マレーシアの経済は、1957年の独立以来、農業と商品ベースの経済から、主に製造業とサービスベースの経済へと進化し、効果的に多様化してきました。
マレーシア政府は、マレーシアをデジタル主導の高所得国および地域のデジタル経済リーダーに転換するという政府の願望を反映して、マレーシアデジタル経済ブループリント(ブループリント)を発表し、2020年にMyDIGITALを立ち上げました。
このページでわかること:
- マレーシアの基本情報
- マレーシア市場調査で押さえておきたい文化的・消費者行動のポイント
- マレーシアの定性調査
- マレーシアの定量調査
- まとめ:市場調査を成功に導くためのマレーシア理解

- 首都- クアラルンプール
- 人口:34,308,525人(2023年)
- 通貨: マレーシアリンギット (MYR)
- 一人当たりGDP:11,109.26(米ドル)(2021)
マレーシアの基本情報
マレーシアは、 東南アジア、一部はタイ南部のマレー半島、ボルネオ島の北3分の1に位置し、インドネシア、ブルネイ、ベトナム南部の南シナ海と国境を接しています。面積 は、330,000 km² (127,316 sq. mi.)で、海岸沿いの平野と内陸部、ジャングルに覆われた山々。南シナ海は、ボルネオ島のマレーシア半島と東マレーシアを隔てています。
文化的プロフィール
エスニシティ
- マレー語とブミプトラ語 69.4%
- 中国語 23.2%
- インド人 7.3%
- その他の人種 0.7%
宗教
- ムスリム(公式) 63.5%
- 仏教徒 18.7%
- クリスチャン 9.1%
- ヒンドゥー教徒 6.1%
- その他 0.9%
- なし 1.8%
- 不特定の1%(2010年推計)
マレーシアには異なる文化があるだけでなく、異なる宗教もあります。すべての人が調和して生きるためには、宗教的な感受性が絶対に必要です。イスラム教はマレーシアの主要な宗教ですが、イスラム国家とは見なされていません。
マレーシアの食べ物
マレーシアにはさまざまな人種や文化があるため、マレー料理、中華料理、インド料理など、マイルドなものからスパイシーなもの、プレーンなものからカラフルなものまで、さまざまな食べ物があります。
多様な民族グループと歴史が混ざり合ったマレーシア料理は、世界的な評価を得ています。イスラム教徒の間では、食品のハラール認証がますます重要になっています。イスラム料理の調理スタイルのコンプライアンスは必須です。
マレーシアの言語
マレーシアは多民族国家であり、言語の多様性が特徴です。公用語はマレー語(バハサ・マレーシア)で、国民の約80%以上が日常的に使用しています。また、英語も第2の公用語として広く使用されており、ビジネスや教育の場で特に重要です。
主要な民族別にみると、中国系住民は北京語や広東語を、インド系住民はタミル語を使用する傾向があります。
全体として、マレーシア国内には137の「生きた言語」が存在し、言語的多様性が社会や市場に大きな影響を与えています。市場調査を行う際には、対象層に応じた適切な言語設定が重要です。
マレーシアの主な祝祭とその影響
マレーシアでは多民族・多宗教社会を背景に、様々な祝祭が国民的行事として祝われています。これらの期間は市場調査の実施時期や消費傾向に大きな影響を与えるため、把握が不可欠です。
ハリラヤプアサ/ハリラヤアイディルフィトリ
ラマダン明けを祝うイスラム教の最大行事。親族の集まりや贈答品需要が増加し、食品・小売の売上が伸びます。
チャイニーズニューイヤー(旧正月)
中国系住民の最大の祝祭。赤い装飾が街中に広がり、帰省や贈答需要が高まる時期です。
ディーパバリ(光の祭典)
ヒンドゥー教の祭り。ランゴリなどの華やかな装飾とともに、衣料・雑貨の消費が活発になります。
ウェサック(仏誕節)
仏陀の誕生と悟りを祝う仏教の行事。寺院での儀式や慈善活動が行われ、宗教的ムードが強まります。
クリスマス
キリスト教徒は少数派ながら、全国的に祝われる祝日。都市部では装飾やセールが盛んで、商業的需要が高まります。
マレーシア市場調査で押さえておきたい文化的・消費者行動のポイント
マレーシア市場における市場調査を行う際には、文化的背景や社会的価値観の理解が欠かせません。多民族国家であるマレーシアでは、特に宗教やジェンダーに配慮した対応が重要です。異性間の距離感には慎重であるべきで、身体的接触や過度な親密さは避けましょう。
また、マレーシア人は家族との関係を重視する傾向があり、対人関係やブランド選好にもその価値観が反映されます。市場調査のインタビューやエスノグラフィー調査においては、相手の家族背景に興味を示すことが、信頼構築の第一歩となるでしょう。
服装に関しても、控えめでフォーマルなスタイルが推奨されます。これらの文化的マナーを踏まえることで、より信頼性の高い市場調査データを取得することが可能となります。
マレーシアの市場調査におけるセンシティブな話題の取り扱い
マレーシアでの市場調査では、民族関係、宗教、王室に関する話題は非常にデリケートです。質問設計やインタビューフローにおいて、これらのテーマには十分な配慮が必要です。無意識のうちに相手を不快にさせてしまうと、調査協力を得るのが難しくなる可能性があります。
また、面と向かっての批判や否定的なコメント、公の場での感情的な発言も、マレーシア人にとっては「カサール(粗野)」とみなされるリスクがあります。市場調査では、調和的かつ穏やかなコミュニケーションが求められます。無理に会話の沈黙を埋めることも避け、相手のペースに合わせたヒアリングを行うことが大切です。
家族重視のライフスタイルが市場調査に与える示唆
マレーシアの家族構造は、市場調査において消費者インサイトを深掘りする上で非常に重要な要素です。多くの家庭では拡大家族が同居しており、消費行動も家族単位で行われる傾向があります。特に住宅価格の上昇と都市部への人口集中により、複数世代の共生が一般化しています。
市場調査では、世帯構成や生活スタイルの変化を把握することで、商品やサービスのニーズをより正確に特定することが可能です。たとえば、高齢者を含む家族世帯に向けた商品開発や広告戦略を検討する際には、この点を十分に考慮する必要があります。
若年層の影響力とデジタル行動:市場調査から読み解く新消費トレンド
マレーシアの人口構成は若年化が進んでおり、特に都市部では若年層が主要な消費層として台頭しています。市場調査の結果からも、彼らの購買力が経済に与える影響は年々増大していることが明らかです。
クランバレー周辺ではショッピングモールの建設が加速し、若者の消費行動が小売業を活性化させています。また、デジタルネイティブ世代によるオンラインショッピングの定着は、EC市場の成長を強く後押ししています。小規模なブログショップやSNSベースのビジネスも拡大しており、こうした動向は市場調査において重要な観察ポイントです。
さらに、スマートフォンの利用率は非常に高く、調査対象者が対面よりもデジタルでの接点を好む傾向も見られます。オンライン調査やモバイルアプリを活用した調査手法を取り入れることで、より効果的なリサーチが可能となります。
マレーシアでの市場調査:定性調査は、民族構成と文化的背景を踏まえた調査設計が重要
マレーシアの定性調査を成功させるには、同国の多様な民族構成を十分に理解することが不可欠です。主にマレー系、中国系、インド系の3つの民族グループが存在し、特にマレー系と中国系が人口の多数を占めています。しかし、両者は購買行動や食習慣、ブランドに対する態度などにおいて顕著な違いがあり、調査設計時にはそれぞれの文化的価値観に配慮する必要があります。
特にフォーカスグループディスカッション(FGD)やオンラインコミュニティ調査では、異なる民族を1つのグループに混在させることは推奨されません。言語面でも、共通語であるバハサ・マレーシアが広く通用しますが、中国系住民は家庭内やコミュニティで北京語や広東語を使用するケースが多く、調査言語の設定にも注意が必要です。
消費文化とブランド志向:食品とFMCG市場からの示唆
マレーシア人の間では「食」が国民的な娯楽であり、多民族国家という背景から、多彩な料理が日常的に親しまれています。これは、食料品や即席食品(例:インスタントラーメン)などの消費傾向にも大きく影響しており、アジアの味が主流を占めています。
FMCG(消費財)市場では、プライベートブランドはあまり普及しておらず、いわゆる「電力ブランド(Power Brands)」が大きなシェアを保持しています。特に中間~上位所得層の消費者は、都市部のモダントレード(大型スーパーやコンビニ)で買い物をする傾向が強く、従来型の生鮮市場を訪れるのは限られたシーンにとどまります。
ユニークな消費空間:ママク食堂の観察ポイント
市場調査で注目すべきマレーシア独自の現象の一つが「ママク(Mamak)」です。これはインド系イスラム教徒が運営する食堂で、社会的・経済的なバックグラウンドを問わず、あらゆる人々が共通の空間で食事を楽しむことができます。
ママクは、サッカー観戦、飲食、交流の場として機能しており、異なる民族・階層のマレーシア人の価値観を観察できる重要なフィールドです。定性調査のロケーション選定やエスノグラフィー調査の対象としても有用です。
フォーカスグループの設計・運営における実務的留意点
マレーシアでの定性調査では、参加者の生活スタイルに合わせた時間設定が成功の鍵を握ります。以下は一般的なスケジューリングの指針です:
- 労働者層:平日夜間(19時以降)または週末
- 主婦層:午前11時開始が適切
- 参加者の遅刻は一般的であり、10~15分の遅延を見越した運営が必要
- 出席率を確保するために、8名の定員に対して10名を招集
- 男女混合グループは高所得層でない限り避けるのが望ましい
マレーシアにおけるモデレーションのポイント
モデレーターは、民族ごとの傾向を理解し、柔軟に対応する必要があります。たとえば、マレー系参加者は感情的な反応を示す傾向があり、感情に訴えるブランド訴求に反応しやすいのに対し、中国系参加者は理性的な分析を重視し、価格や実用性に敏感です。
タブーとされるトピック(宗教、政府、王室、民族問題)は避けるべきであり、射影法などの技法は比較的効果的とされています。ホームビジット調査では、観察者の人数(最大2名)、通訳者の人数(最大1名)を厳守することで、被調査者の快適さと自然な回答を保つことができます。
実施エリアとフィールドワーク体制
定性調査の主な実施エリアは、以下の都市が中心となります:
- クアラルンプール(KL)/クランバレー地域:都市部の代表
- ペナン:多民族が共存する商業都市
- ジョホールバル:シンガポールとの国境を有する経済拠点
さらに、全国的な視点を得るために、クランタン州や東マレーシア(サバ州・サラワク州)などの地域も考慮する必要があります。
なお、イプソスはマレーシアにも拠点があり、英語、バハサ・マレーシア、広東語、北京語、ヒンディー語を扱える多言語チームが支えており、経験豊富なアソシエイトディレクターが現地のIUUチームを指揮しています。
マレーシアでの市場調査:定量調査のポイント
1. サンプリング設計:地域と人口統計の考慮
マレーシアで定量的な調査を行う際には、国が13の州と3つの連邦直轄領(クアラルンプール、プトラジャヤ、ラブアン)に分かれている点を理解する必要があります。
社会全体を代表する調査では、これらすべての地域をベースにしたサンプリングが推奨され、年齢、民族、性別、階層、世帯収入などの人口統計に基づいた詳細なクォータ設計が求められます。
一方、消費者調査の場合は、西マレーシア(半島部)の主要都市に絞ることが経済的です。特に、クランバレー、ジョホールバル、ペナン、イポーが推奨される地域です。
2. 製品テストにおける地理的範囲
CLT(セントラル・ロケーション・テスト)での製品テストでは、多くの場合クランバレーが中心となります。物流や予算に余裕がある場合は、ジョホールバルやペナンなどの地域に拡大することも検討されます。
3. フィールドワークの適切なタイミング
調査の実施時期には注意が必要です。特に以下の期間は避けるべきとされています:
これらの祝祭期間中の約1週間は、フィールドワークの「ブラックアウト期間」として調査活動が困難になります。祝祭日はグレゴリオ暦で一定ではないため、実施時期については現地事務所に確認が必要です。
また、断食月(ラマダン)は、70%以上のイスラム教徒が断食を行い、味覚や購入行動に影響が出るため、F&Bやたばこ関連の調査は避けた方がよいとされています。
4. データ収集方法とその変化
パンデミック以降、データ収集の方法にも変化が生じています:
- オンライン調査・パネルベース:約60%。主に標準的な消費者調査で利用。
- 対面式調査(CAPI):約30%。主に製品テストや長時間のインタビューに最適。
- 電話調査(CATI):約10%。データベースを基にした特定調査で使用。
非接触型混合モードの台頭
COVID-19以降、対面式調査でも非接触型混合モードが主流になりつつあります。これは、たとえば製品を自宅に配送し、使用後に電話やビデオ通話で評価を収集する方法などを指します。感染防止対策として、社会的距離を保ちつつも精度の高いデータ収集が可能となっています。
5. 電話調査の注意点
電話インタビューの際には、固定電話の普及率が低下している点に注意が必要です。そのため、ランダムな携帯番号の組み合わせを使用する手法が求められます。また、電話インタビューは10分以内で完結することが推奨されており、それ以上になると回答率が著しく低下する傾向があります。
まとめ:市場調査を成功に導くためのマレーシア理解
マレーシア市場で有効な市場調査を実施するためには、文化的背景や生活様式への深い理解が前提となります。敬意を重んじる社会であること、家族が生活の中核を担っていること、若年層の購買力が消費を牽引していることなど、各種のインサイトを事前に把握しておくことが調査の成功につながります。
本記事で紹介した要点を踏まえ、市場調査設計・実施の質を高めることで、マレーシア市場における確かなビジネス展開の礎を築くことができるでしょう。
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