データで読み解く日本の世論と政治ー2026年7月
7月の世論は、「インフレへの不安がやや和らぐ一方で、生活の閉塞感そのものは解消されていない」状況を映しています。インフレへの懸念は前月から低下したものの、依然として国民の最大の関心事であり、「国が正しい方向に進んでいる」と考える人の割合は38%で横ばいにとどまりました。一方で、経済状況を「良い」と評価する人は18%と前月から3ポイント上昇しており、賃上げや雇用環境の改善が一定の安心感につながり始めている可能性があります。しかし、その改善はまだ限定的で、多くの国民が物価上昇や将来への不安を抱え続けていることがうかがえます。
国は正しい方向に進んでいるのか?
「国が正しい方向に進んでいる」と考える人は38%で前月から変化なしとなりました。一方、「間違った方向に進んでいる」と考える人は62%にのぼります。前年同月比では「正しい方向」が17ポイント増加しており、長期的には改善が見られるものの、依然として多数派は現状に不満を抱いています。
経済面では春闘による高水準の賃上げや堅調な雇用環境が続いている一方、日本政府は2026年度の実質GDP成長率見通しを1.3%から0.9%へ下方修正しました。背景には中東情勢に伴うエネルギー価格上昇や家計負担の増加があり、国民の先行き不安が完全には払拭されていない状況がうかがえます。
日本での懸念事項
日本ではインフレ(32%)が引き続き最大の懸念事項となっています。ただし前月比では2ポイント低下しました。続いて、貧困と社会的不平等(31%)、課税(29%)、気候変動(25%)、犯罪・暴力(22%)が上位に並びます。なかでも気候変動への懸念は前月比5ポイント減と大きく低下しました。
インフレ懸念がやや後退した背景には、全国コアCPIが2026年6月に前年比1.6%となり、日本銀行の物価目標である2%を下回る状況が続いていることが考えられます。一方で、円安やエネルギー価格上昇による輸入コスト増加が続いており、消費者にとっては「物価高のピークは過ぎたかもしれないが、安心できる状況には至っていない」という心理が表れているといえるでしょう。
日本の経済状況
日本の経済状況を「良い」と考える人は18%となり、前月から3ポイント上昇しました。前年同月比でも7ポイント上昇しており、調査項目の中では比較的明るい変化が見られます。
この背景には、賃金上昇や堅調な企業業績への期待があります。一方で、日本政府はエネルギー価格上昇による家計負担増を理由に経済成長見通しを下方修正しており、消費の力強い回復にはなお課題が残っています。消費者物価の上昇率自体は落ち着きつつあるものの、光熱費や輸入品価格への不安は根強く、「景気は改善しているが生活実感はまだ追いついていない」という構図が続いているようです。
世界の動向
2026年7月の調査では、世界全体で犯罪・暴力(32%)とインフレ(30%)が主要な懸念として続いています。米国ではインフレへの懸念が46%と大幅に高まる一方、フランスでは気候変動への懸念が14ポイント増加し、イギリスでも移民管理への懸念が上昇するなど、各国で異なる社会課題が注目を集めています。その一方で、ペルーでは「国が正しい方向に向かっている」という評価が14ポイント改善し、タイでも経済状況を「良い」と評価する人が10ポイント増加するなど、一部の国では景況感や社会への楽観的な見方が広がっています。
詳細は 世界が懸念していること – 2026年7月をご覧ください。
著者

イプソス日本 代表取締役
内田 俊一(うちだ しゅんいち)
1985年ニューヨーク州立大卒業後、日本の商社、欧州のメーカーを経て、1993 年現イプソス株式会社の前身日本統計調査株式会社入社。2008年同社代表取締役就任。一般社団法人 日本マーケティング・リサーチ協会 前会長。