ESGとは?ESG経営に必要な3つの視点と成功している海外企業の取り組み事例を紹介

ESGとは何かを解説し、ESG経営に必要な3つの視点について詳細に紹介。また、成功している海外企業の具体的な取り組み事例を通じて、企業が持続可能な成長を目指すためのヒントを提供します。

ESGとは

ESGは、環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の略で、企業や投資家が持続可能な経営や投資を行う際の指標となる要素です。これらの要素を考慮することにより、企業は長期的なリスクを軽減し、持続可能な成長を達成することができます。

 

ESG経営とは

ESG経営は、企業がESGの各要素を経営戦略に組み込むことで、持続可能な成長を目指す経営手法です。具体的には、以下のような取り組みが含まれます。

環境(Environmental)

省エネルギーや再生可能エネルギーの利用、廃棄物削減、環境に配慮した製品やサービスの開発。

社会(Social)

労働環境の改善、多様性の推進、地域社会への貢献、サプライチェーンにおける人権の尊重。

ガバナンス(Governance)

透明性のある経営、企業倫理の遵守、取締役会の多様性。ESG経営を行うことで、企業は長期的なリスクを軽減し、投資家からの信頼を得ることができます。さらに、持続可能な社会の実現に貢献することができるため、企業のブランド価値も向上します。

ESGは、“GOOD SUSTAINABLE ENTERPRISES”=持続可能な優良企業になるための経営手法ととらえると分かりやすいかもしれません。


ESGとSDGsの違い

SDGs(持続可能な開発目標)は国連が2015年に採択した17の目標で、2030年までに達成すべき具体的な持続可能性の課題を示しています。SDGsは企業だけでなく、政府や市民社会も対象としており、広範なグローバルな枠組みを提供しています。

 

ESGとCSRの違い

CSR(企業の社会的責任)は、企業が社会や環境への配慮を行う義務や責任を指します。CSRは企業の自発的な取り組みであり、ESGは投資家や利害関係者が企業を評価するための基準として使用されることが多いという点で異なります。

 

企業におけるESG取り組みの重要性とその背景

近年、ESGへの取り組みが、企業にとって避けられない課題となっています。その背景には以下のような要因があります。

  • 気候変動や社会的格差などのグローバルな課題の深刻化
  • 投資家や消費者のESGへの関心の高まり  
  • 各国政府による規制強化
  • サステナビリティを重視する企業の競争力向上

実際、ブラックロックのCEOラリー・フィンク氏は「気候変動ほど優先度の高い課題はない」と述べています。
また、イプソスのアースデー調査によると、世界の68%の人々は、「政府が今すぐに気候変動と闘う行動を取らなければ、国民を裏切ることになるだろう」と答えています。さらに68%が、「企業が今行動を起こさなければ、従業員と顧客に失望を与えることになるだろう」に同意しています。

人々は気候変動への取り組みは政府、企業、個人の間で共通の責任があると考えています。そのため、ESGは企業の長期的な存続にとって不可欠な要素となっており、CSRのような付加的な活動ではなく、バリューチェーン全体を変革していくことが求められています。

 

ESGの取り組みに必須:3つの柱を総合的に推進することの重要性

ESGに取り組む上で重要なのは、環境、社会、ガバナンスの3つの側面を個別に捉えるのではなく、総合的に推進していくことです。イプソスの調査によると、ESGの3要素の重要性は以下の通り評価されています。

ESGの重要性

 

  • 環境保護: 38%
  • 社会の改善: 36% 
  • 適切なガバナンス実践: 26%
     

このように3要素はそれぞれ重要と認識されており、どれか一つだけに偏ることなく、バランス良く取り組むことが求められます。

 

戦略的なESGの取り組みを行うための3つの視点

効果的なESG戦略を立案するために、イプソスは以下の3つの視点から考えることを提案しています。

持続可能な戦略を策定するための3つのレンズ

 

  1. 私:従業員や顧客個人にとってのメリット
  2. 私のコミュニティ: 家族や地域社会へのインパクト  
  3. 社会全体 : より広い社会や地球環境への貢献

これら3つの視点を意識しながら、自社の特性に合わせてESGの重点領域を選定し、戦略を立案することが重要です。最善の戦略的ソリューションは、個人に価値を生み出し、組織内の同僚にインスピレーションを与え、長期的な繁栄をもたらします。

 

成功している海外企業のESG取り組み事例

ここでは、3つの視点をうまく取り入れたESGの成功事例をいくつか紹介します。

 

 Power Africaイニシアチブ(アメリカ)

サハラ以南のアフリカでは3人に2人が電力にアクセスできないことから、米国国際開発庁(USAID)は、6,000万世帯と企業に電力を供給するとともに、そのエネルギーがクリーンかつ再生可能であることを確保することを目的として、Power Africaイニシアチブを立ち上げました。この目標を達成するには、民間部門、世界中の政府、金融機関、法律専門家、専門的な技術力を結びつける強固なパートナーシップが必要です。

 

トリオドス銀行(オランダ):金融

トリオドス銀行は1980年の創業以来、持続可能性に重点を置いた「一貫したブランド」を構築し、「すべての人々の生活の質と人間の尊厳を守り促進する社会を創造することで、お金を前向きな変化のために働かせる」ことを使命としています。同行は、企業と個人の両方が自分のお金を他者と地球の利益のために活用できるように支援する、世界で最も持続可能な銀行の一つとして自らを位置づけています。

 

Tony's Chocolonely (オランダ):食品メーカー

Tony‘s Chocolonely は、環境、社会、ガバナンスのあらゆる要素を包含する理念を持つオランダの菓子会社です。彼らの使命は、サプライチェーンの公平性を確保し、利益がより均等に分配されるようにすることです。これは最終的に、カカオ農家が貧困から脱出でき、製品の生産における児童労働がなくなることを意味します。率先して模範を示しながら、彼らのミッションは、チョコレートにおいて100%奴隷労働を排除することを標準にすることです。

 

Who gives a crap(アメリカ):日用品メーカー

このブランドは、カテゴリーの革新を推進し、100%再生紙または100%竹で作られた、どちらも100%プラスチックフリーのトイレットペーパーを提供しています。同社は、自社の紙は「お尻にやさしく、世界にとっても素晴らしい」と述べ、利益の半分は世界中のコミュニティのトイレ建設に寄付されています。この変革により、顧客の視点から見ると、多くの主要なブランドは取り残されており、真に持続可能な選択肢を提供していません。

 

Win-Win Business(欧州):欧州委員会

2022年、EUは携帯電話やその他の電子機器用の共通充電器に関する新しい法律を採択し、2024年から、EU域内で販売されるすべての機器にUSB-Type-Cの搭載が義務付けられるようになりました。この取り組みによって、年間約1,000トンの電子機器廃棄物が削減され、消費者は不要な充電器を購入しないことで、年間2億5,000万ユーロを節約できるというWin- Winな関係構築を実現しています。イプソスは根本的な問題を分析し、このイニシアチブが経済、環境、社会に与える影響を推定するための調査を実施しるなど、このイニシアティブ実現に貢献しています。

 

イプソスのESGへの取り組み
 

環境:2050年にネットゼロ実現に向けた取り組み

イプソスは2050年までにバリューチェーン全体で温室効果ガスのネットゼロ排出量を達成することを約束しています。ネットゼロを達成するには、3つのスコープすべてで排出量を基準年と比較して少なくとも90%削減し、残りの排出量を相殺する必要があります。イプソスの気候変動に対する取り組みはこちらからご確認ください。

 

社会:世界90の市場で地域社会に貢献

世界各国で社会に向けた活動に取り組んでいます。イプソス基金は、イプソスが運営する慈善活動の一環で、世界中の教育や健康、環境保護などの分野で活動するNPO団体への支援を行っています。具体的には、難病を患う子供たちへ教育支援、飢餓に苦しむ子供たちへの食事提供、水関連のプロジェクト支援などです。
 

 

イプソスはESG分野のパイオニア

イプソスは、2008年に国際的な調査会社として初めて国連グローバル・コンパクトに参加し、人権、労働、腐敗防止、環境保護に関する普遍的な10原則に従う事を表明しました。イプソスのデータ駆動型の洞察は、企業が消費者の期待や規制要件を理解し、ESG戦略に関する情報に基づいた意思決定を行うのを支援します。

イプソスはESG分野のパイオニア

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