イプソスMORIがアイルランド国立大学ゴールウェイ校(National University of Ireland, Galway、以下NUIG)、国際女性研究センター(International Center for Research on Women)と共同で発表した最新の調査では、女性と少女に対する暴力（violence against women and girls、以下VAWG)の経済的・社会的コストの大きさが浮き彫りになりました。
この調査は、「女性と少女への暴力を防止するための有効対策プログラム(What Works to Prevent Violence Against Women and Girls Program)」のComponent_3の一部として、英国国際開発省(Department for International Development)から委託されたものです。イプソスMORI はガーナ、パキスタン、南スーダンの女性と企業に関する定量的調査を実施しました。
この調査で、VAWGが女性と少女の生活の多くの側面に有害な影響を与えることが明らかになりました。
- 生産性の国家的損失。ガーナでは、仕事をできないことや、職場での生産性が低下したりすることによる生産性の損失は年間6500万日と推定され、これは雇用されている女性の4.5%が働かないことに相当する。
- 子供の教育。この研究によると、パキスタンでの就学日の欠席は毎年約240万日に上ると推定されている。学校教育の失敗は、暴力を経験した女性の子どもの能力と将来の収入に長期的な影響を及ぼす。
- 財政の安定性。VAWGは家庭の貧困を悪化させる。それは、VAWGを経験する多くの女性は、例えば医療など、暴力のために発生する費用の負担が増加するためである。この調査では、VAWGが原因で医療サービスを利用した南スーダンの女性は多額の自己負担をしなければならなかったことが明らかになっており、12カ月間で生存者一人当たり平均21米ドル以上であった。南スーダンの人口の約80%が1日1米ドル未満で生活していることを加筆しておく。
- ビジネス上の損失。今回の調査で初めて研究された新しい側面はVAWGのビジネスへの影響である。職場外における女性従業員に対するパートナーからの暴力やパートナー以外からの性的暴力により、企業は損失を被る。一例を挙あげると、過去12ヶ月以内で：
- ガーナでは、調査対象となった企業の女性従業員の4人に1人が、生産性の低下を報告。影響を受けた従業員一人当たり14労働日に相当。パキスタンでは7人に1人だが、生産性の低下は影響を受けた従業員一人当たり17労働日に相当。
- 南スーダンでは、調査対象となった企業の女性従業員のほぼ10人に3人(28%)が生産性の低下を報告。影響を受けた従業員一人当たり10労働日に相当。
主任調査員であるNUIGのDr. Nata Duvvuryは以下のように述べています。
本調査は、VAWGがどの国においても経済活動に大きな負担をかけていることを簡単に説明している。 繁栄し、経済を持続可能で包括的な道筋に導いて、優先的に政府の政策と予算を統合するために、暴力を阻止することは必要かつ重要であることを示している。
この調査のテクニカルな詳細を含むより詳しい情報は、What Worksのウェブサイトでご覧いただけます。NUIGのDr. Nata DuvvuryとDr. Stacey Scriverによる、イプソスMORIの『Understanding Society: A Woman’s World』に掲載された記事も合わせてご覧ください。
連絡先：
John Kennedy, Public Affairs, Associate Director, Ipsos
Sara Grant-Vest, Public Affairs, Research Director, Ipsos
Dr. Nata Duvvury, Co-Director, Centre for Global Women’s studies
Ipsosはガーナ、パキスタン、南スーダンで2016年6月から2017年12月まで、フィールドワークを実施しました。18歳以上の女性と少女を対象に各国で家庭内調査を、並行して家長世帯調査、従業員調査、マネージャー調査を実施しました。各国で女性と少女、世帯主を対象に、合計2,000～3,000件の対面調査が行われました。さらに、各国100社で自記入式調査、25社のマネージャーまたはビジネスオーナーに対面式調査を実施しました。
ウェブリンク:
What Works
Centre for Global Women’s studies, NUIG
International Center for Research on Women
Understanding Society: A Woman’s World
