世界が懸念していること - 2023 年3月

「世界が懸念していること調査(What Worries the World)」で、インフレは過去12ヶ月間懸念事項のトップとなっています。

物価上昇は、29カ国の平均で10人に4人(42%)の人々が懸念しています。

イプソスが毎月実施している「世界が懸念していること調査(What Worries the World)」では、一般の市民が現在最も重要な社会問題や政治問題は何であると考えているのかを調査し、最新のスコアとその背景を10年分のデータをもとに探ります。今ウェーブは、2023年2月17日~3月3日に実施されました。

 

世界の懸念トップ 5 - 2023 年 3 月

主な調査結果

  • 今月もインフレがトップの懸念事項で、年間を通じて最大の懸念事項となった。しかし先月からは1ポイント低下し平均で42%。
  • アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、コロンビア、フランス、ドイツ、 英国、インド、ポーランド、シンガポール、トルコ、米国の12カ国が物価上昇を最大の懸念事項としている。
  • 調査対象国全体では、インフレに次いで、貧困/社会的不平等(31%)、犯罪と暴力(29%)、失業(28%)、金融/政治腐敗(26%)が続く。これらが世界の懸念事項のトップ5となっている。
  • 新型コロナウイルスに対する懸念は、2020年4月に調査対象に追加されて以来、最も低い水準にある。
  • 新型コロナウイルスは18位中16位に後退し、10人に1人以下(6%)が懸念事項としており、2月から3ポイント減少した。
  • 10人に6人強(62%)が自国は間違った方向に向かっていると回答し、これは2月と変わらず、アルゼンチンでは87%、南アフリカでは86%に上昇した。
  • アルゼンチンは今月、自国の経済状況が「良い」と考える人が2ポイント上昇し(9%)、最も悲観的な見通しを持つ国としての20ヶ月の記録を打ち切った。そして現在は日本が経済状況についての評価において最も悲観的な見通しを持つ国となっている。

インフレ

インフレを懸念する上位 5 カ国 - 2 月

 

世界の10人に4人以上(42%)が、インフレは自国に影響を及ぼす最大の懸念事項の1つであると回答しています(1ポイント減)。過去1年間ずっと懸念事項のトップです。

アルゼンチン(66%)は、再びインフレを最も懸念する国となっています。しかし懸念はわずかに低下し、2月の70%から4ポイント低下しました。

2 月には、コロンビア、フランス、オーストラリアの3カ国で、インフレに対する懸念が初めて2人に1人を上回りました。3月も、フランス(54%、+4ポイント)とオーストラリア(52%、+2ポイント)の生活費に対する懸念は上昇を続けています。一方、コロンビアはわずかに減少しています(47%、-4ポイント)。

ハンガリー(49%)、米国(47%)、韓国(38%)、イタリア(31%)は先月過去最高の懸念レベルを記録しましたが、その後懸念は低下しています。特にハンガリーでは9ポイント減少しています。

今月は、12カ国(アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、コロンビア、フランス、ドイツ、英国、インド、ポーランド、シンガポール、トルコ、米国)が、インフレを唯一最大の懸念事項としています。ベルギー(貧困/社会的不平等)、ハンガリー(医療)、韓国(失業)がこのグループから抜け、先月より3カ国少なくなっています。

気候変動

6 人に 1 人 (15%) が、気候変動は自国に影響を与える最大の問題の 1 つだと回答しています。本調査の18の懸念事項のうち、8位にとどまっています。

フランスは現在、気候変動を最も懸念している国であり、29%が問題視しています。今月は5ポイント上昇し、インフレに次いで2番目に大きな懸念事項となりました。フランスが気候変動について最も懸念している国になったのは、 2022 年 9 月にトップになって以来、2度目となります。

また、ベルギーは2023年2月と比較して4ポイント上昇し、気候変動を最も懸念する上位5カ国に入りました。

新型コロナウイルス

今月は、 2020 年 4 月に「世界が懸念していること調査(What Worries the World)」の項目に追加されて以来、新型コロナウイルスに対する懸念が最も低くなりました。パンデミックに対する懸念は2カ月連続で最低値を更新しています。現在18の懸念事項のうち、過激派の台頭とソーシャルプログラムの維持の間で16位に位置しています。

2月以降3ポイント低下し、新型コロナウイルスを懸念しているのはわずか6%です。昨年の今頃は、パンデミックに対する懸念は24%でした。

先月はアジア太平洋地域でかなり高い懸念が見られましたが、今月はすべて低下しています。日本の懸念(18%)は、新型コロナウイルスが4番目に高い懸念であった先月から急激に低下し、13ポイント減少しています。タイ(10%)は9ポイント、マレーシア(14%)は5ポイント低下しました。

新型コロナウイルスに対する懸念は数ヶ月連続で最低値を更新していますが、人々はパンデミックが過ぎ去ったと感じているのでしょうか?イプソスのパブリックアフェアーズ部門グローバル責任者であるDarrell Brickerは、その可能性についてこう述べています。「一部の医療専門家や長期的な健康被害に苦しむ人々にとっては新型コロナウイルスのパンデミックは終わっていないかもしれないが、イプソスの『世界が懸念していること調査 (What Worries the World)』の結果は、世界の人々の目には終わっていると映っている。

感染症が治まったのか、恐怖への疲弊なのか、それとも新型コロナウイルス以前の生活に戻りたいという強い願望なのか、あるいはその3つの要素が重なっているのか、とにかく世界は前進しているのだ。では、世界はどこへ向かっているのだろうか?新たな 「ポリクライシス」に移行したと言う人もいる。しかし、はたしてそうなのだろうか?我々のデータはこの疑問に対していくつかの明確な答えを示唆している。新型コロナウイルスがかつてのように人々の意識を支配することがなくなったのは事実だが、ポリクライシスが示唆するように人々は複数の危機へと移行したわけではない。むしろ、一つの問題を別の問題に置き換えているのである。新型コロナウイルスはインフレ、あるいは実社会では生活費と呼ばれるものに取って代わられた。この置き換えは2021年3月に始まり、今日まで着実に続いている。

貧困、不平等、気候など、世間一般の課題については、パンデミックの時にどれだけ変わらず、そしてそれ以降もほとんど変化がないことが印象的である。一部の特定の国においてはそれらの問題が支配的になっているが、かつての新型コロナウイルスや現在のインフレのような世界的なコンセンサスとなる危機ではない。」

貧困と社会的不平等

29 カ国で約 3 人に 1 人(31%)が、自分の住む地域で最も大きな課題の 1 つとして貧困/社会的不平等を選んでいます。3 月は、前月のスコアよりわずかに 1 ポイント低下しています。

不平等は、2022年4月にインフレが追い抜いて以来、毎月18の懸念事項の中で2位となっています。

最も懸念している3カ国は タイ、ハンガリー、インドネシアです。しかし、これらの国はいずれも不平等を最大の懸念事項として選んでいません。ブラジル、ベルギー、オランダ、そして日本で、不平等が最大の懸念事項となっています。先月は「課税水準」が日本のトップでしたが、3月は「不平等」への懸念が2ポイント上昇し、トップとなりました。

経済への満足

29カ国の平均で、3分の1の人が自国の現在の経済状況を「良い」としており、先月から1ポイント減少しています。トップはシンガポールで、77%の人が自国の経済について肯定的です。

先月から、ハンガリー(+7ポイントで19%)、チリ(+6ポイントで23%)、イタリア(+4ポイントで27%)で経済状況に関する「良い」スコアが最も上昇しました。

一方、オーストラリアは前月比9ポイント減と、3番目に大きな落ち込みを示しました。スペインとインドがそれに続き、今月はともに5ポイントの低下となりました。

また、アルゼンチンのスコアが上昇(+2ポイントで 9%に)し、日本のスコアがわずかに低下(-1ポイントで 9%に)したことで、アルゼンチンは20ヶ月連続で最も経済的に悲観的な国であった結果に終止符を打ちました。


本調査について

イプソスの「世界が懸念していること What Worries the World調査」は、世界29カ国の市民が現在最も重要な社会問題や政治問題は何であると考えているのかを調査し、最新のスコアとその背景を10年を超えるデータをもとに探ります。

2022 年 12 月 22 日~ 2023 年 1 月 6 日に、カナダ、イスラエル、マレーシア、南アフリカ、トルコ、米国の18~74歳、インドネシア、タイの20~74歳、その他21カ国では16~74歳の成人を対象に、20,570人のオンライン調査を実施しました。

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