BBCグローバル調査:世界は分裂しているのか
世界の4分の3は、「自国の社会は分裂している」と述べています。また、過半数が「自国は10年前よりも分裂が進んでいる」と考えています。この現象は、ヨーロッパで最も顕著でした。緊張状態の最大の原因は「政治的見解の違い」であると考えられており、次いで「貧富の差」が挙がっています。しかしながら、このような分裂があるにもかかわらず、ほとんどの国で過半数の人が「世界中の人々には、相違点よりも共通点の方が多い」という考えに賛同しています。
イプソス・モリはBBCの依頼を受け、世界の人々がどの程度「自国の社会が分裂している」と考えているのかについて、27か国でグローバル調査を実施しました。この意識調査は、今年の1~2月に65歳未満の成人を対象にオンラインで実施され、世界に見られる「分裂」および「社会の緊張」に対する一般市民の態度を調査しました。調査結果によると、27か国においては平均で4人に3人(76%)が、「自国の社会は分裂している」と回答しています。分裂について最も懸念度が高かった国は、ほとんどの人(93%)が「自国の社会は分裂している」と述べたセルビア、次いでアルゼンチン(92%)、ペルー、チリ(両国とも90%)となっています。「自国は分裂している」と述べる傾向が最も低かったのはサウジアラビア(34%)で、それに続いたのは、中国(48%)、日本(52%)です。
「10年前から、分裂の状況はどう変化したか」という質問に、「分裂が、以前より解消した」と回答した割合は16%だったのに対し、「現在の方が、自国の分裂が進んでいる」と回答したのは、10人中6人(59%)です。「分裂化が進んだ」と考える傾向が最も高かったのは、ヨーロッパ諸国でした。スペインでは、国民の4分の3が(77%)、「10年前より、自国の分裂化が進んだ」と回答しています。次いで、その割合が高いのは、スウェーデン、ドイツ、イギリス、およびイタリア(全て73%)です。日本ではこの割合が低く、43%でした。
27か国全体で、緊張状態の原因として最も有力視されていたのは、「政治的見解の違い」(44%)、「貧富の差」(36%)、「移民と、国内で出生した人との差」(30%)、そして「宗教の違い」(27%)です。
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「政治的見解の違いから、緊張状態が生じている」と回答する傾向が最も高かったのは、マレーシア(74%)、アルゼンチン(70%)、ポーランド、トルコ、セルビア(3国とも63%)。
- ロシアと中国のでは3分の2(65%)の人々が「貧富の差が緊張状態を生み出す最大の原因」と回答している。「貧富の差」は日本ではトップの項目であるが、他国と比較するとその割合は突出しているわけではない。
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「移民と、国内で出生した人」の間にある緊張は、多くのヨーロッパ諸国に見られる問題である。イタリア(61%)、イギリス(50%)、スウェーデン(49%)、ドイツ(46%)、フランス(45%)。
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「移民と、国内で出生した人」の間にある緊張は、多くのヨーロッパ諸国に見られる問題である。イタリア(61%)、イギリス(50%)、スウェーデン(49%)、ドイツ(46%)、フランス(45%)。
しかし、調査結果には楽観思考もいくつか見え隠れしています。過半数の人(65%)は、「世界の人々には相違点よりも共通点の方が多い」と考えています。この考えに同意する割合が最も高かったのは、ロシア、セルビア(両国とも81%)でしたが、対照的に最も低かったのは、日本(35%)、ハンガリー(48%)、そして韓国(49%)でした。
その他の調査結果は以下のとおりです。
- 「背景、文化、考え方の違う人に対して寛大な国民であるかどうか」という問いに対する答えは二分されている。世界の調査対象国全体では、46%が「自国は非常に・まあ寛大である」と回答しているのに対し、「あまり・全く寛大ではない」と回答した割合は50%。国別にみると「非常に・まあ寛大である」と74%が回答したカナダがトップ、次いで中国(65%)、マレーシア(50%)。寛大度が最も低いのは、ハンガリー(16%)、韓国(20%)である。 日本は37%である。
- 「自国の国民は、10年前に比べてより寛大になったか、あるいは、寛大ではなくなったか」という問いに対して「より寛大になった」と回答する人(30%)よりも、「寛大ではなくなった」(39%)と回答する人の方が多い。「寛大になった」と回答する傾向が最も高いのは、中国(59%)、チリ(44%)、カナダ(42%)、ペルー(42%)。一方で、「寛大ではなくなった」と回答する傾向が最も高いのは、ハンガリー(62%)、ベルギー(57%)、イタリア(57%)である。日本では「より寛大になった」(27%)が「寛大ではなくなった」(19%)を上回る。
- 調査対象国全体で見ると、「全てのグループを平等に信じている」と回答したのは5人中1人(20%)。一方で、最も信頼されていないグループには、「政治的見解が違う人」(18%)、「移民」(16%)、 「裕福な人」(13%)が挙げられている。政治的見解の違う人に対する信頼度が最も低かったのは、韓国(35%)、トルコ、マレーシア(28%)。また、移民に対する信頼度が最も低かったのは、ロシア(34%)、マレーシア(31%)、ハンガリー(28%)である。
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異なる背景を持つ人との混合に比較的懐疑的な態度を示すのは、ヨーロッパ諸国である。調査対象国全体では、「異なる背景、文化、考え方を持つ人との混合で衝突が起きる」と述べた人の割合は、14%のみである。しかし、ハンガリー(34%)、スウェーデン(33%)、ドイツ(29%)、ベルギー(27%)におけるこの割合は、平均よりも高い。
- 3分の1(34%)の人は、「混合によって誤解が生じることがあるが、乗り越えることが出来る」と述べている。一方で、「混合は、相互理解・尊重につながる」と述べている人の割合は40%。「混合は理解・尊重につながる」と述べる人の割合が最も多かった国はマレーシア(68%)で、続いてチリ(64%)、メキシコ(63%)、メキシコ(63%)。イギリスでも、この割合は半数(52%)に達している。日本は16%に止まる。
- 「異なる宗教の信者との混合」についての質問では、同じような割合である。調査対象国全体では、16%の人が、「異なる宗教の信者と混合すると、衝突が生じる」と述べている。ベルギー(31%)、スウェーデン(30%)、ドイツ、日本(いずれも29%)では、全体よりも高い。
- 「他の宗教の信者との混合で誤解が生じることがあるが、その状況は乗り越えることができる」と述べる人の割合は3分の1(34%)。また、「混合は、相互理解・尊重につながる」と述べた人は、37%である。この項目にてトップを飾ったのは、またもやマレーシアで、71%の人が「他の宗教の信者との混合は、相互理解・尊重につながる」と述べている。マレーシアに続いてこの割合が高かったのは、トルコ(66%)、アルゼンチン(53%)である。