbergは、スウェーデン人にとっての主な経済問題は、国全体というよりも個人の経済的な懸念にまつわるものであると強調しています。
「スウェーデンの財政状況は、実は非常に強いが、しかし、家計の経済状況は、国の財政状況に対する感覚に影響を及ぼしていると思われる。スウェーデンの家計は大幅な物価上昇に直面しており、インフレ率は10%を超え、多くの大手銀行は、平均的な家計が年間9000ユーロ以上の追加コストに苦しむ可能性があると試算している。」と述べています。
「エネルギー価格は戦前の5倍になることもあり、金利は四半期ごとに上昇している。スウェーデンの家計は負債比率が非常に高く(ヨーロッパで最も高い水準)、変動金利の住宅ローンの割合が高いため、家計にとって大きな問題となっている。」
経済への満足度が高い国のひとつにイタリアがあります。2023年1月、イタリア人の32%が経済を「良い」とし、過去10年間で同程度の高いスコアとなりました。前回これほど高い経済満足度を示したのは2021年10月であり、今月のスコアは8月の20%から大きく上昇しています。
5.世界的にインフレはピークに達したかもしれないが、一部の地域ではまだ懸念が高まっている
1月の「世界が懸念していること調査」では、10人に4人(40%)がインフレを自国に影響を及ぼす大きな懸念事項の一つにあげており、依然としてインフレが最大の懸念事項であることがわかりました。これは最高だった11月の42%をわずかに下回るものでした。しかし、物価上昇をより懸念している国々では、依然として高い懸念が残っていまする。
生活費について最も懸念している上位5カ国のうち、今月は4カ国で増加が見られました。アルゼンチン(+4ポイント)、ポーランド(+4ポイント)、トルコ(+8ポイント)、カナダ(+ポイント)では1月に懸念が上昇しました。