世界難民の日 2023:2022 年以降減少しているが、依然として難民への支持は高い

戦争や迫害から逃れるために、他国(調査対象者自身の国を含む)に避難することができるという考えに、調査対象29カ国の平均で74%が同意しています。

調査結果からわかること:

  • 調査対象国の平均で4人に3人が、戦争や迫害から逃れる人々の避難を支持している。さらに、3 分の 1 は過去 12 か月の間に難民支援のために個人的に行動を起こしたと回答。
  • 難民を受け入れることに対する人々の支持は世界的に高いままだが、多くの国で2022年よりも肯定的な意見は減少しており、ウクライナ紛争による難民に対するハロー効果が薄れている可能性を示唆している。
  • 人々は現在自国に滞在している難民を支援することには肯定的で、10人に8人以上がこれを支持しているが、さらなる難民を受け入れるかどうかについては意見が分かれている。
  • これまでと同様、人々の最大の懸念事項は、難民であると主張する人々が実際に本物であるかどうかということである。 またほとんどの難民が受け入れ先の国にうまく溶け込めるかどうかについても若干の疑問がある。5人に3人は、亡命希望者に就労を認めることは社会に溶け込むのに役立つと考えているが、半数は亡命申請をしていない人々を引き寄せることになりかねないと考えている。
  • このような状況の結果、亡命希望者に対する政策に関する見解はさらに分かれている。しかし、申請が認められるまで亡命希望者の移動を制限し、程度は低いが亡命申請者を第三国に送るという政策には、反対よりも賛成の方が多い。

6月20日の世界難民の日に先駆けてイプソスが発表した調査によると、調査対象29カ国の平均で74%の人が、戦争や迫害から逃れるために他国(調査対象者自身の国を含む)へ避難することが出来るようにすべきである、という考えに同意していることが明らかになりました。 一方5 人に 1 人 (20%) はこの意見に反対しています。 2022年には調査対象国のほとんどで難民に対する態度がより好意的になり、ウクライナ危機によって難民に対する人々の寛容さが増し、パンデミックによって生じた懸念が一部解消されたことが示唆されました。 2023 年には、一部の肯定的な動きが逆転しています。しかしほとんどの場合、意識は新型コロナウイルスのパンデミック以前と同じか、それ以上に肯定的です。

本調査は、2023年4月21日~5月5日にかけて21,816人を対象にオンラインで行われたもので、調査対象国の大多数が避難場所を提供する方針に同意しており、最も支持が高かったのはニュージーランド(87%)、スペイン(85%)、英国、スウェーデン、カナダ(いずれも84%)で、最も低かったのは韓国(55%)、シンガポール(55%)、そしてトルコ(61%)であることがわかりました。

さらに、3 分の 1 の人 (33%) が、過去 12 か月の間に、難民支援のために資金や物資を寄付する (16%)、難民支援のためのソーシャル メディアへの投稿 (11%) 、そして、難民を支援する政府関係者への連絡や署名、難民支援のためのボランティア活動(各7%)など、難民を支援するために個人的な行動を起こしたことが明らかになりました。インドネシア、ポーランド、タイの人々は、何らかの行動を起こしたことがある人が最も多くなっています(それぞれ62%、58%、52%)。

この調査の背景には、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の発表によると、2022年末時点で強制避難民の数が過去最高の1億840万人に達したことが挙げられます。これは前年比1,910万人増で過去最大の増加となっており、その数は増加を続けており、UNHCRは2023年5月の世界総数を1億1,000万人と推定しています。

人々は現在自国にいる難民の残留を認めることを支持

5人に4人(81%)が、現在自国に住んでいる難民の滞在を認めるべきだと考えていますが、今後については、さらに多くの難民を受け入れるべきだと考える41%と、これ以上難民を受け入れるべきではないと考える40%とで均等に分かれています。 5人に1人(19%)が、現在国内にいる難民をは強制送還し、今後は受け入れを認めるべきではないと考えています。

ニュージーランド(68%)、スペイン(65%)、ブラジル(63%)の人々は、自国へのより多くの難民の受け入れを最も支持しているのに対し、タイ(56%)、ペルー(54%)、韓国(54%)の人々は、現在自国にいる難民の滞在を最も支持していますが、さらなる難民の受け入れには否定的です

トルコとマレーシアでは半数以上の人が、現在国内にいる難民の強制送還を支持し、これ以上の難民は受け入れないことを支持しています(それぞれ59%、52%)。

難民を受け入れる理由として人々に最も共感されているのは、人道的義務である(42%)、というものです。さらに13% は国際法に基づく法的義務、13% は必要なスキルを備えた難民を受け入れて経済を活性化するため、8% は多様性と多文化主義を促進するためとなっています。

自国の難民は厚遇されていると思う人が過半数

世界的に見ると、難民が自国で厚遇されていると考える人が過半数(60%)ですが、冷遇されていると考える人も 4分の1(23%)います。インドネシア (89%) とポーランド (80%) の人々は、自国での難民の扱いが良いと考える人が最も多く、南アフリカ (45%) とイタリア (38%)では、難民の扱いが悪いと考える人が最も多くなっています。

難民の自国への合法的な入国ルートが十分に確保されているかどうかについて、国民の意見は分かれる

3分の1以上(35%)は、難民が違法に入国することを避けるために、すでに十分な合法的な入国ルートがあると考えていますが、 31%はより合法的な入国ルートを提供すべきだと考えています。 6 人に 1 人 (14%) は、合法的なルートはあってはならないと考えています。

難民が不法入国する必要がない、つまり合法的な入国ルートが十分にあると考える人が最も多いのは、インドネシア(47%)とアルゼンチン(44%)です。ブラジル(53%)、英国(47%)、タイ(45%)では、難民の合法的な入国ルートを増やすことへの支持が最も高くなっています。トルコではほぼ半数の人が難民の合法的な入国ルートを設けるべきではないと考えており(46%)、次いでマレーシア(28%)となっています。

難民に対する一部の懐疑論は根強く、亡命希望者を抑止するための政策に反対する人よりも支持する人が多い

これまでと同様に、難民に対する懐疑的な見方も根強く残っています。例えば以下のようなものです:

  • ほぼ5人に3人(58%)が、難民として自国に入国しようとする外国人の多くは、経済的理由や福祉サービスを利用するために入国しているという意見に同意している(33%は反対)。
  • 5人に3人(59%)が、亡命希望者に就労を許可することは言語を学び社会に溶け込むのに役立つという意見に同意しているが、半数(48%)は、本物の亡命申請をしていない人々を自国に引き寄せることになりかねないと考えている(18%は反対)。
  • 半数(49%)はほとんどの難民が新しい社会にうまく溶け込めると考えているが、43%はそう思わない。
  • 半数(49%)は難民に対して国境を完全に閉鎖することに反対する一方、43%は同意しており、現時点で自国はこれ以上難民を受け入れることはできないと考えている。

こうした見解の対立は、亡命希望者の抑止を目的とした政策に対する人々の支持の度合いにも反映されています。 5人に2人(42%)は、申請が処理されるまで亡命希望者の移動を制限することを支持しており、そのような政策に反対する割合(19%)の2倍以上です。 10 人に 3 人 (31%) は申請者を別の受入国に送ることを支持しており、4 分の 1 (26%) は反対しています。

これら両方の政策に対する支持率はトルコで最も高く(それぞれ55%と53%)、スウェーデンで最も低くなっています(それぞれ28%と43%)。オーストラリアでは、亡命申請者がパプアニューギニアのマヌス島と南太平洋の島国ナウルの沖合収容施設に移送されていますが、この政策について国民の意見は分かれており、支持が32%、反対は28%、支持も反対もしないは32%となっています 。政府が亡命希望者をルワンダに送る計画を立てている英国でも国民の意見は分かれており、37%が政策に反対、35%が支持、22%が支持も反対もしないとなっています。

難民の地域への貢献度についても人々の意見は分かれており、多くの人は難民は特に変化をもたらしていない、あるいはもたらすことはないと考えている

難民の全体的な貢献度については意見が分かれており、難民が自国に積極的に貢献しているという意見に45%が賛成、44%が反対しています。賛成する意見が最も多かったのはニュージーランド(70%)、オーストラリア(66%)、カナダ(64%)で、反対の意見がが最も多かったのはトルコ(75%)、韓国(65%)、ハンガリーとマレーシア(それぞれ62%)でした。

難民が地域のサービスや生活面に与える影響について尋ねたところ、約半数は難民がこれらに特に変化をもたらさないと考える傾向にあります。影響があると考える場合、ポジティブなものよりもネガティブなものが多い傾向があります。難民の影響により、次のようなことが改善された、または改善されるだろうと考える人が多いようです:

  • 文化/芸術 (31% が改善、51%は変化なし、18%は 悪化)。
  • 観光業 (25%が 改善、52%は 変化なし、23%が 悪化)。

難民により悪影響を受けた、または受けると考えられる地域のサービスや生活面は以下の通りです:

  • 犯罪レベル (48%が 悪化、39%は変化なし、14%が 改善)。
  • 住宅の空き状況 (44%が 悪化、39%は変化なし、17%が改善)。
  • 地域の衛生面 (37%が悪化、45%は変化なし、18%が改善)。

イプソス英国のパブリック・アフェアーズ担当マネージング・ディレクターであるTrinh Tu、「この世界難民の日に、我々の世界的な調査は難民に対する人々の支持が依然として高いことを示しました。しかし2022年以降、ほとんどの難民が正規の難民ではないという懸念は根強く、難民が上手く溶け込めるようにという願いとは相反する政策を支持する人がいることも明らかです。昨年、国際的避難民の数が初めて1億人を超え、さらに増加している中、政府やメディアが率先して難民に関する誤った情報やネガティブなステレオタイプに対抗し、より思いやりのある包括的な社会への道を切り開く必要があります。難民の生活再建と受け入れる側の社会に貢献できるよう支援する長期的なソリューションです。」


本調査について

これは、イプソスが 2023 年 4 月 21 日金曜日~5 月 5 日金曜日にかけて、 イプソスのグローバルアドバイザーオンライン調査プラットフォームと、インドでは IndiaBus プラットフォームを使用し 29 カ国で実施した調査の結果です。今回の調査では、インドの18歳以上、カナダ、マレーシア、ニュージーランド、南アフリカ、トルコ、米国の18~74歳、タイの20~74歳、インドネシアとシンガポールの21~74歳、その他の国では16~74歳の21,816人を対象としました。

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