2021年に感じる個人的な脅威のトップは「健康状態の悪化」「生計手段の喪失」「気候変動による災害」
イプソスが世界経済フォーラムのために行った新しい調査によると、世界の成人の5人に3人が、健康状態の悪化、収入や雇用の喪失、天候に起因する自然災害の頻発などを、それぞれ現実の脅威として認識しています。 2020年12月23日~2021年1月8日の間にオンライン調査を行った28カ国の調査対象者23,004人のうち、気候変動のスピード、雇用機会、一般的な健康状態について、今年は改善すると考える人よりも悪化すると考える人の方が多いことがわかりました。一方で、デジタルツールやテクノロジーへのアクセスについては、世界全体の3分の2が懸念を抱いておらず、2021年にはより困難になると予想しているのは10人に1人に過ぎません。
想定される7つの展開のそれぞれが、今後1年間に自分や家族にとってどの程度の脅威になると思うかを尋ねたところ…
- 世界の調査対象者の62%が「健康状態(精神的または身体的)の悪化」が現実の脅威であると回答(「非常に現実的な脅威」が18%、「やや現実的な脅威」が44%)。
- 61%が「収入や雇用の喪失」についてそう回答(22%、38%)
- 60%が「天候による自然災害の発生頻度が高くなる」についてそう回答(18%、42%)
- 55% が「自国と他国との間の紛争や貿易問題 」についてそう回答(13%、41%)
- 48% が「社会的な偏見や不平等の悪化(例:性別や民族によるものなど)」についてそう回答(13%、35%)
- 44% が「トレーニングや教育を受けるのがより困難になる」についてそう回答(12%、33%)
- 33% が「デジタルツールやテクノロジーへのアクセスがより困難になる」についてそう回答(8%、25%)
7つの懸念事項をそれぞれ見てみると、2021年には以下の5つの事項が改善するよりも悪化すると予想する調査対象者が世界的に多くなっています。
- 気候変動のスピード: 20ポイント差(改善する18%、変わらない44%、悪化する38%)
- 雇用の機会:15ポイント差 (25%, 34%, 41%)
- 一般的な健康状態:5ポイント差 (27%, 42%, 32%)
- 不平等(例:性別や民族に基づくもの):4ポイント差 (19%, 57%, 24%)
- 自国と他国との関係:2ポイント差 (23%, 53%, 25%)
一方、2021年の状況について改善する予想する人が悪化する予想する人よりも多いのは以下の2つです。
- デジタルツールやテクノロジーの利用可能性:26ポイント差(改善する36%、変わらない55%、悪化する10%)
- トレーニングや教育の機会:3ポイント差(25%、53%、22%)
2021年の脅威と変化に関する国ごとの違い
健康
調査対象となった28カ国の中で、心身の健康状態の悪化を個人的な脅威と見なす割合が最も高いのは、トルコ(78%)、チリ(74%)、スペイン(72%)、南アフリカ(71%)で、最も低いのは中国とサウジアラビア(いずれも44%)でした。
2021 年に一般的な健康状態が改善すると考える人の割合が、悪化すると考える人の割合を大幅に上回る(5 ポイント以上)のは、調査対象 28 カ国のうちわずか 9 カ国で、サウジアラビア(52 ポイント差)、中国(42 ポイント差)、ペルー(38 ポイント差)で最も大幅に上回っています。一方、悲観論者が楽観論者を大きく上回ったのは17カ国で、特にハンガリー(45ポイント差)、ポーランド(39ポイント差)、英国(37ポイント差)でした。
暮らし
収入や雇用を失うことが現実的な脅威であると最も広く認識されている国は、チリ(81%)、ペルー(80%)、トルコ(80%)です。一方、オランダ(32%)、スウェーデン(38%)、中国(39%)では5人に2人以下の割合です。
2021年の雇用機会について、悪化するよりも改善すると考える人が大幅に多いのは、28カ国中7カ国のみで、中でもペルー(42ポイント差)とサウジアラビア(39ポイント差)です。一方、その反対の19か国では、日本(57ポイント差)、英国(53ポイント差)、フランス(50ポイント差)が目立ちます。
気候
チリ(78%)、スペイン(77%)、フランス(76%)では、気象関連の自然災害の発生頻度が高いことが、自分や家族にとっての脅威であると感じる割合が特に高く、サウジアラビア(41%)、スウェーデン(43%)、中国(44%)では、その割合が最も低くなっています。
2021年に気候変動のペースが改善すると考える人の割合が、悪化すると考える人の割合を大きく上回るのは、調査対象28カ国中7カ国で、中でも中国(28ポイント差)とサウジアラビア(26ポイント差)で顕著です。しかし、20カ国では、気候変動のペースに対する悲観論者が楽観論者を上回っており、中でもイタリア(51ポイント差)、トルコ(51ポイント差)、フランス(50ポイント差)では顕著です。
国際的な紛争
自国と他国との間の紛争や貿易戦争を最も恐れているのは、トルコ(76%)とオーストラリア(69%)の2カ国です。一方、スウェーデン(33%)、サウジアラビア(38%)、オランダ(39%)では、国際的な衝突や貿易戦争が自分や家族にとって現実的な脅威であると考えている成人は10人に4人以下でした。
2021年に自国の国際関係が改善すると考える人の割合が、悪化すると考える人の割合を大きく上回るのは、サウジアラビア(48ポイント差)、ペルー(47ポイント差)、メキシコ(38ポイント差)を筆頭に、調査対象28カ国中10カ国です。一方、自国の国際関係が悪化すると考える人が改善すると考える人を上回ったのは14カ国で、特にオーストラリア(35ポイント差)、イギリス(35ポイント差)、ハンガリー(34ポイント差)、ポーランド(34ポイント差)です。
偏見と不平等
今後1年間に社会的な偏見や不平等(性別や民族によるものなど)が悪化すると考えている人の割合は、トルコ(69%)、南アフリカ(63%)、チリ(63%)で最も高く、スウェーデン(30%)、ロシア(33%)で最も低くなっています。
2021 年に格差が大きく改善すると考える人が、悪化すると考える人よりも多いのは、調査対象 28 カ国のうち 7 カ国のみで、特にサウジアラビア(36 ポイント差)、ペルー(35 ポイント差)、中国(32 ポイント差)で多い。一方、16カ国では、格差に対する悲観論者が楽観論者を上回っており、特にハンガリー(30ポイント差)とイタリア(29ポイント差)では、顕著です。
トレーニングと教育
トレーニングや教育を受けることが困難になることを現実の脅威として認識しているのは、トルコ(75%)とペルー(67%)で最も多く、スウェーデン(19%)、オランダ(24%)、オーストラリア(25%)では最も少ない結果となっています。
特にサウジアラビア(45ポイント差)、ペルー(44ポイント差)、メキシコ(36ポイント差)、中国(36ポイント差)など12カ国では、2021年にトレーニングや教育の機会が悪化するよりも改善すると予想する人の割合が大幅に増えました。しかし、13カ国では楽観論者よりも悲観論者の方が大幅に多く、特にハンガリー(29ポイント差)、日本(24ポイント差)、英国(24ポイント差)では、顕著です。
デジタルツールとテクノロジー
デジタルツールやテクノロジーへのアクセスが困難になるという懸念は、アルゼンチン(54%)、インド(52%)、韓国(50%)で最も広く見られ、スウェーデン(12%)、オーストラリア(18%)、カナダ(19%)では最も低くなっています。
2021年にデジタルツールやテクノロジーの利用状況が改善すると考える人の割合は、悪化すると考える人の割合を上回っており、特にサウジアラビア(57ポイント差)、ペルー(55ポイント差)、インド(48ポイント差)でその傾向が顕著です。イタリアだけは、楽観的な人の割合が悲観的な人の割合を3ポイント上回っているものの、その差は統計的に有意ではありません。
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