世界が懸念していること - 2022年4月
先月初めてトップ5にランクインしたインフレへの懸念は、その後も高まり続け、今や世界的な懸念事項の第1位となっています。
3人に1人が、インフレは自国に影響を及ぼす最大の問題のひとつであると答えています。
イプソスが毎月実施している「世界が懸念していること調査(What Worries the World)」では、10年分のデータをもとに、世界27カ国の市民が現在最も重要な社会問題や政治問題は何であると考えているのかを調査しています。今ウェーブは、2022年3月25日~2022年4月3日に実施されました。
主な調査結果
- インフレは今や世界的な懸念事項の第1位。32%が現在自国が直面している最大の懸念事項の1つであると回答(2022年3月時点比6ポイント増)
- 貧困/社会的不平等(31%)、失業(29%)、犯罪と暴力(25%)、金融/政治的腐敗(24%)が上位5位を占めている。
- コロナウイルスが8位に下がり、パンデミックへの懸念は引き続き減少している。2ヶ月連続で上位5つの懸念事項から外れたことになる。
- 新型コロナウイルスが懸念事項のトップとなった国は日本のみ。1月の12カ国から1か国だけになった。
- ウクライナ情勢を受け、国家間の軍事衝突を自国が直面している懸念事項として14%が選択。この問題は、気候変動と移民問題の間に位置し、18項目中11位にランクインしている。
- 軍事衝突への懸念はヨーロッパで最も高く、ポーランド(38%)、ドイツ(35%)、スウェーデン(30%)、英国(28%)、イタリア(26%)が最も懸念が大きい国である。
- 10人に6人が自国が間違った方向に向かっていると考えており、特に悲観的なペルーの93%がトップ、次いでアルゼンチン85%、コロンビア84%となっている。
インフレ
4月の世界の懸念事項は、「インフレ」が前月比6ポイント増で1位となりました。3月には、2013年に調査の選択肢として「インフレ」が追加されて以来、初めてトップ5に入り、現在では3人に1人(32%)が自国が直面する最大の問題の1つであると回答しています。
1月には5人に1人(20%)が「インフレ」を選んでおり、物価上昇への懸念が高まっていることがわかります。1年間を振り返ると、4月は12ヶ月前(10%)より22ポイントも高くなっています。
懸念の高まりはほぼ全世界で見られ、コロンビアを除くすべての国で前月より増加しています。最も懸念が高まった国は、スペイン(+21ポイント)、チリとペルー(ともに+14)、ハンガリー(+13)、オランダ(+10)などです。
アルゼンチン、カナダ、英国、ポーランド、トルコ、米国では、すでにインフレが懸念事項の第1位となっており、今回ドイツがこれに加わりました。
新型コロナウイルス
インフレへの懸念が高まった一方で、パンデミックへの懸念は低下しています。新型コロナウィルスは、2月の1位から8位に転落し、2年前に追跡調査を開始して以来、2ヶ月連続で最低スコアを記録しています。
世界的に見ると、新型コロナウイルスに関心を持つ人の割合は、前月の33%から18%へと15ポイント低下しています。また、調査対象となったすべての国で減少していまが、カナダは3ポイント増の27%、スウェーデンは1ポイント増の9%となっています。
新型コロナウイルスに対する懸念が最も高いのは、日本(47%)、韓国(45%)、マレーシア(41%)の順となっています。新型コロナウイルスに対する懸念が最も低下したのは、サウジアラビア(-18)、マレーシア(-16)、ブラジル(-13)です。
新型コロナウイルスが懸念事項のトップとなったのは日本のみで、1月の12カ国から1か国となりました。
注目の問題:国家間の軍事衝突
ウクライナでの出来事を受け、今月は「世界が懸念していること」に「国家間の軍事衝突」を追加しました。この問題は、18項目中、気候変動、移民問題に次いで11番目にランクされています。
懸念はヨーロッパ諸国で最も顕著であり、最も懸念している8カ国はすべてヨーロッパです。最も懸念が高いのはポーランドで、10人に4人(38%)が自国に影響を及ぼす最大の問題のひとつであると回答しています。
その他、ドイツ(35%)、スウェーデン(30%)、英国(28%)、イタリア(26%)などが高い懸念を示しています。懸念が最も少ないのはラテンアメリカで、下位9カ国中6カ国がこの地域です。
軍事衝突を最大の懸念事項としている国はありませんが、ドイツでは現在、インフレにわずか2ポイント差の懸念事項となっています。
正しい方向へ向かっているか?
調査対象となった27カ国全体では、ほぼ3分の2(63%)が自国は間違った方向に進んでいると回答し、37%が正しい方向に向かっていると考えています。
自国が間違った方向に進んでいると答えた人の割合が最も高かったのはペルー(93%)、次いでアルゼンチン(85%)、コロンビア(84%)です。トルコ(78%)、ポーランド(75%)も4分の3以上がそう回答しています。ペルーでは先月から9ポイント、スペインでは8ポイント上昇しました。
一方、サウジアラビア(92%)とインド(77%)は依然として自国に対して最もポジティブであり、マレーシアは先月から「正しい方向に向かっている」のスコアが15ポイント上昇しています。
経済への注目
グローバルの平均では、3人に1人(35%)が自国の現在の経済状況を「良い」と答え、過半数(65%)が「悪い」と答えています。
スペイン(16ポイント減の18%)とイギリス(11ポイント減の30%)は、この1ヶ月で経済の評価が最も低下した2カ国です。
サウジアラビアは、92%が自国の経済状況を「良い」と回答し、引き続きランキングのトップです。同国のスコアは2018年3月以降、80%を下回っていません。インドは4分の3(74%)が経済について肯定的で、これに続いています。
スウェーデンのスコアは先月の低下から回復し、16ポイント上昇の61%となっています。また、マレーシア(49%)、イスラエル(47%)、チリ(25%)でも11ポイントの上昇が見られます。
日本と韓国は先月大きくスコアを伸ばした後、日本は12ポイント減の14%、韓国は11ポイント減の26%と、両国とも以前の水準に戻っています。
本調査について
イプソスの「世界が懸念していること What Worries the World調査」は、イプソス オンラインパネルシステムを通じて世界28カ国で実施されています。調査対象国は、アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、フランス、英国、ドイツ、ハンガリー、インド、イスラエル、イタリア、日本、マレーシア、メキシコ、オランダ、ペルー、ポーランド、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、韓国、スペイン、スウェーデン、トルコ、米国です。
2022年3月25日~4月3日に、米国、南アフリカ、トルコ、イスラエル、カナダでは18~74歳、その他の国では16~74歳の成人を対象に、19,000件のオンラインインタビューを実施しました。データは人口のプロファイルに合わせて加重しています。