価格か、サービスの良さか・・・どちらを取りますか?

2013. 9 No.22  グローバル・マーケティング・リサーチ会社のイプソスが、ベリントシステムズ(Verint Systems, 米国)の依頼で実施した消費者意識調査の結果を発表しました。この調査は、アジアパシフィック地域の6か国(中国、香港、インド、日本、オーストラリア、インドネシア)、5,816人の消費者に金融、通信、公共サービス(電気・ガス・水道)、小売、ホテル/交通の5分野における顧客サービスに関する意識を調査したものです。

主な調査結果

  • アジアパシフィック地域では、価格よりもサービス重視。特に中国(58%)とインド(49%)でより良いサービスを受けるために対価を支払う人が多い
  • サービスは悪くて当たり前―調査対象者の70%以上が悪いサービスを受けた経験があるにも関わらず、60%以上がサービスに満足していると回答した。日本は例外で、悪いサービスを経験したのは27%だが、サービスに満足しているのはわずか22%。日本のサービスの充実と日本人の顧客サービスへの期待の高さがうかがえる
  • サービスの経験はオンライン上の書き込みや口コミで拡散する。55%が自分の経験について家族や友人に話し、53%はソーシャルメディアなどに書き込むと回答

調査概要

調査実施機関
イプソス
実施時期
2013年4月28日~5月16日
調査手法
イプソス・オンラインパネルシステムにより世界24カ国で毎月実施するGlobal @dviser調査
対象国(6カ国)とサンプル数
オーストラリア(1045人)/中国(1139人)/香港(523人)/インド(1029人)/インドネシア(1049人)/日本(1034人)
対象者
16歳以上の男女。左の5分野でサービスを受けた経験のある個人。 金融(銀行、クレジットカード、保険)/通信(電話、テレビ、インターネット)/公共サービス(電気、ガス、水道)/小売(実際の店舗、オンラインショップ)/旅行(ホテル、航空、電車、バス)

 

 

アジアパシフィックの消費者は価格よりもサービス重視

 

 

今回の調査を実施した全6か国で、価格よりもサービスが重要と考えられていることが分かった。対象国の中には一般的に「価格重視の消費者が多い」と捉えられている新興国も含まれているが、対象者の45%は「良いサービスに対しては相応の対価を支払う」という意見に同意した。特に中国(58%)とインド(49%)ではその割合が高く、日本(34%)は6か国中最も低かった。「価格を重視する」に同意したのは全体のわずか23%であった。

 

 

サービスは悪くて当たり前?・・・でも日本は例外

 

 

本調査で、悪いサービスを受けた経験があると回答した消費者は、調査対象国全体で高い割合を示した(図1)。しかし、このような経験があるにも関わらず、各分野で消費者の満足度は低くはない(図2)。
各分野の調査結果を見ると、「悪いサービスを受けた経験がある」と回答した対象者の割合は、金融サービス(51%)、公共サービス(51%)、ホテル/交通(51%)、小売(59%)、通信(64%) であった。一方、顧客サービスに対しては、金融サービス(61%)、公共サービス(51%)、ホテル/交通(64%)、小売(64%)、通信(54%)が満足していると回答した。悪い経験をした割合が59%の小売分野では64%がサービスに「満足」と回答、「不満」と回答した8%を大きく上回っている。
この結果から、アジアパシフィックの消費者は顧客サービスに対する期待が非常に低いことがうかがえる。顧客サービスを充実させ、顧客経験を向上させることができる企業は、競合よりも優位に立ち、この市場で成功する可能性が高いと言える。
日本は、いずれの業界でも「悪いサービスの経験」、「満足度」の両方でほかの国々よりも低い数字である。たとえば、公共サービスを例に挙げてみると、全対象国では51%が悪いサービスを受けた経験があると回答しているが、日本ではわずか11%である。しかし、満足度では、全対象国で51%がサービスに満足していると回答したのに対し、日本ではわずか29%。日本ではサービスに対する期待値が他の国々よりも高いことが明らかである。逆に、消費者の評価の厳しさがサービス向上につながっているようだ。

サービスに関する経験はオンラインで拡散

消費者が経験した顧客サービスは、様々な伝達経路で拡散することが本調査で検証された。電話、 eメール、直接会うなど、従来のコミュニケーション方法で主に家族や友人に伝達し、フェイスブック、ツイッター、ブログなどのソーシャルチャネルの利用でより多くの人々に伝達する。調査結果ではこれがより明確になっている。53%の対象者は企業のウェブサイトなどにコメントを残すと回答、42%はフェイスブックなどのソーシャルネットワークサイト上で、27%はツイッターなどのマイクロ・ブログ上でつぶやくと回答し、24%はブログで公開すると回答した。
また、消費者は悪い経験よりも良い経験のほうを共有したいと考えているようだ。良い経験を公開したいと回答した対象者は41%であったのに対し、悪い経験を公開したいと回答したのは32%に留まった。このことから、より良い顧客サービスを提供できる企業は、市場でのブランド認知を良い方向に伸ばすための強い味方を得ることができる、ということがわかる。すなわち顧客自身がソーシャルチャネルを利用して評判を高めてくれるということである。

 

 

サービスの評価が悪くなる理由とは?

 

 

今回の調査では、サービスの評価が悪くなる主な原因が二つ挙げられた。「問題解決までの時間がかかる」(21%)と「スタッフが知識不足のため対応できない」(20%)である。
また、2回以上の電話や訪問が必要になると、消費者の不満が増加することがわかった。問題解決のためにコールバックや再訪問の必要が生じた場合と、たとえ時間がかかっても1回目の電話や訪問で問題を解決した場合を比較すると、前者のほうが満足度が低い。小売業界ではこの傾向が顕著で、前者と後者では満足度に10%の開きがあった。
このほかには、サービスの評価が悪くなる原因として以下のような項目が挙がった。 「サービスを受けるまでの待ち時間が長い」/「サービスのマナーが悪い、不親切」/「要領が悪い」

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