死亡原因に関する誤解:なぜ病気が少なく、その他の原因が多いと捉えられている?

平均すると、人々は心臓病による死亡を3倍も過小評価しています。

Firemen | do you know what are the biggest killers in your community, and how likely people are to die from them? | Ipsosベンジャミン・フランクリンは「この世界では確実と言えるものはない。死と税金以外には。」と書いたことで有名です。そして、死は確かなものですが、イプソスの最新調査によると、死の原因については多くの混乱があるようです。

あなたは日本の最大の死因が何であるか知っていますか?また、その原因で死亡する可能性はどれくらいか知っていますか?

世界32か国で16,000人を対象に実施した 調査 では、平均すると心臓病やがん、神経疾患などによる死亡者数を過小評価する傾向があります。しかし自動車事故、暴力、自殺、薬物乱用、テロといったほかの原因による死亡者数を過大評価する傾向があります。

心血管疾患は世界的に主要な死因であり、毎年およそ32%の人々がこれにより死亡していると健康測定評価研究所(Institute for Health Metrics and Evaluation, IHME)が報告しています。しかし、調査対象となったすべての国での死亡原因に関する推測の平均では、心血管疾患はわずか11%でした。

がんは世界で2番目に大きな死因で、毎年およそ24%のがこれにより死亡していますが、推測の平均では15%でした。

死亡原因の9%はパーキンソン病や認知症などの神経疾患によるものですが、推測は約半分の5%でした。

一方で、人々は毎年の死亡者の10%が交通事故によるものだと考えていますが、実際にはわずか2%です。また、8%は暴力、薬物やアルコール乱用によるものと考えていますが、実際には1%にすぎません。

Causes of death around the world | Ipsos

専門家によると、メディアが死についてどのように報道しているか、私たちが利用できる死の生き生きとした場面のドラマ化、そしてそのような情報の最新性 (より顕著で重要になるかもしれない) が組み合わさって、私たちの死についての考え方に影響を与えていると言います。

死に対する見方に影響を与えるもの

イプソス アメリカの行動科学センター長を務めるナミカ・サガラによると、自動車事故、銃による暴力、テロによる死亡は、非常に劇的なものなので人々の記憶により強く残る傾向があると言います。

「こういったことはすぐに頭に浮かんできて、もっと頻繁に起こるのではないかと人々はかんがえてしまう」とサガラは言います。「これは可用性バイアスに関連している。」

米国スキッドモア大学の心理学教授であるシェルドン・ソロモン氏は、私たちは目立った出来事の頻度を過大評価する傾向があると付け加えて、これを支持しました。

「私たちはテロリストに殺されたり飛行機の墜落事故で死ぬよりも風呂場で転倒して死ぬことの方が多いのだが、おそらく誰かが風呂場で転倒して死ぬというニュースは見ないだろう」とソロモン教授は言います。

「さらに、衝突、テロ、暴力は急なことであるのに対し、高血圧やがんは時間の経過とともによりゆっくりと発生するため、その頻度を過小評価してしまう傾向がある。」

調査対象者の3分の1以上が、事故など交通によるもの(38%)、殺人などの暴力(37%)、テロや紛争(35%)などをニュースで最も頻繁に目にすると答え、14の死因の中で最も高い割合を占めました。しかし、回答した人が個人的に何等かの影響を受けた死因の上位3位は、がん(70%)、心臓病(60%)、糖尿病や腎臓病(58%)でした。

米国保健指標評価研究所(Institute for Health Metrics and Evaluation, IHME)の健康指標科学の教授、テオ・ボス博士も、それぞれの原因による死亡の平均年齢も人々の推測に影響を及ぼすと指摘しています。

「非常に過小評価されているのは、高齢層の死亡原因となることが多いもの (癌、心血管疾患、慢性腎疾患) であり、若年層の死亡原因となることが多いもの (交通、暴力、自殺、薬物、HIV/エイズ) は過大評価されている。」とグローバル疾病負荷(Global Burden Desease, GBD)研究チームの主要メンバーでもあるボス博士は述べましたた。

「高齢層は心血管疾患、がん、糖尿病、慢性腎臓病を死因のトップとして、より正確に数字上で報告できるのではないかと思う。」

年代別にみると、55歳以上から64歳まではがんや心臓病を死因として挙げる割合が高く、24歳以下は自殺やテロを死因として挙げる割合が高い。

Countries least accurate on causes of death | Ipsos

ソロモン教授は、人々が死についてどのように考えるかということには精神力学的な要素もあると付け加えていますが、それは人々の誤解の説明になるかもしれません。なぜなら、人々の自分自身に対する見方は、悪い結果の可能性を最小限にするために偏るからです。

「例えば感情的な人は若くして死ぬと言うと、自分は感情的でないと自分を評価する。感情的な人の方が長生きすると言うと、自分は感情的だと評価する」とソロモン教授は言います。

「心臓発作とがんは、少なくとも部分的にでもライフスタイルの選択の結果として個人に起こることを考えると、私の推測では、自分たちに与える直接的な脅威を減らすために、これらの問題が起こる率を過小評価している。」

リスクを理解しないことの問題点

では、人がリスクや死因を評価するのが苦手であっても問題ないのでしょうか。

専門家によると、死のリスクについての誤解は、人々がライフスタイルの選択に無頓着であることよりもはるかに大きな影響を及ぼし、それを理解することでより良い決断を下すことができるとのことです。

『死の不安と宗教的信念(Death Anxiety and Religious Belief)』の共著者でもあるイギリスのコベントリー大学のジョナサン・ジョン助教授によると、影響の大きさを知ることは、チーズバーガーをたくさん食べるのに飛行機に乗ることは拒否するといった人の行動を変えるのに役立つといいます。

「リスクを人々に説明する上で最も役に立つのは、比較することだと思う。例えば飛行機は車を運転するよりも安全だ、あるいは心臓発作で死ぬ人はサメに襲われるよりもずっと多いというようなことだ」 と話しました。「絶対的な大きさを表現するよりも、そういうことの方が役に立つと思う。」

サガラも同意見で、政府は人々の「理不尽さ」を感じている心に訴える、より直感的なメッセージを発信できると付け加えました。

「人々は落下するココナツよりもサメの攻撃を恐れているが、毎年サメの攻撃よりも落下するココナツで死ぬ人の方が多い」とサガラは言います。「この種のメッセージは、落下するココナツは実際には危険であり、人々はおそらくサメの攻撃に過剰に反応しているということを伝えることができる。」

しかしソロモン教授は、一部の政府では、人々が信じているほど多くの人々を死に至らせていない死因を恐れるようにさせていると指摘します。

「理想的には、完全で政治と無関係な世界では、より効率的かつ効果的に資源を配分するために、死の原因を正確に把握することができる」とソロモン教授は言います。

「しかしドナルド・トランプの世界にとって、権力を維持するためには移民やテロリストのような外敵を人々に恐れさせ続けることが不可欠であり、政府が実際の健康上のリスクについて正確な情報を伝えることはほとんどあり得ない。常識が広まり、より良い医療と予防医学に焦点が当てられない限りは。」

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