日本が懸念していること

イプソスの「世界が懸念していること」に関する調査結果から、イプソス日本では、日本人の懸念事項の上位を掘り下げて考察しました。

日本では人口の高齢化が大きな懸念となっていますが、この国が悩んでいるのはこれだけではありません。イプソスのグローバルアドバイザ調査「世界が懸念していること」の結果から、今日の日本人が悩まされている事柄の周辺で、2つの明確なテーマが浮き彫りになりました。 

  1.  長年にわたる経済縮小を経て、社会は勝者と敗者がいる格差社会に姿を変えてしまった。
  2. 保守政権が、例になく、革新的なアジェンダ を遂行しようとしている。日本人の懸念事項の上位は、これに関する懸念を反映している(下図参照)。

Graphic

この30年で相対的貧困率は上昇し、所得格差がますます開いてきています。現在日本人の6人に1人は、貧困ライン以下の生活をしているというほどにまで達しています。

人口の5分の1以上が70歳を超えた現在、日本の労働人口は、90年代後半から 約200万人縮小しました。また、日本の公債はGDPの250%相当にのぼり、現在では最大の負債を抱えた先進国となっていますが、これもこのような不均衡に一部起因していると言えます

日本株式会社(Corporate Japan)では長い間伝統的な終身雇用制度があったため、この時代を生きた高齢者層は個人レベルでも経済的に安定した生活を送り、その恩恵を享受してきました。しかし、バブル崩壊 後の日本においては若年層の日本人の多くに、親世代と同レベルの物質的富を得られる見通しはありません。

イプソスの調査結果を見ると、日本の高齢者は、他国の高齢者層と同じように「道徳意識の低下」に悩まされています。「道徳意識の低下」を選択したのは、日本の調査対象者の31%で、世界平均15%と比較すると日本におけるこの懸念はかなり大きいと言えます。

2018年9月は、地震に加え、記録的熱波、台風、豪雨、土砂崩れなど、自然災害の多発した特に過酷だった夏が過ぎ去った直後でもありました。そのため日本人は、他の調査対象国全ての国民よりも、「気候の変化(24%)」に高い懸念を示していますが、これも、驚くことではありません。

「税金」は常に不安材料です。これを懸念している人の割合は32%となっていますが、2019年10月には、満を持して消費税増税が施行されるため、これに対する懸念 がさらに高まっています。人口不均衡、巨額の公債、経済成長の遅さ、労働所得の伸び悩み、格差の拡大、気候の変化から生じた問題の悪化速度が加速し続けていることを踏まえれば、日本を継承する次の世代は、おそらく、然るべくして懸念しているのでしょう。

著者

  • Deanna Elstrom
    Consultant, Ipsos in Japan
  • Fumiya Shirahama
    Senior Research Executive, Ipsos in Japan

Related news