食料品価格の高騰:コロナでより多くの支払っていると言われる理由

調査対象者の3分の2が、経済がデフレ圧力に直面しているにもかかわらず、食料品の価格は上昇していると回答しています。

38歳の二児の母親、アッピ・シャーさんの毎週の食料品代は、コロナウイルスの大流行で数カ月前にオンラインだけで買い物を始めて以来、約30%上昇しています。

「オンラインショッピングを始めたとたんに食料品代が急に高騰したと感じる」と、ある通信会社のトロント地区の製品マネージャーを務める、現在産休中のシャーさんは言います。

彼女は、オンラインで食料品を注文して、従業員との接触を最小限にして店から受け取るのが簡単だと言います。しかし野菜は、より高くつく商品だということがわかりました。

「私たちは何度も生鮮食品を注文したが、すでに悪くなっていた。あるときは、受け取った商品の賞味期限がすでに期限が切れていたか、その日に期限切れになるものだったことがあり、それを捨てなければならなかった。」

それでもシャーさんは、コロナ禍が収まるまでは、店舗の中に入るより、少し高い価格を払って食料品をオンラインで注文し続けるつもりだと言っています。小さい子どもが2人いる彼女にとってはその方が便利です。

シャーさんは、コロナ禍が始まって以来、食料品により多く支払っていると言う世界中の多くの人々の一人です。イプソスが世界26カ国で約18,000人を対象に実施した最近の調査では、調査対象者の63%がコロナ禍で食料品、家庭用品のコストが上昇したと回答しています。これは提示された11のコスト分類の中で最高の割合です。

アルゼンチン、トルコ (いずれも86%) 、チリ、メキシコ、南アフリカ (いずれも80%)など、新興国市場の人々は、これに同意する傾向が強いことがわかります。

Cost of food since Covid-19 | Ipsos | Coronavirus pandemix

専門家によると、食料品の生産、加工、流通にかかるコストの上昇、自動化、物理的距離の確保や防護具の使用、トレーニングなどの増加、そしてコロナ禍での生産能力の低下が、食料品価格上昇の要因となっています。

カナダのノバスコシア州にあるダルハウジー大学農業食品分析研究所のシルヴァン・チャールボワ教授は、コストの上昇は来年まで続くだろうと述べました。

「食品を市場に出すには、サプライチェーン全体の企業がより高い価格を設定する必要がある」とチャールボワ教授は言います。「価格が急に上がった場合の買い控えを防ぐために、業界は長期にわたって価格を徐々に上げる。2021年には十分に終わるかもしれない。」

2つのインフレ率の話

また教授は、コアと食料という二つのインフレ率が分離すれば、4%の食料インフレ率は、食料を購入する消費者にとって10~12%の上昇に近いものになるだろうと付け加えました。

「これのマクロ経済的な背景には、西側諸国を中心とした経済の多くの側面に影響を及ぼすデフレ圧力がある。デフレ環境下で通常より高い食料品インフレ率の影響を相殺することが食料品店の最も重要な課題である」とチャールボア教授は言います。

米労働統計局 (Bureau of Labor Statistics) によると、世界最大の経済大国であるアメリカの食品インフレ指数は、過去12カ月間で4.5%に達しました。食品価格が急騰した反面、食品とエネルギーの変動を除いたアメリカの物価上昇率は、今年6月に0.2%上昇しただけで、今年2月に初めて上昇したものです。

他の主要国でも同じようなことが起きています。ユーロスタットによると、中国の6月の食品価格は前年同月比11.1%の上昇となり、ユーロ圏19か国の非加工食品価格は5.6%上昇しました。同月のユーロ圏の年間インフレ率はわずか0.3%上昇しただけでした。

バーモント大学のコミュニティ開発・応用経済学科教授で学科長のジェーン・コロディンスキー教授は、異なるセクターが異なる経験をしており、場合によってはサプライチェーンが消費者の買いだめ行動についていくことができなかったと述べました。

「一部の販売者はこれらの商品を利用して価格を上げたかもしれない。これには清掃用品が含まれる。米国では、サプライチェーンが生産を増やし、消費者の 「買いだめ」 が減っているケースもある」とコロディンスキー教授は言いました。

しかし、ニューヨーク大学のきゃろりん・ディミトリ准教授 (栄養・食品学) によると、病気になったり、人々が密接に接触している加工施設などで働くことができなくなったりして、労働力不足のために大規模な食料サプライチェーンが困難に陥ったケースもあるといいます。

「問題が予想される場所は、果物や野菜の収穫、果物、野菜、肉の包装、人との接点の多い加工施設などだ。保存の利かない生鮮食品の方が問題は深刻だ。私は、パンデミックが制御不能である限り、国内食品と輸入食品の両方について、これは一定期間にわたって続くと考えている」とディミトリ准教授は言いました。

新型コロナウイルスは食料サプライチェーンを傷つける

アメリカの牛肉指数は、ここ3ヶ月の間に20.4%上昇しました。新型コロナウイルスに労働者が罹患したために加工施設が操業を停止したり、操業を遅らせたからです。

グローバルで実施した調査の対象者の半数 (50%) が、新型コロナウイルスの流行以来、より高価な食品や商品、サービスを購入したり、店の閉鎖や品不足のため配送料を支払わなければならなかったと回答しました。

ミシガン州立大学の農業・食糧・資源経済学科のトレイ・マローン准教授は、食肉の生産能力は妥当な水準に戻ったかもしれないが、だからといってサプライチェーンが完全に回復したわけではないと述べました。

「豚肉、牛肉の大規模な加工工場の限られた生産能力は、時間をかけて解決するしかない。動物を育てるのに時間がかかるなどの他の理由がなければ。新型コロナウイルスがアメリカの食肉価格に何らかの影響を与えることは、しばらくの間は避けられない」とマローン教授は話しました。

果物や野菜の収穫に関しては、ミシガン州、カリフォルニア州、ワシントン州などの重要な専門作物生産州の症例数に注目することも重要だといいます。

「(新型コロナウイルスの患者数が)あまりにも劇的に増加すれば、新鮮な果物や野菜の供給量に影響が生じるかもしれない。」と話しました。

業界最大の競合相手はキッチン

食料品の価格が上昇したと人々が言うもう一つの大きな要因は、コロナによる閉鎖と規制のせいで、家庭で料理をして食べる量が増えたことです。

アメリカの家庭食費指数 (Food at home index) は、6月までの過去12か月間で5.6%増加し、これは過去9年半のうち最大の増加となりました。専門家によるとこれは、パンデミックが終息しても食品業界に永続的な影響を与えるだろうということです。

チャールボワ教授によると、ほとんどの世帯ではロックダウンによって食良品の支出に新たな基準ができ、私たちのキッチンが外食産業の最も強力な競争相手となってしまいました。

「ほとんどの人は何カ月も自宅で料理をしているので、さらに節約するのは不可能だ。しかし、食品業界は縮小しており、総売上高は大幅に減少している。これは、自宅での食事の支出がレストランでの支出ほど多くないためだ。私たちを外に連れ出してレストランでお金を使うようにするのは、いまより支出が多くなるので難しいだろう」とチャールボア教授は言います。

食料価格の上昇に需要基盤の弱さが加わり、チャールボア教授は、少なくともしばらくの間は、特にデフレ圧力が続く場合は、家庭で料理をする人が増えると予想しています。

マローン教授は、消費者はこのパンデミックが起こる前から「最後の配達」の選択肢を模索しており、そして「魔人を魔法のランプの中に戻すことはむつかしい」と考えていると付け加えています。

「私たちはレストランや食料品の配達サービスについて驚くべき変化を目にしてきた。そしてそれは今後も定着するだろう」とマローン教授は言います。また、現在世界の多くの地域が不況に陥っている中、レストランでの食事から食料品店での食事への移行は、景気後退時の消費者の食事の仕方を定義づける変化の一つであるとも付け加えています。

コロディンスキー教授も「家計は一時解雇と失業に直面しており、家で食事を準備する費用はもっと安い。人々はこれからも家で食べることを続け、家から離れた場所で食べることは贅沢とする傾向にあるようだ。」 と話しました。

一方、シャーさんは、パンデミックのおかげで家族は食事の仕方をリセットすることができ、外食やテイクアウトの回数を増やす「非常に滑りやすい斜面」を避けることができたと考えています。

「これが終わった後も私たちは外出を続けるだろうと思いますが、なぜもっとお金を使うのかということをより意識するようになると思います」と、彼女は言いました。

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