バッテリーEVの普及はいよいよ転換期?
米国では、今後相次ぐ新型電気自動車の発売や公共充電スタンドの拡充、2021年に史上最高値を更新したガソリン価格の高騰、連邦・州政府からの購入補助金の増加など、バッテリーEV市場の拡大を後押しする材料とともに明るい見通しが示されています。
しかし、バッテリーEVを検討する消費者にとって、導入にはいまだ障壁があります。イプソスが発行した最新のPoint of Viewは、自動車マーケターが掴むべき好機を見極めるため、最近行われたモビリティ関連調査にスポットを当てます。
KEY FINDINGS
- 2022年にかけて米市場に投入される新しいバッテリーEVは、消費者が最も望んでいるセグメントになる
- 米連邦・州政府からの支援策は2021年のインフラ投資法案可決で高まりを見せ、優遇措置が強化されたことに加えて、全米で充電インフラの整備が進んでいる
- 2021年のガソリン価格は過去最高水準にあり、消費者の間では代替パワートレインへの要望が高まっている
- 航続距離と充電速度が消費者のスイートスポット
- 一方、消費者と販売・サービス事業者の双方において電気自動車の経験や知識が不足していることが、依然として普及のおもな障壁になっている
2021年11月、前回は新型コロナウイルスの感染拡大で中止になったロサンゼルスオートショーが復活しました。各自動車メーカーから米国市場に投入される新型車の発表があり、大いに盛り上がりました。プレスリリースや展示車両は、今後数年間に登場する以下のような新型EVが中心となっていました。
- フィスカー オーシャン
- ミュレン ファイブ
- KIA EV9
- ヒョンデ コンセプト SEVEN
- スバル ソルテラ
- ビンファスト e35、e36
- 日産 アリア
- トヨタ bZ4X
- フォード F150 ライトニング
どのモデルも、ユニークなスタイリングとベネフィット、魅力的な航続距離、充電スピードを提供していますが、最も興味をそそるのは、こうした未来の自動車がいずれも米国の消費者が望むSUVやクロスオーバー、さらにはフォード F150 ライトニングのようなフルサイズトラックといった大型サイズであることです。
新型バッテリーEVは米国市場に絶好のタイミングで登場していると言えます。新しいインフラ投資法案によって、政府による電気自動車へのサポートが強化され、購入するための補助金がより多く支給されることになりました。公共の充電スタンドが拡充されれば、消費者はより便利に国内を長距離移動できるようになります。
さらに、ガソリン価格は史上最高値を更新中です。消費者は、自分のニーズを満たし、かつ運用コストが高すぎない車を求めています。残念ながらそれは、現在のガソリン価格では「ガソリンのみ」を動力源とするほとんどの自動車で叶いません。
ガソリン価格の高騰は大きな問題 2020年半ばからほぼ2倍に上昇している

バッテリーEVへの関心は非常に高く、2018年から3倍に増加
イプソスが実施したモビリティ ナビゲーター調査によると、2018年以降、バッテリーEVへの関心は3倍に高まり、今や米国の消費者の3分の1以上がバッテリーEVを検討するようになっています。ここ数年モニターしてきた中で最も高い水準であり、より広範な普及に向けて期待の持てるトレンドと言えます。
関心は高まっているものの、米国の自動車保有者の多くは電気自動車に精通しておらず、2021年に「かなりのことを知っている」のは4人に1人に過ぎません。今後、新型車の発売が控えているため、この状況は改善されていくと思われます。また、燃料価格の上昇にともないガソリン車のランニングコストが非常に高くなっていることは、消費者がコスト削減の代替手段を求める動機にもなっています。2012年にガソリン価格が大幅に上昇した際、トヨタ プリウス ハイブリッドの販売台数は約50%も増加し、燃料費高騰による消費者のクルマ選びの変化を示すものとなりました。

航続距離に対する不安は根強い バッテリーEV全般について消費者を啓発する必要あり
様々な電動化モデルが市場に投入され新たな関心が高まる一方で、電動化を検討する消費者からはお馴染みの懸念が寄せられています。
バッテリーEVを検討する際の障壁としては、バッテリー寿命、航続距離、充電時間、価格が上位に挙げられています。ここ数年、米国での電気自動車の販売台数が全体の2〜3%程度にとどまっている根本は、消費者の知識不足にあるのです。自動車保有者はバッテリーがどのくらい長持ちするのか実際はちゃんとわかっていません。250マイルや300マイルの航続距離があればニーズは満たされるものでしょうか?
さらに、ドライバーは充電場所や方法に馴染んでいないと、自宅で毎日充電するか毎週でいいのか、はたまた公共の充電スタンドに立ち寄る必要のありやなしやをいちいち考えて決めなければなりません。
ベビーブーマーとジェネレーションXの消費者マインドは長年に渡りクルマと運転の影響を受けており、ミレニアル世代やジェネレーションZに比べると、新しい電動化技術に対しての行動変容が難しくなります。若い世代は、ガソリン1タンクで450マイル走れることや、必要なときにはガソリンスタンドがそこかしこにあるとわかっている、といった学習行動が身に付いているわけではありません。実のところほとんどの自動車保有者は、ガソリンスタンドが利用できるかどうかなどと考えておらず、アメリカのどこに行ってもガソリンスタンドは見つかるものだと信じ切っています。
米国の自動車保有者の多くは、運転習慣にもよりますが、月に3〜4回程度はガソリンスタンドに立ち寄ると言われています。電気自動車になると、スマートフォンの充電と同じように自宅で毎晩クルマのプラグを差し込むという行動へと切り替える必要があります。

バッテリーEVをよく知っている消費者は2.5倍以上の興味を示す
バッテリーEV保有者の多くは毎晩自宅で充電します。帰宅後にプラグを差し込み、夜のうちに追加の航続距離を得ているわけです。長距離ドライブでは公共の充電スタンドで満充電にしたり航続距離を伸ばしたりすることもありますが、ほとんどの場合、充電は自宅で行われます。充電スタンドでの航続距離延長のための充電は10分~30分程度の短時間で済みます。これは、一般的なガソリンスタンドの利用時間とさほど変わらないのですが、ほとんどの消費者はこのことを知りません。最悪の事態を想定し、出先で長時間充電しなければならないと考えているのです。そんなことはありません。
また、自宅設備での充電はガソリンの給油よりも便利で安く、バッテリーEVの総所有コストはガソリン車よりもはるかに優れています。
バッテリーEVの基本を知ることで、より多くの消費者が興味を持つようになります。バッテリーEVは所有した場合の費用対効果が高く、よりクリーンな走行が可能で、瞬時にトルクと加速が得られるため運転する楽しみがあります。まだ乗ったことのない方は、いま市場に出ている複数の新車の試乗予約をしてください。きっと感動するはずです!
バッテリーEVは、ようやく市場で重要なスイートスポットになりました。2022年には次のようなワクワクすることが待っています:
- バッテリーEV市場での選択肢の多様化
- 200マイルから400マイルまで、あらゆるニーズに対応する航続距離の選択肢
- 20分以内に最大80%の充電が可能な公共急速充電スタンドの開発
- 全米でガソリン価格が1ガロン4ドル近くになるなか、電気代は手頃
- 政府による魅力的な優遇措置
- 公共充電スタンド、HOVレーン、EV専用駐車スペース増設などのインフラ投資
これからはバッテリーEVが主流に 今こそ革命に参加してバッテリーEVがもたらす大きなベネフィットを生かす時
イプソスは引き続き、電動化の受容性や自動車・モビリティ業界に影響を与えるトレンドを注視しています。自主調査2022モビリティ・ナビゲーターは6年目を迎え、鍵となるモビリティの発展と活動をモニターする予定です。このシンジケート調査の結果をお伝えするのを楽しみにしています。