医師は患者の健康データ活用に警戒感を抱く一方、診断におけるAIに期待

2023 イプソス デジタル・ドクター グローバル調査によると、グローバルで調査した医師の3人に2人以上が、将来のヘルスケアにおける人工知能(AI)の役割に期待を寄せていることがわかりました。

この種の調査としては最大級の、20市場3,428人の医師を対象としたイプソスの「デジタル・ドクター調査」は、医師のデジタル行動と今後のトレンドについて包括的な概観を提供します。

イプソスがグローバルで調査した医師の3人に2人以上(68%)が、将来のヘルスケアにおける人工知能(AI)の役割に期待を寄せており、診断精度の向上がAIソリューションの主な利点として認識されています。また、10人に8人の医師が、デジタルヘルスによって患者がより積極的に自分の健康を管理できるようになると考えていますが、10人に6人(58%)が、コネクテッドヘルス機器からのデータを患者が誤って解釈してしまうことを懸念しています。

  • 調査対象となった医師のうち、患者にデジタル治療(DTx)を勧めたことがあるのは4分の1のみで、62%がDTxの使用方法に関するトレーニングが十分でないと考えている
  • AIについて知識があると感じている医師は35%しかいない
  • 70%の医師が、遠隔診察が医療業界の環境負荷を改善するという意見に同意している
  • 69%の医師が、分散型臨床試験はより広い参加者層にアクセスすることで患者の多様性を高めることができると考えているが、44%は患者の設備と接続の問題を遠隔医療導入の主な障壁として挙げている

2021デジタル・ドクター (2021 Digital Doctor)の結果では、COVID-19パンデミックの1年後に、デジタルツールやソリューションの利用の加速を医師が経験していることが示されました。2023年には、人工知能(AI)やデジタル治療(DTx)といった新たな技術を取り巻く障壁に対処し、普及を促進することに注力する必要があります。

2023年の重要なテーマとして、以下のようなものがあります:

  1. 患者のエンパワーメントは、コネクテッドヘルスケアソリューションの増加の中心である(データ1.1参照)
  2. リモートエンゲージメントのシフトは、パンデミック後の遠隔医療の“ニューノーマル”を指し示している(データ1.2参照)
  3. 人工知能やデジタル治療の導入を促進する機会が存在する(データ1.3参照)
  4. オムニチャネルへの移行が進み、より消費者中心のモデルへのマインドシフトが求められている(データ1.4参照)
  5. デジタルソリューションを通じて、より持続可能で公平な未来を目指す動きがある(データ1.5参照)

イプソスのデジタル&コネクテッドヘルス ヘッドであるReena Soochは、以下のように述べています。

私たちは2015年からデジタル・ドクター調査を実施していますが、健康におけるテクノロジーの恩恵の可能性があるという認識から、今や現実へと動いているのを見るのはエキサイティングなことです!医師は日々の診療でテクノロジーを使いたいと考えており、オンライン診療は大規模に行われています。また、インフラや診療報酬のアプローチを適切にすれば、AIやデジタル治療には大きな可能性があります。

1.1. 患者のエンパワーメントには課題があるPatient empowerment comes with challenges

リアルタイムのデータを提供するコネクテッドヘルス機器で、(特に医療システムの負担を軽減するために最も必要とされる時に)患者が自分の健康を積極的に管理できるようになるという意見に対して高いレベルの賛同(80%)が得られています。しかしこの積極性は、患者によるデータの誤った解釈(58%)や、患者が医師の監視なしに自己診断する可能性(52%)につながると感じている医師の間では、懐疑的な意見も聞かれます。

1.2. 遠隔医療はこれからも続く

COVID-19のパンデミックでは、デジタルヘルスソリューションの利用が促進されましたが、今回の調査結果は、再調整期間を経た遠隔医療の新しい現実を示唆しています。遠隔医療ソリューションを現在利用している人の割合(40%)は、このウェーブで低下しましたが、この割合はパンデミック前(28%)と比較して有意に高いままです。:COVID-19の後に状況がどのように「調整」されたかを示す真の姿です。

1.3. 医療におけるAIへの期待、しかしDTxには懐疑的な見方もある

医師の3人に2人(68%)は、医療におけるAIの将来の役割に期待を寄せていますが、過去12ヶ月以内に診療でAIを使用したことがある人は少数派(31%)です。主なメリットは、診断の効率化(40%)と正確性の向上(40%)であると報告されています。しかし、それ以上に重要なのは、反復作業の自動化(45%)です。一方、デジタル治療といえる治療法を処方(18%)または推奨(25%)したことがある人は少数派です。主な懸念は、トレーニング不足(62%)、有効性の不足(48%)、臨床エビデンスの不足(45%)です。

1.4. これからの医療情報ニーズは、柔軟な対応力が求められる

ロックダウンが緩和され、対面による医療情報の入手が復活し一般的になってきました。調査対象者のうち、製薬会社の担当者が主催する対面イベントを通じて情報を入手する人の割合は、前回と比較して大幅に増加しています。しかし、デジタルチャネルに対する意欲は依然として高く、特に製薬会社以外のウェブサイトについては、利用者の間でデジタルチャネルの有用性が高く評価されています(89%が「かなり役立つ」「非常に役立つ」と回答)。問題は、医療従事者の複雑なニーズに対応するために、これらのチャネルをどのように活用できるかということです。

1.5. デジタル・デバイド

遠隔診療がヘルスケア産業の環境負荷を改善することに69%が同意していますが、移動の減少による環境負荷の改善を遠隔診療の主な利点の1つと考える人は33%に過ぎず、遠隔診療の真の利点を理解するためにはさらなる取り組みが必要であることを示しています。患者の多様性に関しては、分散型臨床試験の利点として、より広い範囲からの募集による患者の多様性の向上を挙げる人が過半数(69%)を占めており、72%が遠隔医療が医療へのアクセスの向上を促進することに同意しています。しかし、ブロードバンドの問題など、克服すべき根本的な障壁が存在します。

本調査について:

イプソスは2022年10月6日~2023年3月30日の間に、SERMO(フィールドワークパートナー)を利用して、20市場の3,427人の医師を対象にオンライン調査を実施しました。

スクリーニング基準:

  • 年齢:25歳以上77歳未満
    • 医師の年齢に偏りがないように割付を設定
  • 実務経験年数:2~35年
  • 小児科医は、自らワクチンを推奨・処方・投与した場合のみ
  • 神経科医・腫瘍科医は、患者の直接治療に70%以上(英国では60%以上)関わること。

お話を伺った医師は以下のとおりです:

  • かかりつけ医、プライマリケア医/総合診療医/家庭医/コンサルティング医(インド)/内科(日本・韓国) 計 n= 1,852
  • 小児科医 計 n= 855
  • 腫瘍科医 計 n= 361
  • 神経科医 計 n= 360

詳しい内訳は以下のとおりです:

 

市場 PCP 小児科医 腫瘍科医 神経科医
英国 100 70 61 60
フランス 100 70 60 60
イタリア 100 70 60 60
スペイン 100 71 60 60
ドイツ 100 70 60 60
米国 200 72 60 60
トルコ 100 50    
インド 150 50    
中国 151 71    
日本 100 71    
韓国 50 50    
ベトナム 50 50    
オーストラリア 51 40    
ブラジル 100 50    
ベルギー 50      
オランダ 50      
アイスランド 50      
カナダ 100      
アルゼンチン 100      
香港 S.A.R. 50      
 

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