世界が懸念していること - 2023年11月: テロと国家間の軍事衝突への懸念が増加
ガザでの紛争が続く中、テロ(12%が懸念事項として回答)と国家間の軍事衝突(10%)はそれぞれ5ポイント、3ポイント上昇しており、イスラエルと一部のヨーロッパ諸国では顕著なレベルとなっています。
イプソスが毎月行っている「世界が懸念していること(What Worries the World)」調査では、一般市民が現在最も重要な社会問題や政治問題は何であると考えているのかを調査し、最新のスコアとその背景を10年以上のデータをもとに探ります。今ウェーブは2023年10月20日から11月3日に実施されました。
主な調査結果
- インフレ(38%)は20ヶ月連続で最大の懸念事項となっている。
- 世界の「自国の方向性」についての調査対象国の世界平均は今月も比較的横ばいで、3分の2強(37%)が自国は正しい軌道に乗っていると答えている。
- 10月15日の選挙を受け、ポーランドの「正しい方向」スコア(37%)は10ポイント改善している。
- テロと国家間の軍事衝突に対する懸念は、今月はともに上昇している(それぞれ5ポイント増、3ポイント増)。
- イスラエルのテロに対する懸念度は、2015年12月以来、どの国よりも高いレベルに達しており、先月から24ポイント上昇し、現在63%である。
- 同様に、イスラエル人は軍事衝突も非常に懸念しており、27ポイント増加し、10人に4人以上(43%)がそう回答している。
インフレ
29カ国のほぼ10人に4人(38%)が、インフレを自国が直面する最大の懸念事項の一つに選択しています。
世界的なインフレ懸念は2月に43%とピークに達しました。それ以来、今年の各月で10人中4人が問題として挙げており、高い水準を維持しています
マレーシア(37%が物価に懸念を抱いている)は今月、どの国よりも急激に低下し、懸念が9ポイント減少しています。
一方、チリ(現在43%)、タイ(35%)、メキシコ(32%)の3カ国は、いずれも懸念レベルが5ポイント上昇しています。
今年11月は、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、フランス、インド、ポーランド、シンガポール、米国、そしてトルコの9カ国がインフレをトップの懸念事項に挙げています。
インフレに対する人々の意識の詳細については、最新の29カ国の グローバルインフレモニター Global Inflation Monitor をご覧ください。
テロ
テロは現在、「世界が懸念していること」調査で18の懸念事項のうち11位にランクされています。先月は14位でした。今月は10月から5ポイント増えて12%となっています。
今回のガザ紛争の後、テロはイスラエルにとって他に大差をつけた最大の懸念事項となっています。前月比24%の上昇の後、イスラエル国民のほぼ3分の2(63%)が現在懸念を抱いています。これは2015年12月以来のイスラエル最高値です。
しかし、前月比で最も急上昇したのはフランス(33%がテロを懸念事項として挙げている)であり、26ポイントの上昇で2位となっています。ベルギーもテロを懸念しており、18ポイント増の4分の1(24%)が回答しています。
スウェーデンもまた、10月に減少した回答率が増加しており、7ポイント上昇してほぼ4分の1(23%)となっています。
国家間の軍事衝突
国家間の軍事衝突に関する回答は今月3ポイント上昇しています。10月から4つ順位を上げ、現在12位につけています。これは2022年10月以来の高水準です。
テロへの懸念と同様に、軍事衝突への懸念もイスラエル人の間で大きく高まっており、27ポイント上昇しています(43%)。これはイスラエルで2番目に大きな懸念事項であり、2022年4月にこの項目の調査を開始して以来、最も高いレベルです。
イスラエルとハマスの戦争は、紛争への不安を他国にも広げているようです。ウクライナ戦争が始まって以来、ポーランド(27%が主な懸念事項の一つに挙げている)はこのリストの上位を維持しており、5ポイント上昇し、高止まりしています。その一方で、米国(16%)の回答は7ポイント上昇し、2022年5月以来の高水準となっています。
犯罪と暴力
29カ国で10人に3人(30%)が自国の懸念事項として犯罪と暴力を挙げています。
スウェーデンは依然として10人に7人(67%)が犯罪と暴力を懸念しており、先月から1ポイント減少にとどまっています。9月に記録した急上昇の後、この問題は記録的な水準で推移しています。
先月、イスラエルは犯罪と暴力を最大の懸念事項としていました。しかし、今月11月には15%減少し、3分の1強(35%)となっています。これは、テロや国家間の軍事衝突に関する回答が大幅に増えたためです。
今月もスウェーデン、メキシコ、チリ、ペルー、ブラジルの5カ国が犯罪と暴力を最大の懸念事項としています。スウェーデンを除けば、主にラテンアメリカ諸国が名を連ねる結果となっています。
移民規制
移民規制については、世界全体で15%にとどまっています。しかし、他の懸念事項が変動したため、今月は8位にランクアップしています。
移民を懸念するという点では、ヨーロッパ諸国は他の地域よりも上位にランクされる傾向があります。ドイツは3ポイント低下したにもかかわらず、依然として移民規制を最大の懸念事項としており、5分の2(41%)が懸念を抱いています。ベルギーも現在、この問題を最大の課題としており、2ポイント上昇して29%となっています。トルコ(43%)は、この問題を2番目に懸念しており、10月から2ポイント増加しています。
英国は先月4位でしたが、今月は5ポイントの下落を記録し、英国国民のわずか4分の1(24%)が懸念を抱いているという結果になっています。
経済に対する満足度
インドは今月もランキングのトップを維持しており、10人に8人以上が現在の自国の経済状況を「良い」と回答しています。
肯定的な経済認識が先月から最も上昇したのはイスラエル(+7)、次いでマレーシア(+6)です。メキシコのスコアが3ポイント上昇し、過去最高を記録しています(53%)。
一方、アルゼンチンは最下位をキープしています。アルゼンチンのスコアは、過去10年間の4分の1以上の期間(120ヶ月のうち32ヶ月)で10%を下回っています。調査は11月19日の総選挙に先立って行われました。スペイン、ブラジル、コロンビアはいずれも前月比で7ポイント減少しています。スウェーデンのスコアは1ポイント低下し、今年5度目の過去最低を記録しています。
本調査について
イプソスの「世界が懸念していること What Worries the World調査」は、イプソス オンラインパネルシステムを通じて世界29カ国で実施されています。2023 年10月 22日~ 年11月3 日に、カナダ、イスラエル、マレーシア、南アフリカ、トルコ、米国の18~74歳、インドネシアとタイの20~74歳、シンガポールの21~74歳、その他の国では16~74歳を対象に、20,570人のオンライン調査を実施しました。