TREND OBS 2019 (AMERICA) 人は、自身の行動によって形成される
Trend Obs では、国際的な定性調査でライフスタイルや消費の変化についての展望をまとめています。毎年イプソスでは数カ国のトレンドセッター*に対して調査を実施していますが、今年は調査対象国としてアルゼンチン、フランス、日本、スウェーデン、イギリス、アメリカを選びました。この調査ではブランドが未来の社会で優位に立てるよう、社会のこれからを理解する鍵をブランドに提供します。1年半前に発行した前回のレポートでは、トレンドセッターが「極端に二極化した世界からどのように抜け出すか」に注目しました。今回のTrend Obs 2019では、外部世界を簡素にするという代償を払いながらも、バランスを新たに求め、自身の人生の統制を再生させる兆しが取り上げられています。実際には簡単ではなさそうですが、他の展開につながる可能性も秘めています。
2019年の重要なトレンド
2つの主要トレンドと逆トレンド
トレンド1 – きれいなもの:世界をもっと美しい場所にしたいという願望
トレンド2 – 「インディバーサル」の領域:個人(インディビデュアル)と普遍性(ユニバーサル)の斬新な組み合わせ
逆トレンド – 別の世界を旅する人々:2017年のTrend Obsから続く、実際には厳しいこの世界からスピリチュアルなものや旅行を通じて脱出したいという強い願望
信じたいという願いに逃避する必要性から
1年半前、Trend Obs 2017 「脱出ゲーム:真実は他のところにある」には、過多、浪費、狂気に支配された世界が描写されました。トレンドセッターは、“どちら側に付くのか”を選ばなければならないというプレッシャーに晒されながらも、自然やコミュニティ生活、スピリチュアルなものや旅行を通じ、自信で「別の世界」を築き上げています。
2018年になって、私たちは「いま、ここに」に気づくようになった
プラスの兆候を感じとったのでしょうか、想像したのでしょうか?どちらにしろ、人々はその兆候をもとに混沌とした状態を無視し、よりシンプルで、わかりやすい、人々がもう一度前に向かって一歩踏み出すことができる世界を大切に育むようになっています。景気回復の最初のステップとして、より厳しい監視下にあるテクノロジーや、未来を信じることにつながる抜本的で人間的なイニシアチブが生まれており、それは最終的にはプラスにつながります。
「世界はまさしく、ますます複雑になってきています。利己的行動や貪欲行動など、マイナスの面も確かにあるでしょう。しかし、寛大さ、愛、共感力のような他の資質の方が、もっともっと純粋な、強い力を持っているのです。」(アルゼンチンのトレンドセッター談)
現在、日々の生活の中で、統制力を取り戻そうという動きが見られる: 身体や心を浄化し、愛する人たちに囲まれ、最も弱い、貧困に苦しむ人々に手を差し伸べるという動きが見られます。
「私にとっての“あるべき世界”とは、平等でいたわりに満ちた世界です。」(イギリスのトレンドセッター談)
信じること、成長すること:この二つは非常にハイテク
一方で、トレンドセッターの間では、デジタル世界が目覚ましい幕開けを迎えています。テクノロジーという観点で自己実現を唱える動きが進んでいます。この世界を今よりもよいものに変えられるかどうかは、テクノロジーにかかっているのです。現在、「圧倒的多数の人が、“高められた神秘的な世界”で毎日を過ごせると期待しながら、“自然”“スピリチュアリティ”活動を部分的に取り戻しつつある」というレベルに来ています。
“2.0の伝統 ”では、AI世界の周辺に愛、思いやり、成功が渦巻いています。そこに、新しい幸せを見出すことはできるのでしょうか?
昔からあるパワフルな伝説が新しい形に姿を変える
人と違ってもよい権利、イニシアチブをとる自由、宗教と善行、過去からの解放、科学の進歩に対する確信... トレンドセッターが推奨する価値は、アメリカンドリームの約束―抑圧された人々を歓迎する土地、新しい生活のスタート、無限の可能性...をそのまま繰り返しています。
しかしこの伝説がもたらす約束は、魅力的ではありますが危険なものでもあります。なぜなら、「人は、自身の行動によって形成される」のように、「~である」状態よりも「~する」行動に重きを置いている約束だからです。
2つの重要なトレンドが輪郭を描き、1つの逆トレンドで大局的に捉える

トレンド1
きれいなもの
より人間性の高いもの、芸術、プラス思考、ダンス、ヒーローや美しいストーリー

トレンド2
「インディバーサル」の領域
“違う”という幻想の裏にある、 “私はいつもと変わらない”という新しいノーム
しかしこの唐突な魔法の効果は持続するのか? この極端なプラス思考にすでに最初のほころびは表れていないか?

逆トレンド
別の世界を旅する人々
この新手のアメリカンドリームから距離を置いているトレンドセッターは、少数しかいません。しかし、彼らも、2017年のTrend Obsの時と同じ勢いで、他の道の探究を続行しています。
これはブランドにとって、多くの可能性を秘めた興味深い状況であり、戦術的・戦略的思考をめぐらす機会でもあります。ブランドにはこのような楽天的なテーマからインスピレーションを引き出す必要性が生じることでしょう。しかしこういったテーマは、ブランドにとっては好都合なものですが、同時にはかなく消えてしまう可能性もあります。したがってブランドは、“熱狂”というバブルの罠にはまらないように注意しながら前進しなくてはなりません。