宗教における世界的な２つの分裂：地理的なものと世代的なもの

イプソスのグローバルアドバイザーの新たな調査では、宗教への入信と信仰の普及、信念、宗教が果たす役割、個人のアイデンティティとモラルを定義する度合いについて、国や世代によって大きな違いがあることが明らかになりました。多くの地理的な違いは、宗教色の強い南半球と世俗的な北半球の対立という、似たようなパターンになる傾向があります。しかし、調査対象となった26カ国の多くで世代間の大きな変化が生じており、若年層は高齢者よりもキリスト教徒、特にカトリック教徒であることを認識する傾向が低く、イスラム教徒やその他の信仰を持つことを望む傾向が強くなっていることがわかります。

宗教に関する世代間の変化

イプソスが調査した26カ国において、「信仰を持っている」と回答した人の割合は、インドとタイではほぼ100％、日本、韓国、スウェーデン、オランダ、英国では半分以下となっています。今回の調査では、信仰する宗教について、世代間の大きな変化が浮き彫りになっています。 

調査対象となった最もカトリック色が強い16カ国において、Z世代（1997年以降に生まれた人）がカトリック教徒であると認識する割合は、ベビーブーマー（1964年以前に生まれた人）がそう認識する割合よりも低く、平均16ポイントもの差があることがわかりました。ベルギー、イタリア、ペルー、ポーランド、フランス、チリでは、その差は20ポイントを超えています。

同様のパターンは、調査対象者の15％以上がプロテスタント、福音派、あるいは単なる「クリスチャン」であると認識している12カ国中11カ国でも見受けられます： Z世代は、ベビーブーマー世代に比べ、平均11ポイントも低くなっており、スウェーデンとオーストラリアではその差は20ポイントを超えています。

逆に、少なくとも全体の2％の成人がムスリムであると回答した14カ国のすべてにおいて、Z世代はベビーブーマー世代よりもその傾向が強く、平均7ポイントもの差がありました。英国、スウェーデン、ベルギーでは、10ポイント以上の差があります。

宗教を持たない、つまり無神論者、不可知論者、あるいは単なる "スピリチュアル "であると自認することについては、世代間で差があります。3つの国では、Z世代がベビーブーマー世代よりも無宗教と答える割合が10ポイント以上低く（スウェーデン、ドイツは15ポイント以上）、逆に9つの国では（韓国、イタリアは20ポイント以上）逆のパターンを示しています。

神やより高い力を信じる心

平均で40％が聖典に書かれているとおりの神を信じると回答し、20％は聖典には書かれていないがより高いレベルの霊を信じ、さらに21％が神もより高いレベルの霊も信じないと回答し、19％がわからない、または言及を控えるという結果になりました。ブラジル、南アフリカ、トルコ、インドなど11カ国では、聖典に書かれているとおりの神を信じる人が過半数を占める一方、日本、韓国、ヨーロッパの10カ国中7カ国では、神やより高い力、霊を信じないと答えた人が過半数を占めています。

14 カ国のうち 1 カ国を除き、成人の 3 分の 1 以上が聖典に記された神を信仰している国では、Z 世代はブーマー世代よりもその信仰を持つ割合が低く、平均 10 ポイント（メキシコでは 20 ポイント）もの差がついています。しかし宗教色の薄い国では、この傾向は逆転しています。聖典に書かれているような神を信じる成人が3人に1人以下である12カ国において、Z世代が信じる割合はブーマー世代よりも平均で5ポイントも高くなっています。最も差が大きいのはスウェーデンの28ポイントです。

その他の関連する信念

天国への信仰は平均52％、超自然的な霊（天使、悪魔、妖精、幽霊など）への信仰は平均49％となっています。地獄と悪魔への信仰は、天国への信仰より平均10ポイントほど低くなっています。

天国、霊、地獄、悪魔のそれぞれの信者の割合は、ベルギーで最も低く、トルコ、ブラジル、南アフリカで50～60ポイントほど高くなっています。

若い人ほど、天国、地獄、悪魔、超自然的な霊魂を信じる傾向があり、特にすべての成人の信仰が低い国々では、その傾向が顕著です。これらの国の多く、特に北ヨーロッパと西ヨーロッパでは、これらの信仰の普及率はベビーブーマーよりもZ世代で20ポイント以上高くなっています。

宗教的慣習

当然のことながら、定期的に礼拝に参加したり、自宅で祈ったりすることは、神や高次の霊を信じる人が多い国で最も一般的です。

インドでは10人に7人以上、南アフリカ、タイ、ブラジル、トルコでは約半数が月に1回以上礼拝所（教会、寺院、モスクなど）に通うと答えているのに対し、日本では20人に1人、ベルギーとハンガリーでは約10人に1人、フランス、スウェーデン、オランダ、ドイツ、英国、スペイン、カナダでは5人に1人にとどまっています。

平均すると、少なくとも月に1回礼拝所の外で祈る人の割合は、少なくとも月に1回礼拝所に通う人の割合より15ポイント高くなっています。コロンビア、チリ、トルコ、ブラジル、ペルー、南アフリカ、米国では25ポイント以上高くなっています。

宗教的慣習が高い国では、高齢者が若者よりも従事する傾向があり、宗教的慣習が低い国では、若者の方が従事率が高い傾向があります。

全成人の3分の1以上が月に1回以上礼拝所の外で祈る15カ国のうち、1カ国を除くすべての国で、Z世代はベビーブーマーより平均15ポイント低くなっています（ブラジルでは23ポイント、コロンビアでは27ポイント、チリでは40ポイント）。一方、成人の3分の1以下が月に1回以上礼拝所以外の場所で祈る11カ国では、Z世代が平均7ポイントも多くなっています（スウェーデンでは23ポイント、ドイツで28ポイントなど）。

同様に、全成人の4分の1以上が月に1回以上礼拝に出席している11カ国では、Z世代はベビーブーマー世代よりも平均2ポイント低い参加率となっています（コロンビアでは15ポイントも）。しかし、全体の参加率が低い15カ国では、平均11ポイントZ世代が参加する割合が高くなっています。（ドイツで28ポイント、スウェーデンで34ポイントなど）。

宗教的寛容性

異なる宗教観を持つ人たちとの付き合い方に違和感がないと答えた成人の割合は、26カ国平均で76％でした。その割合は、南アフリカ、シンガポール、オーストラリア、カナダ、英国、米国では10人に9人程度から、韓国では半数程度まで、国によりさまざまです。

今回の結果を2017年に実施したイプソスのグローバルアドバイザー調査の結果と比較すると、スウェーデン、ブラジル、ベルギー、メキシコ、ポーランドで宗教的寛容度が大きく上昇し、韓国とドイツでは低下していることがわかります。

平均して半数近く（47％）が、宗教は世界にとって良いことよりも悪いことの方が多いと答えています。インドに次いで、この見解は西ヨーロッパと日本で最も多く、ラテンアメリカ、南アフリカ、トルコ、東南アジアでは最も少なくなっています。西ヨーロッパの大部分（イタリアを除く）では、この考え方は高齢層よりも若年層でより少なくなっています。

2017年の調査と比較して宗教に対する否定的な見方が大きく増加したのは日本とスウェーデンだけです。一方、アルゼンチン、ハンガリー、ドイツ、オーストラリア、スペイン、ポーランド、ペルーでは、大きく低下しています。

宗教とアイデンティティ

平均して42％が、自らの宗教によって人として定義されると回答しています。4人に3人以上が同意する3カ国はすべてキリスト教以外の宗教が主流であり、3人に1人以下が同意する6カ国はすべてヨーロッパであることがわかりました。

2017年以降、日本、スウェーデン、メキシコ、フランス、オーストラリア、スペイン、ブラジルで大きく賛成が増え、ハンガリー、ポーランド、米国で大きく減少しています。

ヨーロッパのいくつかの国では、若年層は高齢者よりも宗教をアイデンティティの一部として捉える傾向が非常に強くなっています。スウェーデン、英国、ドイツ、フランスでは15ポイント以上の差があり、若者は自分がムスリムであると答える傾向も高くなっています。しかし、イタリア、ポーランド、チリ、コロンビア、シンガポール、韓国など、他の国では逆のパターンを示しています。

宗教とモラル

平均して、54％が「宗教的慣習は市民のモラルにとって重要な要素である」、37％が「信仰心のある人はより良い市民である」、20％が「無宗教だとわかると人に対する尊敬の念がなくなる」と回答しています。

3つのケースとも、宗教性の高い国と低い国では、その割合に50〜60ポイントもの差があります。

また、イスラム教徒であることを認識する若者が高齢者よりも圧倒的に多い国では、若者が宗教とモラルを関連付ける傾向が強いことがわかります。

神や高次の力の役割

神や高次の力、霊を信じる人の約4人に3人が、危機を乗り越えるのに役立ち、人生に意味を与え、普通より幸福になれると答えています。信者の割合が高い国ほど、信者が自分の信仰から利益を得ていると感じる傾向があります。

ほとんどの国で、調査対象者のうち、宗教的な信仰を持つ人の方が幸せだと答えた人の割合は、定期的に礼拝所に通っていると答えた人の割合と一致する傾向にあります。

本調査について

これは、2023年1月20日～2月3日に、インドの18歳以上、米国、カナダ、南アフリカ、トルコの18～74歳、タイの20～74歳、シンガポールの21～74歳、その他の16～74歳の成人合計19,731人を対象に、イプソスのグローバルアドバイザー オンライン調査プラットフォーム（インドではIndiaBusプラットフォーム）で実施した調査の結果です。