富裕層調査とは|定義・手法・費用と調査を成功させるポイントを解説【2026年最新】
この調査の最大の特徴は、①母集団が全体のごく一部に限られるためサンプリングそのものが難しい、②所得や資産に関する質問は心理的なハードルが高く、通常のスクリーニング調査では正確な回答が得にくい、③プライバシーへの配慮が通常の消費者調査以上に求められる、という3点にあります。日本では純金融資産1億円以上を保有する「富裕層・超富裕層」が2023年時点で約165万世帯、純金融資産総額は約469兆円と推計されており、企業にとって重要性の高いターゲット層である一方、その実態を正確に捉えることは容易ではありません。
本記事では、日本における富裕層の定義、調査が難しい理由、主な手法と費用感、調査を成功させるためのポイントまでを解説します。
この記事でわかること
富裕層調査とは|日本における富裕層の定義
「富裕層」という言葉に法律上の明確な定義はありませんが、市場調査の実務では、野村総合研究所(NRI)が純金融資産保有額をもとに提唱する5階層の分類が広く参照されています。
| 階層 | 純金融資産保有額 | 世帯数(2023年推計) |
|---|---|---|
| 超富裕層 | 5億円以上 | 11.8万世帯 |
| 富裕層 | 1億円以上5億円未満 | 153.5万世帯 |
| 準富裕層 | 5,000万円以上1億円未満 | 325.4万世帯 |
| アッパーマス層 | 3,000万円以上5,000万円未満 | 726.3万世帯 |
| マス層 | 3,000万円未満 | 4,213.2万世帯 |
出所:野村総合研究所「日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」(2025年2月13日発表)
富裕層・超富裕層を合わせた世帯数は165.3万世帯で、2021年の148.5万世帯から11.3%増加しました。株式・投資信託などのリスク性資産の価値上昇や円安の進行、相続による資産移転などが背景にあるとされています。また、年収でいえば一般的に2,000万円以上が「富裕層」の目安とされることが多いものの、フローの年収とストックの金融資産のどちらを基準にするかで対象者の像は変わるため、調査目的に応じてどちらを基準にするかを明確にすることが重要です。
新たに注目される「いつの間にか富裕層」
NRIの分析では、近年の株式相場の上昇を受けて運用資産が急増し、結果的に富裕層になった層を「いつの間にか富裕層」と定義しています。40代後半〜50代の一般的な会社員が中心で、従業員持株会や確定拠出年金、NISA枠の活用を通じて運用資産が1億円を超えたケースが多く見られます。この層は、従来型の「経営者」「地主」「開業医」といった富裕層イメージとは異なる消費行動・情報収集スタイルを持つ可能性があり、調査対象として近年注目が高まっています。
富裕層調査が難しい3つの理由
1. 母集団が小さく、サンプリングが難しい
純金融資産1億円以上の富裕層・超富裕層は、日本の全世帯数のうち3%程度にとどまるとされます。一般的なオンラインパネルでは、そもそも富裕層に該当する対象者が十分な数含まれていないケースが多く、通常の消費者調査と同じ感覚でスクリーニングを設計すると、目標サンプル数に到達できないリスクがあります。
2. 所得・資産に関する質問への回答忌避
日本では所得や資産について話すことへの心理的ハードルが特に高いとされ、正確な自己申告を得ることが難しいという課題があります。年収や金融資産額を直接尋ねる設問では、回答拒否や過少申告が発生しやすく、教育水準・居住エリア・保有資産の種類など、間接的な指標を組み合わせたスクリーニング設計が必要になります。
3. プライバシーへの配慮が通常以上に求められる
富裕層は情報の取り扱いに敏感な層でもあり、調査依頼そのものへの警戒感が強い傾向があります。調査目的の丁寧な説明、匿名性の担保、場合によっては秘密保持契約(NDA)の締結など、通常の消費者調査以上に配慮したコミュニケーション設計が求められます。
富裕層調査の主な手法と費用相場
| 手法 | 特徴 | 向いている目的 |
|---|---|---|
| 富裕層特化型オンラインパネル | 資産・職業などの条件で事前スクリーニングされたパネルを活用 | 一定規模のサンプルを要する定量調査 |
| 金融機関・会員組織との連携調査 | プライベートバンク、会員制クラブ、同窓会組織などを通じたリクルート | 富裕層の中でも特定セグメント(経営者層など)への深掘り |
| 紹介(リファラル)方式のリクルート | 既存対象者からの紹介を通じて対象者を拡大 | 一般的なパネルでは到達しにくい超富裕層層へのアプローチ |
| 定性インタビュー(対面・オンライン) | 少人数に対し、資産運用や消費観などを深く聞き取る | 数値では見えない価値観・意思決定プロセスの把握 |
富裕層調査は、対象者のリクルート難易度の高さから、一般消費者調査と比較して謝礼水準やリクルートコストが高くなる傾向があります。母集団の小ささゆえに、サンプル数を絞った定性調査を優先し、必要に応じて定量調査を組み合わせるアプローチも有効です。
富裕層調査を成功させる4つのポイント
資産か年収か、基準を明確にする
「富裕層」の基準をフロー(年収)で見るかストック(純金融資産)で見るかによって、対象者像もリーチできる母集団も変わります。調査目的が「贅沢品の購買行動」なのか「資産運用の意思決定」なのかによって、適した基準を選ぶ必要があります。
間接的な指標を組み合わせたスクリーニング設計
所得・資産の直接質問だけに頼らず、居住エリア、保有資産の種類(不動産・金融商品・車など)、職業、教育水準といった間接的な指標を組み合わせることで、より正確な対象者抽出につながります。
調査体験そのものの質を高める
富裕層は、時間的制約が大きく、また質の低い調査体験には協力しない傾向があります。インタビュー時間の柔軟な設定、落ち着いた環境での実施など、対象者の負担を最小化する調査設計が協力率を高めます。
「富裕層」を一括りにしない
経営者、資産家(地主・相続)、高年収の専門職(医師・弁護士など)、そして前述の「いつの間にか富裕層」など、富裕層の内訳は多様です。同じ純金融資産1億円でも、資産形成の経緯によって消費観や情報収集スタイルは大きく異なるため、セグメント単位での分析が推奨されます。イプソスのグローバル調査では、こうした層の68%が新製品のアーリーアダプターであり、単なる購買者ではなく周囲の購買決定に影響を与える存在であることも分かっており、セグメント理解の重要性を裏付けています。
富裕層調査の進め方
- 調査目的と基準の明確化:年収ベースか資産ベースか、どのセグメント(経営者・資産家・高年収専門職など)を狙うかを定義します。
- スクリーニング設計:直接質問と間接的指標を組み合わせた、精度の高いスクリーニング条件を設計します。
- 調査手法の選定:母集団の規模に応じて、定性調査を軸にするか、富裕層特化型パネルを用いた定量調査を組み合わせるかを判断します。
- リクルート:パネル・会員組織・リファラルなど、複数のリクルートチャネルを組み合わせることで、目標サンプル数への到達可能性を高めます。
- 実査・分析:プライバシーへの配慮を徹底しながら実査を行い、セグメント別の分析を行います。
よくある失敗と対策
| よくある失敗 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 目標サンプル数に到達できない | 一般的な消費者調査と同じ感覚でパネルからのスクリーニングを設計 | 富裕層特化型パネルや会員組織との連携、リファラル方式を組み合わせる |
| 所得・資産の自己申告が不正確 | 直接的な質問のみに依存したスクリーニング | 居住エリア・保有資産の種類など間接的指標を組み合わせる |
| 対象者の協力が得られない・途中離脱が多い | プライバシーへの配慮や調査体験の質が不十分 | 匿名性の担保、柔軟な実施時間、落ち着いた実施環境を用意する |
| 「富裕層」全体として画一的に分析してしまう | 経営者・資産家・高年収専門職などの内訳を区別していない | 資産形成の経緯や職業によるセグメント分析を行う |
よくある質問(FAQ)
Q. 富裕層の定義は年収と資産のどちらを基準にすべきですか?
A. 調査目的によります。日常的な消費行動(贅沢品の購買など)を把握したい場合は年収(フロー)を、資産運用や相続・事業承継に関する調査であれば純金融資産(ストック)を基準にするのが一般的です。野村総合研究所の分類では、純金融資産1億円以上5億円未満を「富裕層」、5億円以上を「超富裕層」としています。
Q. 富裕層は一般的なオンラインパネルで調査できますか?
A. 可能な場合もありますが、母集団が小さいため、目標サンプル数に到達しにくいという制約があります。富裕層特化型のパネルや、金融機関・会員組織との連携、リファラル方式のリクルートを組み合わせることで、精度の高いサンプルを確保しやすくなります。
Q. 富裕層調査は定性調査と定量調査のどちらが適していますか?
A. 母集団の小ささから、少人数でも深い示唆が得られる定性調査を軸にするケースが多いです。ただし、一定の統計的傾向を把握したい場合は、富裕層特化型パネルを活用した定量調査との組み合わせが有効です。
Q. 「いつの間にか富裕層」とはどのような層ですか?
A. 野村総合研究所が定義した概念で、株式相場の上昇により運用資産が急増し、結果的に富裕層になった層を指します。40代後半〜50代の一般的な会社員が中心で、従業員持株会や確定拠出年金、NISA枠の活用を通じて資産1億円を超えたケースが多く見られます。従来型の富裕層イメージ(経営者・資産家など)とは異なる消費行動を持つ可能性があり、調査対象として注目されています。
まとめ:富裕層調査は「定義」と「リクルート設計」が成否を分ける
富裕層調査は、母集団の小ささと所得・資産に関する質問への心理的ハードルの高さから、一般消費者調査とは異なる設計思想が求められます。まず「富裕層」をどう定義するか(年収か資産か、どのセグメントを狙うか)を明確にしたうえで、パネル・会員組織・リファラルなど複数のリクルートチャネルを組み合わせ、プライバシーに配慮した調査体験を設計することが成功の鍵です。日本の富裕層・超富裕層は165万世帯を超え、今後も「いつの間にか富裕層」のような新しいセグメントの拡大が見込まれるなか、精度の高い富裕層調査の重要性はさらに高まっていくと考えられます。
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