世界が懸念していること – 2023 年 2 月
イプソスが毎月実施している「世界が懸念していること調査(What Worries the World)」では、10年分のデータをもとに、一般の市民が現在最も重要な社会問題や政治問題は何であると考えているのかを調査し、最新のスコアとその背景を探ります。今ウェーブは、2023年1月20日~2023年2月23日に実施されました。
主な調査結果:
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インフレは11カ月連続で世界の懸念事項のトップであり、43%が自国
おける最大の懸念事項と回答。 - アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、カナダ、コロンビア、フランス、ドイツ、英国、ハンガリー、インド、ポーランド、シンガポール、韓国、米国、トルコの15カ国が、インフレを最大の懸念事項として挙げている。
- 調査対象国全体では、インフレに次いで、貧困/社会的不平等(32%)、犯罪と暴力(27%)、失業(27%)、金融/政治腐敗(25%)が続く。これらが世界の懸念事項のトップ5となっている。
- 新型コロナウイルスに対する懸念は、2020年4月以来過去最低水準(9%)にまで低下した。
- 10人に4人(38%)が、自国は正しい方向に向かっていると考えており、ブラジルは2月に過去最高スコアを記録した(56%)。
自国の方向性は?正しい方向 vs 間違った方向
29カ国でほぼ3分の2(62%)が、自国は間違った方向に向かっていると回答しています。2月のスコアは1月に比べて2ポイント上昇し、38%が正しい方向に進んでいると回答しています。
ブラジルは今月最もスコアが上昇し、8ポイント上昇の56%となりました。これは、ブラジルでのこのスコアにおける最高値であり、自国が正しい方向に向かっていると考える人が、間違った方向に向かっていると考える人より多くなったのは初めてです。
イプソスブラジルのカントリーマネージャーであるMarcos Calliariは、新政権が誕生するたびに国に対する好感度が上昇する一方で、Lula大統領の2期目が始まったことでより楽観的になっていると話しています。
「人々はこの瞬間を、歴史上極めて困難な状況の幕引きととらえている。新型コロナウイルスのパンデミックは完全に根絶されたわけではないが、その影響はこの3年間よりもはるかに小さくなっている。例えば今週ブラジルでは、パンデミック発生以来初めて、24時間、新型コロナウイルスによる死者が1人も出なかった。
パンデミックの終焉という感覚は、新政権と並んで、この国が良くなっているという認識を強めている。また、前政権が、一部の重要な支持層の間でさえもその運営全般について厳しい批判を受けたという事実も考慮する必要があり、ブラジルは依然として極めて二極化し、分裂したままである。最後になるが、一部の国民の間では、Lula大統領が最高司令官であった前回、ブラジルは大きな経済成長を遂げ、社会的不平等の指標を大幅に削減したという記憶が確実に残っている。このような不平等が依然としてブラジル国民の最大の懸念事項であることは、「世界が懸念していること調査 (What Worries the World) 」 のなかにも見て取ることができる。」
今月から新たに加わったシンガポールは、自国が正しい方向に向かっていると考える人が最も多く(79%)、ペルーは最も少ない(10%)結果となりました。
インフレ
世界の10人に4人以上(43%)が、インフレは自国に影響を及ぼす最大の懸念事項の1つであると回答しています。過去11ヶ月間、18の懸念事項の中でトップです。昨年の今頃は、世界全体で第6位であり、23%が最大の懸念事項であると回答していました。
懸念が最も高いのはアルゼンチンで、70%が懸念事項として選択しました。これは、2013年にインフレを項目に追加して以来、2番目に高い水準です。最も高かったのは2022年8月で、アルゼンチンの71%がインフレを最大の懸念事項の一つとして選択しています。
2023年2月は、コロンビア(51%)、フランス(50%)、オーストラリア(50%)で、インフレに対する懸念が初めて2人に1人を上回る割合となりました。
ハンガリー(58%)、カナダ(55%)、米国(52%)、韓国(41%)、イタリア(36%)は、物価上昇に対する懸念がこれまでで最高を記録しています。
今月は15カ国が、生活費危機を自国の最大の懸念事項であるとしています:アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、カナダ、コロンビア、フランス、ドイツ、英国、ハンガリー、インド、ポーランド、シンガポール、韓国、米国、そしてトルコです。
失業
失業に対する懸念は第4位で、27%が自国の懸念事項であると回答しています。
南アフリカは69%が懸念事項として選択し、最も高いスコアを記録している国で、最も懸念している国であることに変わりはありません。2021年4月以降、雇用に関する懸念は南アフリカがトップで、その間、懸念が60%を下回ることはありませんでした。
イプソス南アフリカ共和国のカントリーマネージャーであるKelly Arnoldは、雇用の不足をめぐる長期的な問題についてこう説明します。「南アフリカにおける失業の原因は数十年前にさかのぼる。これらの問題は新型コロナウイルスの大流行によってさらに悪化し、3~4百万人の南アフリカ人が職を失った。これらの仕事はまだ復活していない。
生活費危機の今、人々は仕事に戻ることを切望している。最新の調査によると南アフリカの70%が、生活費は公式なインフレ率よりも速く上昇していると回答している。仕事に就いている人の多くは、賃金上昇率がインフレを下回っていると感じている。
失業問題が来年の選挙戦に大きな役割を果たすかどうかは、まだわからない。失業や教育の問題は制度的な問題なので、有権者の判断を左右するものではないが、影響を与えることは間違いないだろう。そして現在、人々の最大の関心事は電力問題である。これは、多くの議論と論争を巻き起こしている注目の話題である。」
前回、南アフリカよりも雇用を懸念していた国はイタリアでした。現在、イタリアは4位に位置し、43%が懸念事項として選択し、先月の41%から2ポイント上昇しました。
スペインは、雇用に対する懸念が過去最低の数値を記録しました。今月のスコアは37%で、先月の2位から29カ国中8位となりました。
気候変動
6 人に 1 人 (15%) が、気候変動は自国に影響を与える最大の問題の 1 つだと述べており、18の項目のうち、8位にとどまっています。
先月はオーストラリアがトップでしたが、今月は4ポイント 下がり、1 位から 2 位となり、ドイツがトップとなりました。ドイツ人の28%が気候変動を懸念しており、インフレ(40%)、不平等(35%)に次ぐ3番目の懸念事項となっています。
イタリアは1月と比較して4ポイント増加し、気候変動を最も懸念する上位5カ国に入りました。
新たに登場したシンガポールは、トップ5からわずかに外れて6位につけています。
コロナウイルス (Covid-19)
先月、新型コロナウイルスに対する懸念がわずかに上昇した後、パンデミックに対する懸念は過去最低水準に低下しました。
新型コロナウイルスを懸念しているのはわずか9%で、全体ではモラルの低下と国家間の軍事衝突に挟まれて12位となり、前月の10位から後退しています。
懸念は依然としてアジアで最も高くなっています。今回の調査では、アジア太平洋地域の8カ国すべてが、最も懸念を抱いている国の上位8カ国を占めています。
日本は、3人に1人弱(31%)が懸念事項として選択し、最も懸念されている国です。税金(36%)、不平等(34%)、インフレ(32%)に次いで、日本では4番目に大きな懸念事項となっています。
シンガポール
シンガポールのほぼ 5 人に 4 人(79%)が、自国は正しい方向へ向かっていると考えていることが明らかになりました。「世界が懸念していること調査(What Worries the World)」の最初の月では、シンガポールは、状況に最も満足している国です。グローバルの平均38%を大きく上回り、インドネシア(77%)、マレーシア(72%)など、同地域のほかの国も僅差で続いています。
シンガポールの懸念事項のトップはインフレで、63%が懸念事項と回答し、29カ国中3位にランクインしています。そのほかの上位5項目は、失業(36%)、医療(26%)、税金(24%)、気候変動(23%)となっています。
本調査について
イプソスの「世界が懸念していること What Worries the World調査」は、10年を超えるデータをもとに、世界29カ国の市民が現在最も重要な社会問題や政治問題は何であると考えているのかを調査し、最新のスコアとその背景を探ります。
2022 年 12 月 22 日~ 2023 年 1 月 6 日に、カナダ、イスラエル、マレーシア、南アフリカ、トルコ、米国の18~74歳、インドネシア、タイの20~74歳、その他21カ国では16~74歳の成人を対象に、20,570人のオンライン調査を実施しました。