高所得世帯はコロナが収束していなくても、ビジネスの再開を望む傾向が強い

コロナウイルスの大流行が完全に制御されていないという証拠があるにもかかわらず、経済を再開するかどうか、そしてそれはどの程度まで、というの議論が政策立案者の頭をかすめており、いくつかの政府がこの実験に着手しようとしています。
感染の第二波、経済の再度の悪化、死亡者の増加、ワクチンの未完成などに対する不安が、最初のロックダウン解除後の生活がどうなるかという不確実性を増大させています。
イプソスの最新の調査によると、世論は二分されています。今回の調査では、14か国のうち8か国で、ウイルスが完全に封じ込められていなければ、経済・ビジネスの開放に反対するという対象者が過半数を占めました。
しかしデータを詳しく見てみると、高所得世帯の調査対象者では42%が、ウイルスにもかかわらず経済とビジネスの再開を望むと回答し、低所得世帯の36%と比較して、再開を望む傾向が強いことがわかります。
高所得世帯の対象者の過半数がこれに同意したのは、ロシア (61%) 、中国 (59%) 、インド、イタリア (いずれも55%) 、ドイツ (53%) でした。

経済学者のハリー・ホルツァー米ジョージタウン大学公共政策学科教授は「景気回復を望む高所得層と低所得層の世帯数に大きな差はないが、高所得層の回答には様々な要因が作用している可能性がある」 と分析しました。
「自信のビジネスが痛手を負っているのだ。彼らは自身の株を回復させたいか、あるいは再開で失うものを減らすことを望んでいる。同僚や顧客にさらされることでの健康被害の懸念は彼らにはないのだから。」とホルツァーは述べました。
トロント大学のロットマン経営大学院のリチャード・フロリダ経済分析・政策教授も、これに同意し、高所得者は社会的に距離を置いたり隔離したりすることができ、コロナウイルス流行の脅威にさらされていないと付け加えました。
フロリダ教授は「彼らは情報を持っていて、自分の行動をコントロールすることができる。行きたい場所を選んで」と話しました。
コロナウイルスのリスク vs. 閉鎖緩和の報酬
経済学者によると、低所得者が最もリスクにさらされているのは、彼らがしている仕事、彼らが住んでいる場所、公共交通機関を利用することを含めて通勤の方法などの条件が重なるからです。
米労働省の元主任エコノミスト、ホルツァー氏は「この閉鎖は、失業保険で十分に補償されない限り、低所得者に最も大きな損害を与える」と述べました。
世界中の国々の政府は、コロナ禍の影響を受けた労働者を支援するために一連の失業対策を導入しており、低所得労働者への支払いは高所得労働者よりも高額です。しかし、欧州では、解雇された労働者の所得の80%以上を支払っている政府もあります。
イプソス パブリックアフェアーズ部門のCEOであるダレル・ブリッカーは、低所得層の構成も重要だと指摘しています。特に、固定所得のある退職者の数が偏っている場合にはなおさらです。
「高齢者が最もリスクにさらされていることと、彼らが頼れる収入を得ていることを考えると、彼らが経済の開放を望む動機は少ない。」とブリッカー。
低所得層の調査対象者の約39%が45歳から74歳です。これはほかの年齢層よりも割合が多いのですが、中所得層 (48%) 、高所得層 (47%) の45歳以上の対象者の割合よりはまだ低いのです。
雇用面では、低所得層の対象者の12%が退職しており、これは高所得層の場合は9%でした。しかし、フルタイムで働いていると回答した人の数にも大きな差があり、高所得層の64%に対し、低所得層ではわずか20%でした。
フロリダ教授は「彼ら[高所得世帯]はおそらく、自分の収入だけでなく、退職金や投資についても心配しており、できるだけ早く正常な状態に戻りたいと思っている」と話しました。