ベトナム市場調査ガイド|ビジネス成功のために押さえるべきポイントとは?

ベトナム市場に参入したい企業必見!現地事情に精通した市場調査のプロが、文化的留意点から市場調査手法まで、ベトナムの市場調査を成功させるためのノウハウを網羅的に解説。

経済発展が著しく、ASEAN諸国の中でもとりわけ注目を集めているベトナム。若く活気ある労働力、堅調なGDP成長率、そしてデジタルインフラの急速な発展など、多くの魅力を備えた市場として、世界中の企業が進出を検討しています。本記事では、ベトナムの経済・社会・文化・教育・健康・通信・市場調査の観点から、現地の基本情報を包括的に解説し、ビジネスやマーケティングの意思決定に役立つ視点を提供します。

このページでわかること:

  1. ベトナムの基本情報
  2. ベトナムの特徴
  3. ベトナムでの市場調査:定性調査
  4. ベトナムでの市場調査:定量調査
  5. インドの定量調査
  6. まとめ:多様性と成長が共存する、可能性に満ちたベトナム市場

 

ベトナムの基本情報

ベトナムは、世界的な野心を持つ企業に人気のサイトです。同国の経済は、自由貿易協定(FTA)や規制の厳しい企業風土に支えられ、急速に拡大を続けています。ベトナムは、無限の可能性を秘めた活気に満ちた新興市場です。ベトナムには若年層と労働力があります。ベトナムは、その法的および制度的構造を強化するために懸命に取り組んできました。

共産党の一党支配下にある社会主義共和国であるベトナムは、最終的にはアジアの「タイガーエコノミー」(韓国、シンガポール、台湾、香港)の発展軌道をたどると多くの人が予想しています。

開かれたビジネス環境、透明性のある投資ルール、企業に対する有利な利益ベースのインセンティブが、ベトナムの規制構造を支えています。ベトナムは、ASEANの中心に戦略的に位置しています。さらに、東南アジアで最も有望な経済の1つです。中国は、世界有数の経済大国であり、貿易相手国の1つである中国南部の製造業の中心地に近接しています。

 

人口:104,799,174人(2023年推計) ベトナムの人口の年齢の中央値は32.7歳です。

性別分布:ベトナムの人口の50.6%が女性で、人口の49.4%が男性です(性別データは現在、「女性」と「男性」のみ利用可能です)

都市部/農村部:2023年初頭、ベトナムの人口の39.1%が都市部に住んでおり、60.9%が農村部に住んでいました。

 

文化的プロフィール

ベトナム経済状況

これまでのところ、ベトナム経済の見通しは前向きで、2023年のGDP成長率は6%を超えると予想されています(フィッチ、国際通貨基金(IMF)、アジア開発銀行(ADB)による)。2022年、ベトナムのGDPは8%増加し、他のアジア諸国を上回りました

2023年上半期のベトナムのGDPは、前年同期比3.72%1増加しました。農林水産業とサービス業の両方が好調な傾向を見せた一方で、産業・建設業は世界的な政治的不確実性の影響を強く受けました。

 

ベトナムの文化と社会

ベトナムは、北部・中部・南部の3つの主要な地域に分かれており、それぞれが独自の印象的な文化とアイデンティティを持っています。地域ごとの風習、料理、言語のアクセント、そして人々の気質にも違いが見られ、多様性に富んだ国といえるでしょう。

ベトナム人は一般的に社交的で友好的な性格として知られています。家族や友人と重要で幸せな瞬間を分かち合うことを大切にしており、大都市では夜や週末になると、人々が露天商の前や公園、カフェなどに集まり、コーヒーやビールを片手に談笑したり、ゆっくりと過ごしたりする光景がよく見られます。

文化の中心にあるのは「家族」です。ベトナムでは、3世代が同じ家で暮らすのが一般的であり、子どもは結婚するまで両親と同居することが多いです。子育てや家事は伝統的に母親の役割とされてきましたが、近年は働く女性の増加により、祖父母がそのサポートを担う場面も増えています。女性は、自立や自己表現に対してより積極的になってきていますが、依然として乗り越えるべき社会的課題も残っています。

ベトナムのライフスタイル

 

また、ベトナムの若者、特にZ世代は、以前の世代とは大きく異なる価値観を持っています。彼らは新しいことに積極的で、より自由で進歩的な考え方を好みます。そのため、保守的な価値観を持つ親世代との意見の相違や葛藤が生まれることもあります。
ベトナムには1,400万人を超えるZ世代が存在しており、これは人口の約7分の1に相当します。彼らは、ソーシャルメディアの活用、映画や音楽のストリーミング視聴、インスタントメッセージアプリでの友人とのコミュニケーションといったオンライン活動を好み、日常生活の中でデジタル技術との関わりを深めています。

このように、ベトナムの社会は伝統と現代性が交差しながら進化しており、今後ますます多様でダイナミックな変化が期待されます。

 

ベトナムの教育

ベトナムの教育は、教育訓練省(MOET)が運営する国営の公立および私立の教育機関を中心に構成されており、全国的に統一された教育システムが整備されています。教育の構造は大きく5つの段階に分かれており、プリスクール、プライマリースクール(5年間)、セカンダリースクール(4年間)、ハイスクール(3年間)、そして高等教育(大学・専門学校など)へと続きます。正式な教育課程は12年間の基礎教育が基本とされています。

高校を卒業した後、大学進学や海外留学を希望する学生は、国際的に認められている標準化された英語能力テスト(IELTS、TOEIC、TOEFL、TOEFL iBTなど)のスコアを取得することが求められます。英語力は進学やキャリア選択において非常に重要な指標となっており、多くの学生がこれらの試験対策に力を入れています。

経済面においても教育は重要な位置を占めています。2021年には、ベトナムの教育および訓練分野への支出は約249.5兆ベトナムドンに達し、同年のGDPに対する教育訓練分野の貢献率は約4%となりました。これは国として教育への投資を重視していることを示しています。さらに、同年の教育・訓練分野におけるGDP総額は約326兆ベトナムドンに達し、教育関連の事業活動も活発化しました。2021年には、教育サービスを提供する企業が約3,000社新たに設立され、教育産業としての成長も目覚ましい状況です。

就労状況に目を向けると、教育・訓練部門でエントリーレベルの仕事に就く人々の月収の中央値はおよそ600万ベトナムドンとされています。これは、他業種と比較するとやや控えめな水準ではあるものの、教育の現場に関わる若者たちの成長やキャリア形成の基盤として機能しています。

ベトナムの教育は、急速な経済成長とともにその役割や期待がますます大きくなっており、今後も制度改革や国際化が進むことで、さらに質の高い人材育成につながることが期待されています。

 

ベトナム人のヘルスケア

近年の生活水準の向上により、ベトナム国民の健康状態は着実に改善されています。乳児死亡率は1993年には出生1,000人あたり32.6人だったのに対し、2020年には16.7人へと大幅に減少。これは医療へのアクセス改善や予防医療の強化が進んだ成果といえるでしょう。
また、平均寿命も向上しており、1990年の70.5歳から2019年には75.4歳へと延びました。この数字は、同じ所得レベルの他国と比較しても高く、ベトナムが健康に関する公共政策を着実に実施してきた証でもあります。

世界銀行のデータによると、ベトナムのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ指数は73で、これは地域および世界平均を上回る数字です。実際に、国民の約87%が何らかの形で医療保険の恩恵を受けており、ヘルスケアの普及が進んでいることが分かります。

ベトナムでは、通信とデジタルコミュニケーションが日常生活に欠かせない存在となっています。特にFacebookは圧倒的な人気を誇っており、経験や情報の共有、友人とのつながりを深める手段として活用されています。中には、自分の理想的なライフスタイルをSNS上で演出する人も多く、自己表現の場としての役割も強まっています。

また、Zaloという国産のメッセージングアプリも広く普及しており、ViberやWhatsAppに似た機能を持ちながら、よりローカルニーズに合ったサービスを提供しています。ベトナム語話者の間では、言語に明確な階層文化が存在し、代名詞や呼称の使い分けを通じて、相手への敬意や親しみを示す文化が根づいています。

身体的な接触については、一般的に慎ましやかな文化が尊重されており、特に異性間での公的なスキンシップ(ハグやキスなど)はあまり見られません。一方で、同性の親しい友人同士が手をつないで歩くなど、友情の表現としての接触は文化的に自然と受け入れられています。

 

ベトナムの特徴

インフラとテクノロジーの進展

ベトナムの都市の発展画像

 

ベトナムのインフラとテクノロジーは、この数十年で劇的に発展を遂げました。1993年にはわずか14%だった電気の普及率は、2019年には99.4%に達し、ほぼ全人口が安定した電力供給を享受しています。また、農村部における清潔な水へのアクセスも、1993年の17%から2020年には51%へと大きく改善されました。

インターネット利用も急増しており、2021年1月時点では、約6,900万人(人口の7割以上)がネットを使用しています。その多くはスマートフォンを通じたモバイル利用で、仕事や学習、エンターテインメントなどあらゆる場面で活用されています。

通信料金の面でもベトナムは国際的に競争力があり、1GBあたりのモバイルデータ料金はわずか0.57米ドルと、世界で10番目に安価な国にランクインしています。また、ITUのデータによれば、モバイル通信費が所得に占める割合も世界平均の約3分の1という低さです。

モバイルインターネットの速度では、ベトナムは138か国中59位にランクイン。東南アジア諸国の中ではフィリピンやマレーシアを上回る一方で、タイ(36位)やシンガポール(18位)にはやや劣ります。

政府は2025年までに光ファイバーインターネットのカバー率を世帯の80%以上、地方行政単位(コミューン)の100%に拡大する計画を進めており、さらに人口の50%以上がデジタル口座を持つ社会の実現を目指しています。

2023年1月時点のデジタルコネクティビティの現状

  • インターネットユーザー数:7,793万人(普及率 79.1%)
  • ソーシャルメディア利用者数:7,000万人(人口の71%)
  • セルラーモバイル接続数:約1億6,160万件(人口の164%に相当)

 

人気のソーシャルメディアプラットフォーム

  • Facebook:国内で最も広く利用されており、連絡手段や情報発信の中心的存在です。
  • YouTube:若年層を中心に人気があり、エンタメから教育まで幅広いコンテンツが消費されています。
  • TikTok:短編動画を作成・共有するプラットフォームとして急成長中で、特に若者の間で強い支持を得ています。

 

ベトナムでの市場調査:定性調査

主なターゲット市場は、通常、ホーチミン市(南)とハノイ(北)で、これらは国の代表的な都市です。この2つの都市では消費者の価値観や態度が異なるため、可能であれば2つの都市をカバーすることをお勧めします。ダナンとカントーは第2段階の都市であり、より広範な理解のために含めることができます。

 

ベトナムの市場調査:南のホーチミン

南部、特にホーチミン市を中心とするエリアでは、消費者は比較的リラックスした気質を持ち、新しいものや変化に対して前向きでオープンです。柔軟な対応力を持ち、トレンドへの反応も速い傾向があります。

  • 表現スタイル:シンプルかつストレートな表現が好まれるため、広告や商品説明では明快さが重要。
  • 新製品導入の好適地:トレンドの発信地としての役割も果たしており、新製品や新サービスの導入はホーチミンから始めるのが効果的です。
  • 調査上の利点:率直に意見を述べる人が多く、市場調査では自発的かつ正直な回答を得やすい傾向があります。

 

ベトナムの市場調査:北のハノイ

北部の消費者、特に首都ハノイでは、南部と比べてより保守的で慎重な姿勢が見られます。言葉選びが丁寧で遠回しな表現が多く、表面上の言葉と本音に差があることも少なくありません。

  • 表現スタイル:花言葉のように美しくも曖昧な表現が使われる傾向があり、マーケティングでは含意や行間を読ませる工夫が必要。
  • 調査時の特徴:初めての体験に対しては慎重で、リーダーや周囲の反応に影響されやすいため、本音を引き出すには工夫が必要です。
    → たとえば、グループディスカッション前に個別アンケートを実施するなど、先入観を減らす工夫が有効です。
  • マーケティング戦略:ブランド信頼性や第三者の推薦(例:インフルエンサー、専門家)が消費行動に大きく影響します。

 

農村部:新興市場としての注目と異なるライフスタイル

ベトナムの農村部は人口の約70%を占めており、近年その市場ポテンシャルが注目を集めています。都市部とは消費習慣や価値観が大きく異なるため、農村特有の文化的背景を理解する必要があります。

  • ライフスタイルと態度:より伝統的で、家族や地域のつながりを重視する傾向があります。実用性や価格感度も高いため、商品やサービスには費用対効果や信頼性が強く求められます。
  • 市場調査の実施方法:地方への訪問型インタビューや、現地コミュニティに入り込んだ調査が効果的。都市と同じ手法では十分なデータが得られにくい点に注意が必要です。

 

ベトナムで市場調査を行う際の重要な実務ヒント

ベトナムで有効な市場調査を実施するためには、文化的背景や生活習慣、現地ならではの制約を理解したうえで、調査設計を行う必要があります。以下に、調査準備や実施時に留意すべき主要なポイントを紹介します。

調査スケジュールの基本

  • 平日が基本。週末は避けるのがベター
     調査は原則として平日に実施するのが理想的です。実施時間は午前10:00、午後13:30、15:30が一般的。週末の調査も可能ではありますが、参加率や集中力の観点から推奨されません。
  • 主婦層は夜NG
     夜間は家事や家族の世話があるため、主婦対象のグループインタビューは昼間に設定しましょう。
  • 地方都市では夕方以降が難しい
     ホーチミンやハノイ以外の地域では、人々は日没前に活動を終える傾向があり、夕方以降の調査は非効率になる場合があります。

 

対象者の設定とグループ構成

  • 性別の配慮が重要
     性別混合のグループは、特に10代や若年層では避けるべきです。女性が見知らぬ男性の前で自由に発言することは稀なため、同性グループを推奨。カップル調査であっても、個別面談が望ましいです。
  • 年齢別のガイドライン
     - 子供:7歳以上で、2歳以内の年齢差、1時間未満の短時間セッションが基本。友人同士の構成が理想。
     - ティーンエイジャー:14~16歳、16~18歳など年齢帯を分ける。
     - 大人:10歳以内の年齢差を守ることが望ましい。
  • 社会階層(SEC)に応じたグループ分け
     階層別(例:AB層とCD層)に分けて調査を行うことで、明確なインサイトを得やすくなります。

 

ベトナムでの市場調査:定量調査

データの収集元

ベトナムの地理を理解することは、ホーチミン市、ハノイ、ダナン、ハイフォン、カントーの5つの自治体と63の省に分かれたベトナムでの定量的な市場調査のためのサンプリング計画を設計するために必要です。

したがって、国の代表的なサンプルを採取するには、4つの主要都市(ホーチミン、ハノイ、ダナン、カントー)で市場調査を行うことをお勧めします。予算が許せば、他のいくつかの都市や農村地域を考慮に入れる必要があります(ナムディン省、タインホア省、ゲアン省、アンザン省、ドンナイ省)。

 

データの収集元

調査目的や必要な対象に応じて、あらゆる回答者(年齢、性別、階級、学歴、職種など)から調査を行います。

 

データを収集するタイミング

クリスマス、新年、特に旧正月(1月末から2月上旬頃)など、休日の多い年末期にフィールドワークを行うことはお勧めできません。12月の第4週からのフィールドワークは、プロセスが非常に遅くなり(回答者のアクセシビリティが低下する)、休暇期間の本質的な特性により、通常、回答の代表性が低くなるため、避けてください。

 

言語

ベトナムの公用語はベトナム語で、全国で最も人気があり、広く使用されています。調査で使用する質問票と言語はベトナム語である必要があります。

 

まとめ:多様性と成長が共存する、可能性に満ちたベトナム市場

ベトナムは、安定した経済成長、若年層を中心とした労働力、充実した教育制度、そして急速に発展するインフラ・テクノロジーを背景に、今後ますます注目される存在となるでしょう。都市によって消費者の気質や価値観が異なる点も、マーケティング戦略の多様化を可能にします。また、家族を重視する文化、デジタル社会への順応力の高さ、国を挙げて進むヘルスケアの拡充など、生活者としてのベトナム人を理解する上でも重要な要素が数多く存在しています。ビジネスの成功には、こうした多面的な背景を踏まえた現地理解が不可欠です。ベトナム市場を深く知ることで、未来のビジネスチャンスをより確かなものにしていきましょう。

 

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