AI が世界をより不安にさせる
イプソス・ グローバル アドバイザーで実施した最新の調査によると、31 カ国の平均で、AI を利用した製品やサービスに「神経質になる」(52%)という意見と、「期待する」(54%)という意見がほぼ同数に上りました。AIに関連するすべての指標の中で、18ヶ月前に実施された前回の調査から最も増加したのは「不安感」です。対照的に、新たな AI アプリケーションが急増しているにもかかわらず、どういった種類の製品やサービスに AI が利用されているかを理解していると答えた人の割合には、比較的変化がありません。
変わらないのは、 一般的にAI に熱心な新興市場と、AI に慎重な高所得国との間にある溝です。また、AI に対する信頼と熱狂は、若い世代、特に Z 世代、そして所得や教育レベルの高い人々の間でより強い傾向があります。
31 か国の調査対象者の過半数は、AI を活用した製品やサービスが今後数年間で日常生活を大きく変えると予想しています。時間管理や娯楽の選択肢について楽観的な見方がある一方で、雇用への悪影響については懸念も広がっています。平均で、働く人の57% が AI によって現在の仕事のやり方が変わると予想し、36% が現在の自分の仕事に取って代わると予想しています。
これらは2023 年 5 月 26 日~ 6 月 9 日にかけて、イプソス ・グローバル アドバイザー のオンライン調査プラットフォームと、インドでは主に対面式で実施された、30 カ国の75 歳未満の 22,816 人を対象とした調査結果の一部です。調査結果は、世界中の消費者のAI に対する認識と期待が変化していることを明らかにし、AI が生活の様々な側面に与える潜在的な影響について、期待と不安の両方があることを明らかにしました。
詳細な調査結果
AIに対する理解は依然として遅れている
調査対象となった 31 カ国の平均では、 3 分の 2 (67%) が AI とは何かをよく理解していると回答していますが、どの製品やサービスにAI が利用されているかを把握していると回答したのは半数 (51%) に止まりました。
どの製品やサービスに AI が使用されているかについての知識は、若年層、男性、被雇用者、高学歴者、富裕層の間で高くなっています。
典型的なパターンでは、AI を活用した製品やサービスに対する認知度は、インドネシアとマレーシアの 70% 以上から、ベルギー、ニュージーランド、米国のわずか 35%までの差があります。
AI に対する理解度は過去 18カ月でわずかに上昇しましたが、どの製品やサービスで AI が利用されているかについての認識度は、2021 年 12 月に行った AI に関するグローバル調査以降、ほとんど変化がありません。このことは、AIの普及が進む一方で、日常的に使用する様々なテクノロジーにおいてAIが果たす役割に対する消費者の認識が、それに見合うほど高まっていないことを示唆しています。
複雑な感情と高まる不安
31カ国の平均では、回答者の約半数が、AIを利用した製品やサービスには欠点よりも利点の方が多く(54%)、それらに期待している(同じく54%)、という意見に同意しています。
しかし、ほぼ同数 (52%) が AIを利用した製品やサービスに不安を感じています。前回と今回の調査の対象となった 24 カ国全体では、平均 12 ポイントの増加ということになります。このことは、進化する AI テクノロジーによる悪影響について、世界中の人々が懸念を強めていることを示唆しています。
AI に対する期待は新興市場で最も高く、ヨーロッパと北米で最も低くなります。また、Z世代とミレニアル世代、そして大卒者の間でも高くなっています。
英語を主言語とする国ではいずれも不安感が最も高くなっており、日本、韓国、東ヨーロッパでは最も低くなっています。
信頼感では地理的に大きな違いがある
AI に対する信頼は地域によって大きく異なり、一般的に新興市場や40歳以下の人の方が、高所得国やX世代・ベビーブーマー世代よりも、はるかに高くなっています。
AI を利用する企業が個人情報を保護することに対する信頼度は、タイの 72% からフランス、日本、米国ではわずか 32% にとどまっています。 AI が特定の人々を差別することはないと信頼する人の割合は、国によってさらに大きな開きがあります。
半数が過去数年間に AI が自分たちの生活に影響を与えたと回答…
世界的には、 AI を活用した製品やサービスが過去 3 ~ 5 年の間に日常生活を大きく変えたと回答したのは半数 (49%) で、これは 2021 年 12 月とほぼ同じ割合でした。
韓国および東南アジア全体では、このように感じている割合は、北西ヨーロッパおよび北米のほとんどの国よりも約 35 ~ 40 ポイント高くなっています。
また、Z世代とミレニアル世代では、ベビーブーマー世代よりも平均して少なくとも20ポイント高くなっています。
…だが、3人に2人は、近いうちに状況が大きく変わると予想している
平均で 66% が、今後3~5年のうちにAI を活用した製品やサービスが日常生活を大きく変えるという意見に同意しており、すべての国 (韓国の 82% からフランスの 51%) およびすべての層 (ただし、特に富裕層と大学教育を受けている層)で過半数となっています。
就労者の57% はAIが現在の仕事のやり方を変え、36%はAIが現在の自分の仕事に取って代わると予想しています。
「AIが現在の仕事のやり方を変える」と「AIが現在の自分の仕事に取って代わる」への同意は、いずれも、東南アジアで最も高く、北欧で最も低く(最大 50 ポイントの差)、また若年層や意思決定者の間では、そうでない層よりもはるかに高くなっています。
すべての変化が良い方向に向かうとは限らない
世界的には、半数をわずかに超える人がAI の利用が増えることで、時間に余裕が出来、娯楽の選択肢が増えると予想しています。
健康や仕事、自国の経済が改善されると答えたのは 3 人に 1 人か、それよりわずかに多い程度でした。
雇用市場は好転するどころか悪化するとの声も多くなっています。
繰り返しになりますが、AIに対する楽観的な見解は、高所得国よりも南半球で、高齢者や大学教育を受けていない人よりも若年層や高学歴の人々の間ではるかに高くなっています。
本調査について
これらは、2023 年 5 月 26 日~ 6 月 9 日にかけて、イプソス・グローバルアドバイザーの オンライン調査プラットフォームと、インドでは IndiaBus を用いて、インドの18歳以上、カナダ、アイルランド共和国、マレーシア、ニュージーランド、南アフリカ、トルコ、米国の18~74歳、タイの20~74歳、インドネシアとシンガポールの21~74歳、その他20カ国の16~74歳の22,816人を対象に実施された31 カ国の調査結果です。