ヘルスケアに関するグローバル調査

治療が利用できるかどうか、スタッフの不足、医療にかかる費用・・・この3点が世界の人々が医療に関して懸念していることのトップ3です。「ヘルスケアに関するグローバル調査」はイプソスが世界28カ国で実施した、個人の健康、ヘルスケアに関するテクノロジー、情報、将来への期待などをカバーした包括的な調査です。

イプソスが28カ国で23,000人を対象に実施したグローバルアドバイザー調査で、医療の質に対する消費者の評価は各国で大きく異なることが明らかになりました。世界では45%の調査対象者が「自国で利用できる医療の質は高い」と回答し、33%が「どちらでもない」、23%が「質が低い」と回答しています。消費者が自国の医療の質によい評価をする傾向が高いのはイギリス(73%)、マレーシア(72%)、オーストラリア(71%)です。一方低い評価が高い評価を上回る国はブラジル(低い評価が39ポイント上回る)、ポーランド(31ポイント)、ロシア(29ポイント)です。日本では、「質が高い」と回答したのは34%にとどまりましたが、「どちらでもない」が58%で、「質が低い」と回答したのは8%のみ(オーストラリア、韓国の7%に次ぐ数字)でした。

医療システムに見られる問題の中で、世界の人々が最も懸念しているのは「治療の利用/長い待ち時間」(40%の対象者が選択)です。特にポーランド(70%)、セルビア(68%)、ハンガリー(65%)、チリ(64%)ではその懸念が大きいという結果です。次いで「スタッフ不足」(36%)で、スウェーデン(68%)、フランス(67%)、ハンガリー(63%)、ドイツ(61%)で大きな懸念が示されています。第3位は「治療の費用」(32%)ですが、アメリカ(64%)、マレーシア(49%)、インド(44%)、サウジアラビア(32%)、オーストラリア(38%、同率1位)のようにこの懸念がトップとなっている国もあります。特定の国では、他に次のような懸念事項があがっています。「治療の質」(ロシアで59%)、「高齢化」(日本で52%、中国で46%)、「投資不足」(アルゼンチン、ブラジル、イギリス、スペインで40%超)、「官僚主義」(メキシコで46%)、「衛生基準の低さ」(インドと南アフリカで30%)

医療の将来については、新興国(特に中国、インド、サウジアラビア、マレーシア、ラテンアメリカ各国)では楽観的な見方が優勢ですが、多くの先進国(特に西ヨーロッパ)では悲観的な見方が優勢で、国によって大きく異なっていることがわかります。世界的に見ると楽観的回答が悲観的回答を上回っているのは、「様々な段階での治療の利用」(楽観が悲観を29ポイント上回る)、「医療の質」(18ポイント)、「医療提供者に診察を受けられるかどうか」(15ポイント)ですが、悲観的回答が楽観的回答を上回っているものもあります。それは「医療の費用」(4%)です。

「医療専門職者とのやり取り」に関する意見は「医療システム」に対する意見よりも好意的です。世界の調査対象者の過半数が前回の診察時、医療専門職者は「尊厳と尊敬の念を持って自分と向き合ってくれた」(60%)、「真剣にとりあってくれた」(56%)、「私の価値観、好み、説明したニーズを尊重してくれた」(55%)、「自分自身をそのまま受け入れてくれた」(55%)、「自身の安全を優先してもらえた」(52%)、「医師に求められていることが何かを理解していた」(52%)と回答しています。しかし今回の調査結果から、多くの患者は医療提供者と密接な関係性を持っていないことがわかります。世界の調査対象者で「前回の診察時、医療提供者は自分のことを一人の人間として覚えていてくれた」(36%)、「医師のことをよく知っている」(37%)、「医師は情緒的な支援をしてくれた」(40%)と回答したのは半分にも足りません。調査対象国で医療経験に関する16項目の平均評価が最も高かったのはインド、アメリカ、マレーシア、オーストラリア、カナダで、最も低かったのは日本、ロシア、韓国、ペルー、ブラジルです。

世界的にみると、89%の調査対象者が「かかりつけ医に相談したことがある」(最低一年に一度の70%も含む)と回答、89%が「歯科医に相談したことがある」(最低一年に一度の63%も含む)と回答しています。また、75%は眼科医にかかったことがあり、74%の女性対象者が産婦人科にかかったことがあると回答しています。理学・作業療法士(46%)、代替医療専門家(40%)、精神保健専門家(38%)、聴覚学者(37%)のサービスを受けたことがある対象者は半数以下にとどまっています。また、その他の医療専門家に相談したことがある人は65%です。それぞれの種類の医療提供者に相談に行く頻度は国によって大きく異なっています。

世界では、「自分は必要な医療ケアを受けられている」と言う意見に賛同したのは49%で、24%は賛同せず、また27%はどちらでもないと回答しています。「自身が必要な医療ケアを受けられていない」と回答した割合が高いのはロシア(44%)、ペルー(44%)、ポーランド(42%)、チリ(40%)です。一方その割合が低いのはドイツ(11%)、ベルギー(12%)、オーストラリア(12%)、イギリス(12%)です。また世界の調査対象者で「自身が必要な歯科ケアを受けられている」に賛同したのは、医療ケアと比較すると若干少ない46%で、賛同しなかったのは28%です。

世界的に見ると、調査対象者の56%が「自身の健康状態は良好」と回答していますが、17%がこの記述に「そう思わない」と回答し、27%がどちらでもないという結果です。調査対象国の中で「健康状態は良好」と回答した割合が高いのはインド(70%)、セルビア(68%)、サウジアラビア(67%)で、最も低いのが日本(32%)です。

世界では34%が「長年続いている症状や疾病、健康状態によって、自身の生活に何らかの制約が強いられている」と回答しています。「長年症状が続いている」と回答する割合が最も高い国はロシア(57%)で、それにハンガリー (43%)そしてスウェーデン (42%)が続いています。イタリアのその割合は最も低く(22%)、僅差で日本(23%)とメキシコ(23%)が続きます。

世界の公衆衛生上の懸念事項のトップは「癌」で、「肥満」が大差で第2位となっています。28カ国の調査対象者の52%が「癌は自国の3大健康問題に入る」と考えており、肥満に対しては33%、メンタルヘルス(27%)、ストレス(25%)、糖尿病(23%)が続いています。調査対象のすべての国で「癌は自国の3大健康問題に入る」と認識されています。日本のトップ3は「癌」「ストレス」「認知症」となっています。

世界で「遠隔医療を利用したことがある」と回答した人の割合はたったの10%でした。一般的に、遠隔医療の利用経験については、ヨーロッパよりもアジアや中東などの新興国やアメリカの方が大幅に高い傾向を示しています。遠隔医療を利用したことがあると回答した10%のうち、3分の2は「また利用する」、3分の1は「もう利用しない」と回答しています。世界では44%が利用したことはないが利用してみたいと回答しています。

世界では12%が「自身の健康管理のために現在コネクティッドヘルス用の機器やツールを利用している」と回答しています。「利用したことはあるが現在は利用していない」のは15%、「利用したことがない」のは68%です。残り6%は「わからない」と回答しました。利用の割合が高いのは、遠隔医療の利用と同じ国で、中国(28%)、インド(23%)、サウジアラビア(22%)、マレーシア(18%)、アメリカ(15%)です。

医療、疾病の症状、治療法などについて頼りになる主要情報源は医師や他の医療専門職者です。調査対象者の過半数(58%)が利用している情報源です。日本とサウジアラビアを除くどの国でも情報源としてトップに上がります。その他の情報源としては、オンライン検索エンジン(43%)、家族・友人(37%)、薬剤師(34%)、オンライン百科事典(22%)、オンライン医療情報ツール(22%)です。

この調査は、イプソスグローバルアドバイザー調査(Ipsos Global Advisor)をプラットフォームとし、イプソスオンラインパネルシステムを利用して2018年に実施しました。
設問A1-A5は4月20日~5月4日、27カ国(アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、中国、フランス、イギリス、ドイツ、ハンガリー、インド、イタリア、日本、マレーシア、メキシコ、ペルー、ポーランド、ロシア、サウジアラビア、セルビア、南アフリカ、韓国、スペイン、スウェーデン、トルコ、アメリカ)、20767名を対象、設問B1-B13は5月25日~6月8日、28カ国(上記各国にコロンビアを追加)、23,249名を対象として実施しました。
調査対象者はカナダとアメリカでは18~64歳、その他各国では16~64歳を対象としています。データは人口構成比に合わせて加重しています。
 

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