地球温暖化とゴミ削減、環境問題に関する注目の話題
「太平洋ゴミベルト」の規模は、日本の国土の4倍以上と推測されており、 カリフォルニア州とハワイ州の真ん中あたりを浮遊しています。南アフリカでは干ばつが3年続き、浄水の蓄えが底をつく脅威にさらされています。中国の国民は、外出時にはマスク をして、首都の大気汚染に立ち向かっています。 世界中にあらゆる環境問題が存在しており、環境問題は、国家レベル、あるいは世界レベルの両方の見地から取り組むべき課題です。環境問題の原因は多種多様で、同等に多種多様である文化や人々に影響を与えています。
イプソス・グローバルアドバイザー(Ipsos Global Advisor)では、世界28か国で環境問題に対する世論を調査しました。ここ数年を見ると、国際的には「地球温暖化」が注目のトピックとなっています。世界の調査対象者が懸念する環境問題としては、「地球温暖化」と並び、2つの問題が首位に来ています。調査対象者に15の環境問題のリストから、最も懸念される問題を3つ選んでもらったところ、「地球温暖化」、「大気汚染」、「ゴミの廃棄処理」を選択した人は、それぞれ30%です。換言すれば、しかるべき環境上の懸念をリストアップしていくと、数が大変多くなってしまい、どの問題に最初に取り組むべきかという国際社会のコンセンサスを形成しにくい状況にあることがわかります。
とある一国が、世界的環境問題の中で特定の問題をいち早く解決することに、強い関心を持ってしまうことがあります。このような場面では、特に前述の非コンセンサス問題が深刻化します。例えば、世界各地の石油貿易を介して強大に成長した経済国、サウジアラビアを見ると、石油関連の3つの問題、未来のエネルギー資源(回答者の31%が懸念)、自然資源の枯渇(同25%)、大気汚染(同22%)が、最大の懸念となっています。これらは、限りある自然エネルギー資源を利用して発生したマイナスの副産物ですが、サウジアラビアを強国に押し上げたのは、紛れもなくこの自然エネルギーです。同国が指摘する「未来のエネルギー資源」、「自然資源の枯渇」、「大気汚染」の中で、世界が懸念する環境問題トップ3の中に含まれているのは「大気汚染」のみです。
世界が懸念する環境問題同率トップ3である「地球温暖化」、「大気汚染」、「ゴミの廃棄処理」の中で、「ゴミの廃棄処理」は28か国中18か国でトップ3リストに挙がっています。一方、「大気汚染」は、28か国中16カ国でトップ3に挙がっており、この問題は、急速に発展した経済国2国、中国(57%)とインド(42%)においても、懸念すべき環境問題のトップです。「地球温暖化」は、28か国中15か国でトップ3に挙がっています。これら15か国には、自国が懸念すべき環境問題の第1位が「地球温暖化」となっているカナダ(39%)、フランス(40%)、ドイツ(36%)、スペイン(45%)、およびアメリカ(37%)があります。
アメリカは、正式にパリ協定から離脱し、地球温暖化問題の背景要因そのものに寄与しようとしています。 これに対し、環境保全主義者らは、「21世紀において、地球気温の上昇を2℃未満に維持する取り組みは、どの国が先導するのか」という疑問を呈するようになりました。4月25日に、フランスのエマヌエル・マクロン大統領は、アメリカ議会で地球温暖化問題対策ついて演説を行い、その推進を呼びかけました。 ここから、国際舞台においては、フランスが、リーダー国の候補として力を発揮していることがわかります。アメリカとフランスには、この問題に対する政治活動に相違こそありますが、世論となると、2国間の相違は余りありません。フランスの調査対象者の40%は、「地球温暖化は、世界が懸念する環境問題トップ3の1つである」という見解を示しており、この割合は、第1位のスペイン(45%)、2位の韓国 (44%)に次いで3番目に高い数字です。アメリカにおいても37%と、数値とかけ離れて低いわけではなく、地球温暖化に対する懸念が表れています。
地球温暖化に対する適切な行動指針の決定については、まだ議論する必要がありますが、この調査結果を見ると、世界の調査対象者らが「世界の気候は、何らかの形で変化している」と考えていることに、疑いの余地はほとんどありません。世界の対象者の87%は「気候は変化している」と考えています。これに対し、「変化しているとは思わない」と「わからない」は、それぞれたったの7%です。驚くことに、フランスの調査対象者は「地球温暖化」を懸念する環境問題トップ3の1つに選びましたが、「気候は変化している」に賛同する国としてはランキングの下位に位置しています。フランスの対象者の78% これに賛同しており、ドイツ(76%)、オーストラリア(76%)、アメリカ(75%)、日本(75%)が下位の5国となっています。
もちろん、地球温暖化が、唯一の環境問題ではありません。オーシャンコンサーバンシー(Ocean Conservancy:米国に本部を置くNGO)では、毎年800万トンのプラスチックが汚染物質として海洋に混入していると推計しています。これらのプラスチックは、2億7,500万トンのプラスチックゴミの副産物で、その多くは使い捨て、あるいはリサイクルできない製品から出たものです。プラスチック梱包、レジ袋、その他使い捨て用品、リサイクルできないものが与えうる影響がどれほどかを聞けば、世界の圧倒的多数の人が「これは懸念すべき問題である」と同意を示すでしょう。現に、世界の調査対象者の80%は、一定レベルの懸念を示しています。では、私たちは、この問題にどのように対応すべきなのでしょうか?
政策という観点では、世界の多くの調査対象者(45%)がこの問題の解決策として、リサイクルできる製品の幅を拡大するために財政支出を増やすべきだと指摘しています。「プラスチック製品を扱っている店舗には課税してもよい」と述べる人の割合は31%、「プラスチック製品自体に課税する」は28%となっており、この3つが政策上の措置としてトップ3となっています。
政策立案者らが、プラスチックゴミ問題への対策措置のメリットについて議論を繰り広げる中、世界各地の人々は、個人レベルで行動を起こす意思を示し始めています。世界の調査対象者の半数以上(53%)が、「使い捨て製品を再利用」してこの問題に立ち向うと述べています。また、「リサイクル製品を買う」(47%)も僅差で追随しています。これによって、エコ・プロダクトの製造企業に市場があることが立証されました。
規模の大きな問題に取り組む場合に、その問題の一部だけを見て、そこを非難するのは簡単なことです。この安易な方法をとると、使い捨てのリサイクルできないプラスチック製品を大量に生産している企業、このような製品を買いたいと思っている消費者、あるいはこのような製品に対して規制措置を施行しない政府が非難の的となります。しかし、世界の多数の人は、このような非難を一部に向けるのではなく、「この問題は、原因となっている全ての団体・個人が、責任を負うべきだ」という考えに賛同しています。37%の調査対象者が、「問題を低減するために私たち全員が均等に責任を負うべきだ」と考えています。これに次ぐのは「このような製品の製造企業が責任を負うべきである」(20%)、「政府の責任」(16%)、「このような製品の販売している企業責任を負うべき」(10%)、そして「削減の取り組みを先導すべきは、消費者である」と回答したのは8%でした。