世界が懸念していること - 2022年12月
世界的に生活費が最大の懸念事項であることに変わりはありませんが、2020年7月以来初めて前月比で減少し、11月から2ポイント(40%)減少しました。
インフレに対する懸念は15ヶ月連続で上昇していましたが、先月、世界の物価上昇に対する懸念は10月の数値から上昇しませんでした。このことは、世界的にインフレへの懸念のピークに達したのではないかという疑問を投げかけるものです。
イプソスが毎月実施している「世界が懸念していること調査(What Worries the World)」では、10年分のデータをもとに、一般の市民が現在最も重要な社会問題や政治問題は何であると考えているのかを調査し、最新のスコアとその背景を探ります。今ウェーブは、2022年11月25日~12月9日に実施されました。
主な調査結果
- 先月はインフレに対する懸念に動きがなく、今月は減少しており、11月が単独の出来事でなかったことがわかる。この懸念に対する数値の減少は、2020年7月以降なかったものである。
- それでも、インフレは9ヶ月連続で世界の懸念事項のトップである。40%が自国が現在直面している主要な課題の一つであると回答(2022年11月より2ポイント減少)。
- アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、英国、ポーランド、サウジアラビア、米国、トルコの11カ国は、インフレを最大の懸念事項として挙げている。これは、11月の13カ国から減少している。
- 調査対象国全体では、インフレに次いで、貧困/社会的不平等(31%)、犯罪と暴力(28%)、失業(26%)、金融/政治腐敗(24%)が続く。これらが世界の懸念事項のトップ5となっている。
- 気候変動は、世界平均で 16%(-1 ポイント)が懸念しており、18の懸念事項の中で税金に関する懸念と並び第7 位である。
- 新型コロナウイルスに対する懸念は、2020年4月に項目として追加されて以来、依然として最低水準を維持している。今月、新型コロナウイルスを懸念事項として挙げた人は10人に1人強(11%)で、11月から1ポイント上昇した。昨年の今頃は32%で世界的な懸念事項のトップであった。
- 10人に6人強(62%)が自国は間違った方向に向かっていると考えており、ペルーでは89%、アルゼンチンでは85%に上った。
2022年の最高値と最低値
- 正しい方向/間違った方向
- 最高値: サウジアラビア 96% (6月)
- 最低値 :ペルー 7% (4月)
- インフレ
- 最高値:アルゼンチン 71% (8月)
- 最低値: スウェーデン 4% (1月)
- 気候変動
- 最高値:フランス 34% (9月)
- 最低値:イスラエル 1% (12月)
- 新型コロナウイルス
- 最高値:韓国 58% (1月)
- 最低値:アルゼンチン 1% (9月/11月)
- 貧困/社会的不平等
- 最高値:ブラジル 48%(8月)
- 最低値:サウジアラビア 12%(11月)
- 犯罪と暴力Crime & violence
- 最高値:チリ 68% (11月)
- 最低値:ポーランド 3% (1月、11月、12月)
- 金融/政治腐敗
- 最高値:南アフリカ、ペルー/マレーシア 58% (3月、9月)
- 最低値:スウェーデン 5% (4月)
インフレ
インフレは世界最大の懸念事項であり、10人に4人(40%)が自国に影響を及ぼす最大の懸念事項の1つとして挙げています。しかし、2020年以降、初めて懸念が低下しました(-2ポイント)。11月には懸念に変化はありませんでしたが、今回は減少しています。これは、インフレに対する懸念がピークに達したかどうかという疑問を投げかけるものです。
しかし、インフレは2022年初頭と比べるとかなり大きな課題となっています。今月のスコアは、2022年1月より20ポイント高く、2021年12月より21ポイント高くなっています。また2020年12月に比べても31ポイント高くなっています。8カ国では、2人に1人以上がインフレを懸念しており、アルゼンチンでは3分の2が懸念事項として挙げています。
今月は、アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、英国、ポーランド、サウジアラビア、米国、トルコの11カ国がインフレを最大の懸念事項としていることが明らかになりました。オランダ(現在は貧困/社会的不平等)と韓国(現在は失業)は、物価上昇を最大の懸念事項から外しています。一方、ハンガリーでは、インフレが医療と並んで最も高い懸念事項となっています。
気候変動
6人に1人(16%)が、気候変動は自国に影響を与える最重要課題の1つであると回答し、11月から変化はなく、2021年12月から2022年1月にかけても1ポイントの上昇にとどまっています。
オーストラリアは29%で、今月もドイツと並んで1位となりました。両国とも 11 月より 2ポイント 減少しました。フランスは 5ポイント減少し、英国 は 4ポイント上昇しました。
オーストラリアでは、気候変動が2番目に大きな懸念事項として位置づけられ、ドイツでは、インフレと不平等に次いで3番目に高い懸念事項となっています。
イスラエル(1%)は5ポイント低下して最下位となりました。1月時点では、イスラエルが9%、アルゼンチンとペルーが2%でした。
新型コロナウイルス
今月は新型コロナウイルスが1ポイント増加しました。2020年4月に「世界が懸念していることWhat Worries the World」に追加されて以来、懸念の報告数が最も少ない水準にとどまっています。2021年12月には、世界の約3分の1(32%)がこのウイルスを最大の懸念事項として位置づけておりトップでした。2022年1月には35%で再びトップとなっていました。
2022 年 12 月時点では、日本(31%)が 3 ポイント上昇し、依然として最も懸念している国となっています。インフレへの懸念を抜き、貧困/社会的不平等に次ぐ2位となりました。タイ(27%)も 13ポイント と顕著に上昇しています。
先月はドイツが21%で3位でしたが、現在は11ポイント減少して12位です。中南米諸国は懸念が高まっています。ブラジル(18%)がプラス13ポイント、ペルー(17%)がプラス14ポイントと動きを見せています。
貧困/社会的不平等
世界のほぼ3人に1人(31%)が、貧困/社会的不平等に対して懸念を抱いています。これは、18の懸念事項の中で、依然として第2位です。1月以降、若干の変動はあるものの、引き続き2位をキープしています。
今月インドネシアは減少しましたが(-1ポイント)、依然として最高値を維持しています。ハンガリー(42%)は、11 月から 5ポイント上昇し、ブラジル(41%)を 2 位から引き離しました。タイも 1 ポイント上昇しています。
ブラジル、日本、タイ、そして今回のオランダは、不平等が最大の懸念事項である国です。
サウジアラビアは11月から1ポイント上昇し、不平等への懸念が最も低く(13%)、次いで米国の17%が懸念事項と回答しています。今月はポーランド(27%、+7ポイント)、スウェーデン(25%、+5ポイント)が上昇しました。
経済への注目
グローバルの平均では、自国の現在の経済状況を「良い」と回答したのは34%で、先月から2ポイント上昇しました。
国別では、マレーシア(+9)、オランダ(+7)、英国、インド(ともに+6)で肯定的な意見が最も多くなっています。
経済的に「良い」スコアが減少したのは、タイ(-10)、スウェーデン(-4)、韓国(-3)、ポーランド(-1)のわずか4カ国だけでした。
12 月は、サウジアラビアが過去最高点から 1ポイント、インドが過去最高点から 5ポイント差で「良い」スコアを記録し、明暗が分かれる月となりました。一方、スウェーデンは過去最低を記録し、韓国は過去最低のスコアから2ポイントまで低下しました。
本調査について
イプソスの「世界が懸念していること What Worries the World調査」は、10年を超えるデータをもとに、世界29カ国の市民が現在最も重要な社会問題や政治問題は何であると考えているのかを調査し、最新のスコアとその背景を探ります。
この調査は、2022年11月25日~2022年12月9日に、カナダ、イスラエル、マレーシア、南アフリカ、トルコ、米国の18~74歳、インドネシア、タイの20~74歳、その他21カ国では16~74歳の成人を対象に、19,504人のオンライン調査を実施しました。