Ipsos Views:第1回 コロナ禍で加速するステークホルダー資本主義の影響
第1回 「コロナ禍で加速するステークホルダー資本主義の影響」
新型コロナウィルスの世界大流行を受け、ステークホルダー資本主義(企業は株主の利益を第一とする「株主資本主義」でなく、従業員や取引先、顧客、地域社会などあらゆるステークホルダーの利益に配慮すべきという考え方)が加速しています。
これは以前からよく耳にするCSR「企業の社会的責任、Corporate Social Responsibility」が、コロナ禍で社会貢献という形でより企業に求められるようになったからだろうと、肌感覚でお分かりになる方も多いと思います。
では、実際企業はどれだけコロナ禍において社会貢献に投資するようになったのでしょうか。
以下は米国企業のコロナ禍での社会貢献を評価したものですが、時価総額が米国市場の約92%を占めるRussel1000構成企業全体でもこのように高い貢献率が見られ、すべてのステークホルダーに向け共有価値を創造すべきとする共同声明に署名したBRT(ビジネスラウンドテーブル)のメンバー企業はさらに高い貢献度を示しています。
日本国内でも、SDGsという言葉を耳にする機会が増えています。SDGs(Sustainable Development Goals)が国連で採択されたのは2015年です。5年後の昨年半ばあたりからESGやサステナビリティといった言葉とともに頻繁に耳にするようになりました。国内でも企業が株主資本主義からステークホルダー資本主義へ向けて加速するきっかけになったのがパンデミックであったと言えるでしょう。
この「ステークホルダー資本主義の加速」の影響が、イプソスの調査結果にも表れています。世界各所で、人権、医療、救援などの分野で際立つ企業が高い評価を受けており、相対的にそうでない企業の評価を下げるという調査結果が散見されています。産業やカテゴリによっても異なりますが、人々のマインドシェアがパンデミックで占められマインドスペースが限られる中では、際立つ以前に存在感を維持することさえも難しくなっているようです。
企業やブランドが社会との絆を深め、限られたマインドスペースをブレイクスルーするために欠かせないのは、「その企業にしかできないことをしている」という印象です。企業独自のミッションやパーパスを専門分野で体現する真実性が、これまで以上に重要になっています。