偽情報やハッキングが最大の脅威とみられる、アメリカの評判は低下
ハリファックス国際安全保障フォーラムのために毎年実施しているイプソス世界情勢世論調査の最新版では、紛争や世界への脅威に対する世界の意識を調査しています。
主な調査結果は次のとおりです。
- 偽情報やハッキングに対する懸念は依然として高い: 4人に3人強(30か国平均*で77%)が、世論に影響を与えるために偽情報を拡散することは、今日の世界における現実的な脅威であると回答しています。詐欺やスパイ目的でハッキングされること(77%)は、偽情報の拡散と並んで2年連続で第1位の脅威となっています。
- 米国がつまずくなか、カナダは依然として最もプラスの影響を与えると見られる: 回答者の80%が、カナダは世界情勢にプラスの影響を与える可能性が最も高い国/組織であると回答しており、10年連続でトップとなっています。一方、米国が世界情勢にプラスの影響を与えると答えた人の割合は2024年の60%から現在48%に減少しています。
- 中国、BRICS、CRINK諸国が台頭: 中国(46%)は、現在、世界の舞台で影響力を増しているトップの国/組織とみられています。この新しい質問では、BRICS諸国とCRINK諸国**がともに31%で、西側の先進国(18%)よりも影響力を増していると見なされていることがわかりました。
- 若者の兵役義務に対する意識は多岐にわたる: 大多数(83%、新規質問)が、たとえ平時であっても自国が強力な国防力を維持することが重要だと考えている一方で、自国の若者の兵役義務に賛成する人は、わずかに過半数(52%、新規)にとどまり、マレーシアの76%という高い数字から、日本の17%という低い数字まで幅があります。
- 悲観的見方は増え、恐怖は減少: 最近では状況が悪化するよりも良くなっていると考えている人は、わずか3人に1人(20か国平均***で33%)で、この質問を初めて行った2017年時点の47%から減少しています。同時に、世界がより危険になるという懸念は、ウクライナへの全面侵攻を受けた2022年の過去最高の86%から79%(20か国平均)に減少しました。
主な調査結果: まとめ

トランプスランプ2.0
今後10年間で米国が世界情勢にプラスの影響を与えると考える人は半数以下(30か国平均48%*)で、ドナルド・トランプ米大統領が選挙に勝利する直前に実施した昨年の世論調査より12ポイント減少しました。
米国の北隣国であるカナダは現在、30か国の中で、米国がプラスの影響を与えると考える可能性が最も低く、カナダでそう答えたのはわずか24%となっており、2024年と比べて28ポイントも減少しています。
2025年は、米国がプラスの影響を与えると考える人の割合は30か国中29か国で減少しました。米国の国際的な評判もトランプ大統領の最初の任期(2017~2021年)中に低下しました。
トランプ大統領の関税戦争が続く中で追加された新たな質問によると、回答者の4人に1人強(30か国平均28%)が、現在米国は世界的な影響力を強めていると考えており、米国は今や世界的な影響力を失う可能性が最も高い国だと考えられています(32%)。これは、現在、世界舞台で米国(28%)や西側の先進国(18%)よりも影響力を増しているとみられている中国(46%)、BRICS諸国およびCRINK諸国*(いずれも 31%)を下回る数字です。
ほぼ5人中3人(30か国中26か国で58%、過半数)は、トランプ大統領の任期が終わると、米国は国際舞台でより伝統的な役割に戻るだろうと考えています。
さすが、カナダ!
10人中8人(30か国平均80%)は、カナダが今後10年間で世界情勢にプラスの影響を与えると考えており、再び影響力リストのトップに立っています。
カナダは10年連続で世界最大の影響力を持つ国とみなされています。世界の影響力トップ5は、自国(76%)、続いてドイツ(73%)、欧州連合(70%)、フランス(70%)、英国(68%)となっています。
イランが世界情勢にプラスの影響を与えると予測するのはわずか4人に1人であり、今年はイスラエル(同じく25%)と同率です。実査期間中(2025年9月19日~10月3日実施)の9月29日に、ガザ和平計画が発表されました。
イランは2014年以降、イスラエルと並んで最下位となった今年と、ウクライナへの全面侵攻直後のロシアと並んで最下位となった2022年を除き、毎年、プラスの影響を与える可能性が最も低い国/組織とみなされてきました。
2025年の影響度下位5位は、パキスタン(28%)、ロシア(32%)、CRINK*諸国(33%)、サウジアラビア(45%)です。
過去10年間、カナダは一貫して、世界情勢にプラスの影響を与える可能性が最も高い国/組織とみなされてきましたが、その評判は2016年と2017年ほど高くはありません。一方、カナダの南の隣国、米国では、世界舞台へのプラスの影響が低下し、その後上昇し、最近では再び低下しています。
国防は重要と見なされるが、防衛を担うのは誰か?
10人中8人以上(30か国平均)が、自国が平時であっても強力な国防力を維持することが重要であることに同意しています。
5人に3人(60%)が「世界中で危険がはびこっている現状を考えると、自国政府はより多くの軍事費を投じる必要がある」ことに同意しています。同時に、同様の割合(64%)が、世界情勢においては軍事力よりも経済力のほうが重要だと考えています。
半数以上(世界平均52%、30か国中16か国で過半数)が、自国の若者の兵役義務を支持しています。一方、半数弱(48%)は、外国による侵略に備えるために正式な準備・訓練プログラムに個人的に参加する意思があると答えています。5人中2人強(43%、30か国中7か国では過半数)が、「自国に新たに移住してきた人々には、一定期間兵役を務めることを義務付けるべきである」という意見に同意しています。
危険で悲観的な時代に生きる
世界は良くなってきていると考える人の割合は、20か国平均で33%と過去最低を記録し続けており*、この質問を初めて行った2017年(47%)と比べて14ポイント低下しています。
大多数(20か国平均で79%)が、過去1年間で世界はより危険になったと考えています。事態がますます危険になっていると考える人の割合は、世界的なパンデミックとウクライナへの本格的な侵攻の開始が特徴的な2022年の最高86%から7ポイント減少しました。
同時に、大多数(30か国平均で77%)は「一部の人物、組織、または国が、世論に影響を与えるために意図的に自国に関する偽情報を拡散すること」ことが、今後12か月間の現実的な脅威になると考えています。偽情報は、詐欺やスパイ目的でハッキングされるのではないかという懸念(30か国で同じく77%)と2年連続で同率で一致しています。偽情報は昨年の世論調査に追加されたばかりですが、ハッキングは長い間、最大の懸念事項です。
調査手法
イプソスは、2025年9月19日から10月3日までの間に、30か国で23,586人の成人を対象にオンライン調査を実施しました。各国の人口構成に基づき、代表性を確保し、データが重み付けされるよう、割付が設定されました。サンプルは、日本では約2,000人、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、英国、イタリア、ニュージーランド、スペイン、米国ではそれぞれ1,000人、アルゼンチン、チリ、コロンビア、ハンガリー、インドネシア、アイルランド、マレーシア、メキシコ、オランダ、ペルー、ポーランド、シンガポール、南アフリカ、韓国、スウェーデン、タイ、トルコではそれぞれ500人です。インドのサンプルは約2,200人で、そのうち約1,800人が対面で調査を受け、400人がオンラインで調査を受けました。
*「30か国平均」は、調査が実施されたすべての国と市場の平均結果を反映しています。各国または市場の人口規模に合わせて調整されておらず、全体的な結果を示唆するものではありません。
**BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国)、CRINK(中国、ロシア、イラン、北朝鮮)諸国
***20か国平均の変化は、過去10年間のハリファックス国際安全保障フォーラム向けイプソスレポートの全版に掲載された国に基づいています。