世界が懸念していること - 2020年1月

貧困と社会的不平等は、世界中で最大の懸念であり続けています。2020年のスタートは世界の61%が「自国は間違った方向に向かっている」と回答し、12カ月前に比べて4ポイント上昇しました。

世界的には、国によって大きな違いはあるものの、10人に6人が自国は間違った方向に進んでいると言っています。

貧困と社会的不平等が世界の最大の懸念(34%)であり、次が失業(31%)で、犯罪と暴力、金融・政治の腐敗(いずれも30%)を上回っています。

イプソスの「世界の懸念に関する調査 What Worries the World survey」は、一般市民が何を現在自国が直面している最大の社会的・政治的問題と考えているかついて、世界的な視点を提示しています。世界28カ国の19,000人の市民に毎月この質問を投げかけています。

イプソスはこのデータを10年間追跡してきました。2020年のスタートに、この10年間の調査結果を見直し、何が変わったかを確認してみました。

2020年の初め、世界はどの程度楽観的か

最新の「世界の懸念に関する調査」の結果によると、2020年1月、調査対象国の過半数(平均61%)が自国が間違った方向に進んでいると感じています。最も不安を示したのはイタリア(83%)で、次いで南アフリカ(79%)、フランス(79%)、スペイン(78%)と続きます。

世界の調査対象者の39%が「自国は正しい方向に進んでいる」と回答していることを考えると、2019年よりも今年は暗いスタートを切ったことになります。昨年1月には、43%が「正しい方向」、57%が「間違った方向」でした。

スコアは国によって大きく異なります。

最近の数か月と同様に、中国国民は自国の方向性について調査対象国の中で最も確信を持っており、90%が自国が正しい方向に向かっていると信じています。サウジアラビア(78%)は2位のままで、インド(58%)がブラジル(46%)を抜いて3位となっています。

今月、自国の方向性についての楽観的な見方ので著しい伸びを示したのは以下の2カ国です。

  • アルゼンチンは先月より16ポイント上昇し、39%となった
  • 12月12日の総選挙でボリス・ジョンソンが率いる保守党が過半数を獲得したイギリスは、15ポイント上昇し、40%が自国の方向性について肯定的になった

ムードは変わらず前向きですが、インドの58%という肯定的なスコアは、実は前月より11ポイント下がっています。また、マレーシア(40%)でも9ポイントの低下となりました。

一方、楽観的でない国もあります。

  • イタリア国民で「自国が正しい方向に向かっている」と思っているのは17%だけである
  • 南アフリカフランス(いずれも21%)、スペイン(22%)でもスコアは低い

過去12か月

2019年1月以来、「自国は正しい方向に向かっている」という点で、中国、サウジアラビア、インドが1~3位を占め、ブラジルアメリカが上位5位に入るのを見てきました。

一方イタリアは「自国は間違った方向に向かっている」という点で順位を上げてトップになりました。チリもこの一年で上位5位に入りました。イギリスは2019年のほとんどの期間、最も悲観的な国々のグループに入っていましたが、今月はスコアを上げ、順位も全調査対象国の中ほど辺りまで上昇しました。

「自国の方向性は正しい/間違っている」の指標でランク付けした、最も楽観的な5か国/最も悲観的な5か国は以下の通りです。


世界が懸念していることとは

今日、世界中の人々は、自国が直面している最大の懸念について尋ねられるとき、次の5つの問題に最も注目します。

国別の結果の簡単な内訳は以下のとおりです。

  1. 貧困と社会的不平等(34%):この問題について最も懸念している国はロシア(60%)で、チリ(55%)、ハンガリー(52%)の順となっている。この問題への懸念が最も低い国はアメリカ(22%)である
  2. 失業(31%):この問題について最も懸念している国は南アフリカ(62%)で、イタリア(58%)、僅差で韓国 (57%)の順となっている。この問題への懸念が最も低い国はオランダ(7%)で、ドイツ(9%)、ポーランド(11%)が続く
  3. 犯罪と暴力(30%):最も懸念している国はメキシコ(66%)で、ペルーと南アフリカ(63%)がそれに続く
  4. 金融・政治の腐敗(30%):南アフリカ(58%)が最も懸念している国、次いでロシア(57%)、マレーシア(53%)が続く

この10年でランキングはどう変化したか

過去10年間を振り返ってみると、多くのことが分かります。

  • 安定性:2020年初めの懸念事項の上位5項目は、2011年1月の5項目と同じ
  • 変化:失業はもはやかつてのような世界的な問題ではない。ここでの最大の変化はアメリカである。失業への懸念は2011年2月の71%をピークに、2015年半ばまでに31%へ、今回のウェーブではさらに13%へと低下した。

歴史的に見ても「貧困と社会的不平等」はずっと2位を占めてきましたが、初めてトップの問題として浮上したのは2018年の7月のことです。その時には上位3つの問題の間にかなりの開きがありました。

今日では、「犯罪と暴力」「金融・政治の腐敗」ともに30%であるのに対し、「貧困と社会的不平等」は34%で、2か月連続で世界の最大の問題となっています。

「貧困と社会的不平等」を最も懸念している国とは

この10年間、貧困と社会的不平等を最も懸念している国は、一貫してロシアハンガリードイツでの3国です。

チリ(現在は55%で2位)とアルゼンチン(39%で8位)は最近、社会不安と難民危機を潜在的に反映して、より大きな懸念を示しており、現在では順位が上がっています。

貧困と社会的不平等について、2015年は16位だったベルギーは、2020年1月には42%で世界で5番目に懸念している国となっています。フランスは現在40%で、2015年1月の29%を11ポイント上回っています。

イプソスでは、2020年中に「世界の懸念に関する調査」で長期的なトレンドをほかのカテゴリーについても深堀する予定です。イプソスのホワイトペーパー「安定の幻想 The Illusion of Stability で、人々の懸念がどのように変化してきたかをご覧ください。

「自国の方向性は正しい/間違っている」ー国別の過去10年の推移をみる

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