英国EU離脱に関する16カ国調査

2016.8 イプソスは英国のEU離脱に関する国民投票の1ヵ月後(2016年7月)、EU加盟9カ国と非加盟7カ国で、12,525人を対象に調査を実施しました。今後様々な問題について協議が必要であるものの、大きなパニックは起きておらず、「離脱の連鎖」への恐れも薄らいできていることがわかりました。

英国EU離脱に関する16カ国調査

「英国とヨーロッパの主要国では、まだ不安を抱えているのは間違いない。しかし、今回の調査で、その他の国々ではこれをチャンスと捉える向きもあることがわかった。

英国のEU離脱の条件と今後の英経済の行く末は、EUのみならず世界が注目している。英国は自国に有利な条件を目指して交渉を進めると思われるが、同時にEUの世論を意識しなくてはならない。それは英経済に直接影響を及ぼすと思われるからだ。EUの市民は、公然と敵対感情を露わにしているわけではないが、中には英製品購入拒否や訪問拒否を口にする人もいる。離婚は難しいことだ。英国は厄介なパートナーだという評判がすでにある。EU市民の反発は英経済が最も避けたいことだ。」とIpsosのマネージング・ディレクターであるBobby Duffyは述べました。

EU離脱への反応

  • EU加盟国の対象者では、英国のEU離脱は「EUにとって間違った判断」(58%)、「英国にとって間違った判断」(55%)、「自国にとって間違った判断」(50%)と回答した。ポーランドでは58%、スペインとスウェーデンではいずれも55%が 「自国にとって間違った判断」だと回答した。
  • EUに加盟していない国では、概して懸念の程度は低かった。特にロシアでは、過半数を超える対象者(54%)が「英国にとって正しい判断」と回答した。英国では「正しい判断」と回答したのは38%であった。
  • EU加盟国で「英国の離脱は残念だ」と回答したのは39%、対して「喜ばしいことだ」と回答したのは13%であった。最も「残念だ」と回答した割合が高かったのはスウェーデン(48%)で、低かったのはフランス(25%)であった。
  • 英国のEU離脱で、人々は将来に希望を持つよりも心配する傾向が強くなっている。EU加盟国の対象者では46%が「ますます心配になった」と回答、「心配が減った」と回答したのは15%であった。「ますます心配になった」と回答した割合が最も高かったのはスウェーデン人(53%)であるのに対し、低かったのはフランス人(31%)であった。

投票結果が英国とEUにもたらす影響と「離脱の連鎖」

  • 今回の調査対象であるEU加盟9カ国の対象者は、英国の離脱で「EU経済に負の影響がある」(53%)、「EUが弱体化する」(54%)、「EUの世界に対する影響力が弱まる」(47%) と回答した。
  • しかしその割合は国によって差がある。ポーランドと英国ではそれぞれ64%が「EUが弱体化する」と回答したのに対し、フランスでは37%、ドイツでは43%に留まった。
  • EUに加盟していない国でも同様な懸念が見られたが、やはり国によって程度の差が見られた。たとえば日本では、69%が「英国の離脱でEUは弱体化する」と回答したのに対し、インドでは35%に留まった。
  • 「離脱の連鎖」への懸念は落ち着いてきたようだ。EU加盟9カ国の対象者では、「英国に続く国があるかもしれない」と回答した対象者は41%で、英国民投票以前に弊社が実施した調査(48%)よりも割合が減少した。一方英国では、その懸念は増加した(以前の調査42%→今回60%)。
  • 一方、2020年までにEU統合は後退すると考える層は少し増加した:EU加盟9カ国では33%がEUは将来弱体化するだろうと回答、10%は2020年までに崩壊するだろうと回答した。
  • EU加盟9カ国の対象者の58%が英国のEU離脱は英経済に負の影響を及ぼすと回答した。しかしこの回答には国によって大きな差がある:ドイツでは70%が負の影響を及ぼすと回答したのに対し、イタリアでは43%に留まった。
  • さらにイタリアは、EU離脱がもたらす英国への総合的な影響についても、最も明るい見方を示した:41%がEU離脱で英国はより弱体化すると回答したものの、34%はさらに強力になると回答した(ドイツとスペインは64%が弱体化すると回答)。EUに加盟していない国の見方はさらに明るい。特にロシアとインドではその傾向が顕著で、それぞれ47%と44%が「英国はさらに強力になる」と回答、弱体化すると回答したのはそれぞれ17%と36%であった。米国では意見が均等に分かれて、32%が「弱体化する」、33%が「より強力になる」と回答した。

EU離脱の条件

  • 英国の対象者の56%は、「EUは英国に有利な条件を提示すべきだ」と回答したが、EU全体ではそれは30%に止まった。特にフランスでは、19%が「英国に有利な条件」と回答したのに対し、39%は「不利な条件を提示すべき」と回答した。
  • EU加盟国以外では、英国弱体化による広範囲な経済的影響を懸念するためか、英国に有利な条件を期待しているようである:南アフリカでは52%、インドでは51%が「英国に有利な条件を提示すべき」と回答した。

英国に対する反発は?

  • 英国を除くEU加盟8カ国の対象者の26%は「休暇の旅行先として英国は選ぶ可能性は低い」と回答した。イタリアでは37%が「英国を選ぶ可能性は低い」と回答した。
  • また、27%は「英国製品やサービスを利用する可能性は低い」と回答した。その割合が最も高かったのはイタリアで43%が「英国製品やサービスを利用する可能性は低い」と回答した。
  • 英国人旅行者は、いまだに広く受け入れられる傾向にあるが、EU加盟8カ国の対象者の16%は「現在は受け入れにくい」と回答した。テレビ、映画、本、音楽を通じた英国文化についても17%は「消費しにくい」と回答した。

この調査のレポート(英語のみ)は、こちらからダウンロードしていただけます。

調査概要

調査時期
2016年6月24日~7月8日
調査対象者
18~64歳男女(アメリカ/カナダのみ16歳~64歳男女)
調査対象国
16カ国(オーストラリア、ベルギー、カナダ、フランス、英国、ドイツ、ハンガリー、インド、イタリア、日本、ポーランド、ロシア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、米国)
サンプルサイズ
12,525人(各国1000人/ベルギー、ハンガリー、インド、ポーランド、ロシア、南アフリカ、スウェーデンでは各国500人)
調査方法
イプソスオンラインパネルを利用したオンライン調査

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