世界の半数は「社会主義的理想には大きな価値がある」
現在、世界の半数が「社会主義的理想には、社会発展にとって大きな価値がある」と考えています。しかし一方で、他の半数は「社会主義は、政治的な抑圧、監視社会、国家テロのシステムだ」という考えに賛同しています。世界的に見ると、10人中8人は「富裕層に対する課税額を増やし、貧困層を支えるべきだ」と考えており、10人中9人は「人権として、教育は無償で行われ、医療も無償で受けられるべきである」と考えています。また、10人中7人は「いかなる住民にも、絶対条件としてベーシックインカムを得る権利がある」と考えています。
イプソスは、世界28か国でグローバルアドバイザー(Ipsos Global Advisor)調査を行っています。その最新の調査で、「人々が21世紀の社会主義思想に対して抱いている認識」を調査しました。この調査は2018年4月に、65歳以下の成人に対して、オンライン調査で実施しました。これにより、社会主義思想に対する現在の認識に関して、懐疑的であるのか、賛同しているのか、などの観点で、国家間で大きな差があることが浮き彫りになりました。
- 世界の半数(50%)は、現在「社会主義思想は、社会発展にとって大きな価値があるという考え」に賛同。この考えに対する賛同傾向が最も高かったのは、中国(84%)で、次いでインド(72%)、マレーシア(68%)。一方、対照的な結果を示した国は、アメリカ(39%)、フランス(31%)、およびハンガリー(28%)。最も賛同率が低かったのは日本の回答者で、「社会主義思想には、社会発展にとって大きな価値がある」と考えている人は10人中2人(21%)のみ。そして、ドイツ(45%)においては、ほぼ2人に1人が「社会主義思想には、現在もなお価値がある」と考えている。
- 世界のほぼ半数(48%)が、社会主義は「政治的抑圧、監視社会、国家テロのシステムである」という考えに賛同。インド(66%)、アメリカ(61%)、韓国(60%)においては、この否定的な評価に賛同する人の割合は、およそ3分の2。反対にスウェーデン(34%)、中国(31%)、スペイン(30%)、およびロシア(29%)においては、この考えに賛同する人の割合はおよそ3分の1。日本では、社会主義を抑圧的と捉えた回答者の割合は(37%)。
- 世界では、10人中7人近く(66%)が「自由な市場競争があってこそ、人の力を最大限に引き出せる」という考えに賛同している。その割合が最も高かったのはインド(86%)で、次いでマレーシア(84%)、そしてペルーと南アフリカ(両国とも83%)。一方で、賛同する回答者の割合がほぼ半数にしか満たなかった国は、スウェーデン(52%)、ベルギー(51%)、ドイツ(49%)、およびフランス(43%)。
- 全体的に見ると、調査回答者の半数(52%)は「個人の自由の方が、社会的正義よりも重要である」と考えている。「個人の自由の方が、社会的正義よりも重要である」と答える割合が最も高かったのは、インド(72%)、アメリカ(66%)、南アフリカ(64%)。対して、この考えに賛同する割合が最も低かったのは、ドイツ(38%)、中国(37%)、およびフランス(36%)。
- 10人中7人近く(69%)が「才能のある人の方が あまりない人より多くを稼ぎ出す権利がある」という考えに賛同。この考えに賛同する割合が最も高かったのは、ルーマニア、ロシア(各82%)、韓国、中国(各81%)であるが、対して、その割合が約半数にとどまったのは、ベルギー(56%)、フランス(51%)、およびドイツ(47%)。
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28か国全体で「富裕層に対する課税額を増やし、貧困層を支えるべきだ」と考える人の割合は、10人中8人近く(78%)である。これに賛同する割合が最も高かったのは、スペイン(78%)、セルビア、中国(両国とも86%)、ロシア(85%)。対して最も低かったのは、アメリカ(67%)、ブラジル(66%)、そして南アフリカ(58%)。日本では、70%の人が「富裕層の課税額を増やし、貧困層を支えるべきだ」と考えている。
- 28か国全体の89%が「教育は無償で行われるべきだ」と考えている。その割合が最も高かったのはロシア(98%)、次いでセルビア、ルーマニア(各97%)。そして「教育は無償で行われるべきだ」という考えに賛同する割合が最も低かったのは日本の回答者(64%)である。アメリカと南アフリカおけるその割合は、高い国比べるとかなり低いものの、まだ十分に高い(各77%)。
- 28か国全体のほとんどの回答者が「医療を受ける権利は人権である」と考えている(87%)。 ロシア、セルビア、およびメキシコのその割合は96%で最も高い。対して、この考えに賛同する割合が最も低かったのは日本(47%)で、次いで韓国(74%)、アメリカ(72%)。
- 「いかなる住民にも、絶対条件としてベーシックインカム(*)を得る権利が与えられるべきか」という質問については、全回答者の69%が賛同。この考えに賛同する割合が高いのは、ロシア(95%)、トルコ(87%)、インド(83%)。賛同の割合が最も低かったのは、スウェーデン(56%)、アルジェリア(53%)、日本(38%)。
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「自国の政治システムの中で、労働者階級は十分な代表性がある」と考える人の割合は、全回答者のうち、3分の1(33%)のみ。これに賛同する割合が最も高かった国は、サウジアラビア(64%)、インド(63%)、および中国(60%)。対して最も低かったのは、フランス(19%)、メキシコ(19%)、セルビア(14%)。日本においては、「労働者階級は十分な代表性がある」に賛同する割合は、たったの33%。
- 「自国の人の考え方は、他国の人の考え方と違う」 と回答した人の割合は、世界では半数以上(62%)にのぼる。「自国の人の考え方は、他国の人の考え方と違う」 と考える人の割合が最も高かった国は、ロシア(81%)、ルーマニア(77%)、トルコ、南アフリカ、日本(いずれも74%)。この考えに賛同する割合が回答者の半数近くだった国は、チリ(51%)、イギリス(50%)、オーストラリア(47%)。
* 最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を定期的に支給するという政策。