舵のない船: ミステリーショッピングの正しくない方法

調査や測定に関連したプロジェクトを実施する際には、学んでおくべきことがあります。目標、計画、指示がはっきりしていなければ、結果として「約束の地」にたどりつけないかもしれません。

舵のない船: ミステリーショッピングの正しくない方法

レオナルド・ダ・ビンチ曰く、「理論のない実践を好む人は、舵もコンパスもない船に乗り込み、どこに行くかも知らない船乗りのようなものである。」 舵のない船を造ることは、どこに着くかもわからない、あるいは着くことさえないかもしれないで海の真ん中に放り出されるようなものです。

調査や測定に関連するプロジェクトを実施する際には、学んでおくべきことがあります。目標や計画、指示がはっきりしていなければ、目的の“港”を探せない結果に終わるかも知れません。

「ミステリーショッピングで、自分が何を求めているのかわからなくなる」「データの使い道がない」「結果からわかることは既にわかっていたことだけだ」・・・顧客サービスに関する調査を実施していると、このようなコメントやフィードバックをいただくことがあります。

ミステリーショッピングを正しく利用できていますか?

ミステリーショッピングというものは、型にはまるようなデザインで構築されています。ほとんどのプログラムは、コアなところではいずれも同じようにできています。どのような業界であっても、質問の90%は同じです。

中には、クライアントのビジネスに合わせた調査の実施を勧めるエージェンシーもあります。しかし、ほとんどの場合、少しだけ変化をつけただけのものなのです。

たとえば、このような台詞を聞いたことがあるのではないでしょうか。「御社にビジネスにはご挨拶が重要なようです。ですから時間の計測はこれまで60秒以内としていたものを30秒以内に変更し、ポイントを2にしましょう。」 これは必ずしもあなたを欺こうとしているわけではありません。ただ「挨拶」が重要である、あるいはそれができていないといけない、ということは顧客マネジメントでは普遍の真理なだけです。

ミステリーショッピングでするべきではないこと

ミステリーショッピングを正しく捉えるには、ツールキットの中の一つのツール、たとえばスイスアーミーナイフのようなものと考えるべきです。様々な用途に使えるアーミーナイフをあなたのビジネスの目標に合わせて使うのです。ミステリーショッピングには様々な用途がありますが、まずここでは「これは違う」という例をあげます。

  1. ミステリーショッピングでは顧客満足の測定はしない
    ショッパーは、きまった基準と回答する質問とともに店舗などを訪問するので、その訪問の体験が、ショッパーとしての調査の尺度に基づかずに、顧客として満足できるものであったのかどうかを適切に判断できません。
    そのショッパーは、顧客としてのプロフィールには合致して、属性からするとあなたのビジネスの顧客にピッタリかも知れません。しかしショッパーとして配置された時点で、訪問することは「仕事」となり、顧客ではなく「ショッパー」として客観的に考えるようになります。
  2. ミステリーショッピングは主観的測定の手段ではない
    ショッパーは最も「実際の顧客」に近いものですが、実際には顧客ではありません。自分がまったく興味がない製品、必要のない製品、指示されて謝礼をもらうから見る、または購入する製品で、購入体験の感情を本当にフィードバックすることができますか? 
    代わりに、ミステリーショッピングは、あなたの戦略に基づいてビジネスを成功させるために、従業員が従わなければならないステップを測定するのに利用することができます。たとえば、契約の際に最も成功率が高くなるように販売プロセスに従っているか、あるいは、最高の顧客満足を得るためのカスタマージャーニープロセスに従っているか、などをチェックします。
  3. ミステリーショッピングはVoC(顧客の声)調査等、直接的な顧客フィードバックを得る代替手段ではない
    そしてVoCもまた、ミステリーショッピングの代替ではありません。ミステリーショッピングがプロセス主導の客観的測定であるのに対し、VoCプログラムでは顧客満足度と、タッチポイントでの経験およびブランドへの感情的反応を把握します。
    これらの調査手法はお互いに代替することはできませんが、補完し合うことができます。たとえば、VoCと顧客フィードバックプログラムを利用して顧客が望んでいることを把握し、戦略を立てます。そしてミステリーショッピングでその戦略がタッチポイントで実際に成功しているかどうかを確認する、という形です。
  4. ミステリーショッピングはスタッフの懲戒理由を探すためのツールではない
    一部にはこのような使い方をしている企業もあるようですが、本来はこのようには使うべきではありません。童話の「北風と太陽」の"太陽"がミステリーショッピングの正しい使用方法です。ミステリーショッピングは、スタッフのトレーニングや報奨のために使うことでタッチポイントをより向上させるために役立てるもので、ネガティブな意味で使うものではありません。

シンプルなミステリーショッピングは顧客サービス経験やそのロケーションを秘密裏に評価するものです。顧客のサービス経験のどの部分を評価するにせよ、あなたのビジネスニーズや目的に順応することができます。

  • 店舗がポスターを貼っているかどうかを確認する必要がある?
    ミステリーショッパーを送りましょう
  • 店舗スタッフが競合の製品ではなく御社の製品を勧めているかどうかをミステリーショッパーが確認できるか?
    もちろんです
  • 店舗スタッフがセールスのステップを正しく踏んでいるかどうかをミステリーショッパーが調査できるか?
    当然です
  • 顧客フィードバックで店舗の化粧室の状況について懸念が上がった?ミステリーショッパーを使って証拠としてその状況の写真を撮影してきてもらいましょう
  • “行動の伴わないビジョンは白昼夢、ビジョンのない行動は悪夢”

現在の顧客経験調査には、データと情報が重要であり、企業はデータを賢明に使用し、予算を効果的に管理する必要があります。以前実施したCX調査で、入店したときの挨拶は不要だ、とか、素早い挨拶は顧客経験に何の影響ももたらさない、という結果が出たとします。それならば貴重な調査項目を挨拶に割くのは無益です。もし顧客が名札や制服について気にしないなら、そういった質問は避け、顧客に影響のある質問に集中するほうがよいでしょう。

確かに、対応してくれているスタッフが誰なのか知りたいなど、これらの例が重要な場合もあります。その場合は、調査項目として加えればいいのです。顧客にとって何が重要なのかを戦略的に判断すれば、戦略とあなたのビジネスに真のインパクトを与える分野でのパフォーマンスを調査できる質問を作成することができます。

あなたの目標を知り、達成する

正しい調査計画と指示があれば、ミステリーショッパーを使用して、その場にいる間にほぼすべての客観的評価を行うことができます。ただし、人間の脳が一度に保持できる情報は限られています。このことを念頭に置いて、「あなたが必要とする情報」の目標を設定し、その目標を達成に直接つながるデータを収集するための質問やシナリオを計画します。

同様に、キャンペーンの目標を決定することは、どの店舗をどのくらいの頻度で訪問するかを判断するのに役立ちます。報奨制度を使って店舗スタッフのセールス実績を向上させるためにミステリーショッピングを実施している場合は、毎月、すべての店舗を訪問するのがよいでしょう。しかし、メーカー側が自社製品を販売している店舗のスタッフが持つ製品知識をチェックしたいのであれば、各ブランドについて一定のサンプルがあればよいでしょう。小売業では、サービスがブランド価値に致命的な影響を与える大型販売店や、パフォーマンスの向上が必要な顧客満足度が低い店舗にターゲットを絞って、最も影響のあるところに予算を投下することを選択することもできます。

ミステリーショッピングの立ち上げ前に、適切なプログラムの設計に時間を取れば、予算を賢明に投資できるだけでなく、ミステリーショッピングを正しく利用できることにもなり、また、あなたの戦略が成功した証拠を手にすることができます。

さあ、あなたはどうやってミステリーショッピングを実施しますか?

カスタマーエクスペリエンス