トランスジェンダーに対する世界の態度

イプソスの責任の一つである「データを通じて人々の声を届けること」の一環として、イプソスが毎月実施しているグローバルアドバイザー調査を利用したトランスジェンダーに関する調査を実施しました。

この調査は、2017年10月24日~11月7日、世界27カ国(アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、中国、エクアドル、フランス、ドイツ、イギリス、ハンガリー、インド、イタリア、日本、マレーシア、メキシコ、ペルー、ポーランド、ロシア、セルビア、南アフリカ、韓国、スペイン、スウェーデン、トルコ、アメリカ)で実施されました。

しかし、この要約を作成するにあたり、その国のデータの代表性を確保するに足るインターネット普及率がある16カ国(アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イギリス、ハンガリー、イタリア、日本、ポーランド、セルビア、韓国、スペイン、スウェーデン、アメリカ)に絞り調査結果を比較しています(データは加重されています)。調査手法の詳細はレポートに記載されています。

自国に対してトランスジェンダーの人々の支援、保護を求める人が過半数

自国に対し「トランスジェンダーの人々を更に支援・保護をしてほしい」と考えている人が、世界各地で半数を上回り、かなりの割合を占めています(60%)。対象国の中で、この考えに賛同する傾向が最も高かったのは、スペイン(70%)とアルゼンチン(67%)でした。一方、この考えに賛同する傾向が最も低かったのは、ポーランド(39%)、ハンガリー、日本(どうちらも41%)でした。アメリカ(51%)とフランス(52%)は、自国に対し「トランスジェンダーの人々を支援・保護してほしい」と考えている回答者の割合は、半数を少し上回る程度でした。世界各地で、「自国の政府は、トランスジェンダーの人々を差別から守る必要がある」(調査対象者全体の70%が賛同)と考える傾向にあります。今回の対象国では、どの国も、この考えに賛同する割合が過半数にのぼっています。賛同する傾向が最も高かったのは、アルゼンチン(84%)、一方で低かったのはポーランド(51%)でした。

英語圏の国では正しい“代名詞”が使われているのか

世界各国の国民はトランスジェンダーの人々を指すときに使う正しい代名詞をどの程度知っているのでしょうか。これに対する理解を深める目的で、イプソスはこの問題に関する2つの質問を設けました。これらの質問は、主要言語が英語の国(オーストラリア、カナダ、イギリス、アメリカ)だけで調査されました。英語では、代名詞を使う際に、男性か女性かの二択で選ばなくてはならないことから、英語圏にこの質問を限定しています。将来的には、同様の質問を言語ごとに設けていきたいと考えています。

これらの英語圏の国では、5人中2人が、出生時に使われていた代名詞ではなく、トランスジェンダーの男性 (出生時は女性)を「彼(he)」と、また、同様の女性(出生時は男性)を「彼女(she)」を使うと回答しました。「彼ら(they)」という中性的な代名詞を使用している人は、5人中およそ1人です。トランスジェンダーの人を指す代名詞として、「その人の出生時の性別で代名詞を使う」と回答する傾向が最も高かったのはアメリカ人で、トランスジェンダーの女性(出生時は男性)に「彼(he)」とを使う人は22%、同様の男性(出生時は女性)に「彼女(she)」を使う人は21%でした。「トランスジェンダーの出生時の性別で代名詞を使う」と回答する傾向は、オーストラリア(同様にそれぞれ、13%、14%)、カナダ(それぞれ14%)、およびイギリス(それぞれ12%、13%)では比較的低くとどまりました。

「トランスジェンダーの人々に対して以前よりも寛容になってきている」と世界各国で考えられている

世界各国を見ると回答者の10人に6人(59%)が、「自国はトランスジェンダーの人々に対して以前よりも寛容になってきている」と感じています。この認識が最も強かったのは、アルゼンチン(78%)、カナダ(78%)、およびイギリス(75%)でした。一方、同様に考える傾向が最も低い国は、ハンガリー(31%)、ポーランド(41%)、日本(43%)となっています。寛容度が高まっているのに加え、これらの調査対象国の過半数の人(60%)が、「トランスジェンダーの人は勇気がある」と考えています。これに賛同する傾向が最も強かったのは、スペイン(74%)、アルゼンチン(70%)、イギリス(69%)で、最も低かったのは日本(38%)とハンガリー(48%)でした。

「トランスジェンダーは、自然発生的に起こる」とほとんどの人が考えている一方で、「精神疾患の一つ」、あるいは「罪」だと未だに信じている人も多い

トランスジェンダーに対する認識(誤認識)に幅があるという現状を踏まえ、イプソスとバズフィード(BuzzFeed)は、ウィリアムズインスティチュート(Williams Institute)と議論を交わし、トランスジェンダーという概念や、トランスジェンダーの人の出現を一般人がどのように認識し、理解しているのかをよりしっかりと把握する目的で、2016年に、一連の質問を作成しました。

調査対象国の過半数の人(52%)が、「トランスジェンダーは自然発生的に起こる」と考えています。この考えが一般的なものとして、最も浸透していた国はスペイン(64%)、ドイツ(60%)でした。一方で、この考えを信じていない傾向が最も高い国は、ハンガリー(44%)、イタリア(45%)、日本(48%)でした。イタリアとハンガリーでは、「トランスジェンダーは自然発生的に起こる」とほぼ同じ割合で考えられていたものの、イタリアで「トランスジェンダーは一種の精神疾患である」と考えている人の割合はわずか11%であるのに対し、ハンガリーでは43%でした。イタリア(11%)、スペイン(9%)、アルゼンチン(13%)、およびフランス(13%)においては、この考えを信じる人の割合が最も低いという結果でした。対照的に、セルビア(44%)、ハンガリー(43%)、ポーランド(41%))でのこの割合は、5人中2人となっています。欧米諸国において、「トランスジェンダーの人には精神疾患がある」と考える傾向が最も高かった国はアメリカ(32%)であり、「トランスジェンダーの人は罪を犯している」と考える傾向についても、調査対象国全ての中で最も高い結果(32%)となりました。また、「社会が、出生時の性別とは違う性別として洋服を着たり、生活したりすることを許容しすぎた」と回答する傾向が最も高かったのもアメリカ人でした。一方で、この意見に賛同する傾向が最も低かったのは、日本人でした。

調査の際に配慮したこととトランスジェンダーの人への接近

今回のように繊細かつ関連情報の少ない可能性のあるトピックで調査を行うには、多くの難題がありました。最大の難題は、「トランスジェンダー」という言葉そのものです。英語では、(性転換者、インターセックス、男女同性者など、その他の旧式の、場合によっては不適切な言葉と並んで、)かなり広範で使われている言葉ですが、どの言語においても、これに対する完璧な対訳語がないのです。実際に、他の言語において「トランスジェンダー」を意味する言葉は、明らかに軽蔑的なニュアンスがあるか、あるいは、特殊な性別(例えば、インドにおけるHijraは、男性の生殖器を持って生まれたトランスジェンダーの女性を普遍的に指している)を言及するケースもありました。

イプソスは、(2016年にウィリアムインスティチュートとバズフィードとの議論から)可能な限り明快な表現にしようと、この調査では「トランスジェンダー」という言葉や、あるいはそれに値する他の訳語の代わりに、「出生時の性別とは違う性別として洋服を着たり、生活をしたりしている人」というフレーズを使って質問を作成しました。難題はこれだけではなく、一般のトランスジェンダーに対する認識把握やトランスジェンダーの個人に接近することもまた難しいことです。

例えば、いずれの国においても自身を「トランスジェンダー(あるいは、出生時の性別とは違う性別として洋服を着たり、生活をしたりしている人)」と認識している人の割合はほんのわずか(0%~2%、2カ国を除く)です。しかしこの0%~2%の範囲だけでも人口に対する出現率が非常に低いことを考えるとかなり差が大きいのです。さらに、報告されているアメリカ(5%)とインド(4%)のトランスジェンダーの割合は現実よりもかなり高いと思われます。多くの国において自身でトランスジェンダーだと認識している人の出現率、あるいはトランスジェンダーの人と近しい関係にある人の出現率は、既存の出現率データを基にした予想よりも高いようです。この調査結果の理由として様々なことが考えられます。詳細は以下のとおりです:

  • 調査に関連する単純な誤差範囲。通常、「誤差幅」「信頼区間」と呼ばれるもの。本調査のサンプルサイズでオンライン調査を実施した場合、誤差範囲は3~5ポイント。
  • 「トランスジェンダー」という語の代わりに「出生時の性別とは違う性別として洋服を着たり、生活をしたりしている人」というフレーズを使用したことによる混乱。各国ではTransgender、Hijra、Intersex、Aravaniなど、多様な語がはるかに一般的な語句として使用されている。一方、理由は明らかではないが、アメリカやインドの人々は「出生時の性別とは違う性別として洋服を着たり、生活をしたりしている人」というフレーズに同意するが、この調査が意味するトランスジェンダーの人々を指していない可能性がある。言い換えれば、翻訳上の異文化間の誤解を避けるために利用した語によって一部の国では質問の理解に思わぬ影響を与えてしまった可能性がある。
  • 一般的な質問の読み違いや読み飛ばしによるもの。

実質的にはおそらく、オンライン調査という手法自体に問題があったと考えることを避けては通れません。オンライン調査の手法は最もコスト効率が良く、多くの国で大勢の対象者を同時に調査するためには大変効率的です。実際に同様のサンプルサイズの調査を電話調査で実施した場合、イプソスの試算ではオンライン調査のおよそ10倍超となるでしょう。

しかし、インターネットへのアクセスが普遍的でない国―たとえばインドのようにアクセスが居住地域、教育レベル、貧富と非常に関係が深い国々―では、代表性が低いと言えます。最初に述べたように、オンライン調査がその国の人口の代表性を保てると判断できるに足るオンライン普及率の高さがある16カ国に分析を絞り込みました。しかし、社会学者ならだれでも、このような場合であってもオンライン調査はトランスジェンダーの人口の割合などの人口推定のために設計されていないと考えるでしょう。これらの質問を我々に可能なツールで追求し、この調査から得られた知見はトランスジェンダーの人々に対する大衆の態度と非常に関連性があり、重要であると考えています。もちろん調査対象国すべてのデータを公開すること、必要に応じて適切に利用していただくことも可能です。

調査手法の詳細は以下のとおりです。データファイル(SPSSまたはExcel表)が必要な場合はお知らせ下さい。

調査の手法
これらの調査結果は、2017年10月24日~11月7日にイプソスが実施した調査から得られたものです。イプソスオンラインパネルシステムを利用し、世界27カ国で毎月実施している調査を基にしています。調査実施国は、アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、中国、エクアドル、フランス、イギリス、ドイツ、ハンガリー、インド、イタリア、日本、マレーシア、メキシコ、ペルー、ポーランド、ロシア、セルビア、南アフリカ、韓国、スペイン、スウェーデン、トルコ、アメリカです。
サンプルサイズは19,747人(アメリカ、カナダでは18歳~64歳、その他各国では16歳~64歳が対象)です。

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