イプソス平等指数2024:Z世代男性の4分の1以上が平等を推進する取り組みは行き過ぎていると考えている
主な調査結果:
- 不平等は世界中の多くの国、特にラテンアメリカにとって大きな懸念事項となっている。自国の不平等を最も懸念している 7カ国のうち6カ国がこの地域に属する。
- 不平等の解消に責任を負うべきなのは誰かという点では、政府を上げる声が多い。身体障がい者は、現在不当な扱いを受けていると見られる傾向が最も高いグループである。
- 若者は無力感に苛まれている。29カ国で、ベビーブーマー世代の49%が自国での成功は主に本人の強みと努力によって決まると考えている一方で、Z世代ではこの数字は38%となっている。
- 若者は差別により敏感である。Z世代とミレニアル世代は、X世代とベビーブーマー世代よりも、不平等が自国の重要な問題であると考える傾向が強い。また若い世代ほど自身のジェンダーが現在最も差別に直面しているグループの 1 つだと考える傾向が強い。
- Z世代の男性は、すでに十分な取り組みがなされていると考える傾向が最も強い。29カ国平均で、Z世代男性の27%が、あらゆる人々に対し平等を推進する取り組みは行き過ぎていると回答しており、これはベビーブーマー世代の男性よりも6ポイント、Z世代女性よりも11ポイント高くなっている。
- Z世代の女性は、Z世代の男性とは異なる視点を持っている。彼女たちは、少数民族、トランスジェンダーやノンバイナリーの人々、移民が、現在自国で最も不平等な扱いを受けていると回答する傾向が年配の世代より高い。しかしZ世代の男性は、上の世代より懸念を抱いてはいない。
実力主義は時代遅れ?
29カ国の平均では、自国での成功は個人の強みと努力にかかっていると回答した人は42%でした(+1ポイントvs 2023)。一方で、成功の可能性はほとんどの場合自分ではコントロールできない要因によって決まると回答した人は30%でした(-1ポイントvs 2023)。
29カ国の平均で、Z世代(1996~2012年生まれの成人)は、ベビーブーマー世代(1945~1965年生まれ)に比べて、自分たちが実力主義社会に生きているという意見に同意する傾向が11ポイント低く、2023年と比較するとその差は3ポイント拡大しています。
アルゼンチンは、調査対象国の中で唯一、成功は個人の強みと努力によって決まると信じる傾向が年配者より若者のほうがはるかに高い国となっています。
調査対象29カ国すべてにおいて、公平な社会とは、皆が同質の生活を送ることができる社会(19% が同意)よりも、皆が同じ機会を与えられる社会(47% が同意)であると考える人の方が多い結果となりました。
この見解は、メキシコ(57%)、韓国(56%)、スウェーデン、ポーランド(ともに55%)で特に多く見られます。
公平な社会とは、皆が同質の生活を送ることができる社会だと回答したのは、2023年比で7%増のトルコ(30%)が最多でした。ベルギー(25%)とフランス(24%)がこれに続きます。
不平等への危機感
29カ国で過半数(52%)が、不平等は自国が直面しているただ1つの最も重要な問題、または最も重要な問題の1つであると回答しており、2023年と比べて変化はありません。インドネシアでは、この割合は10人に8人近く(79%)に上っています。
ブラジルではほぼ4人に1人(24%)が、不平等が自国が直面しているただ1つの最も重要な問題であると回答しており、これは29カ国の平均である10%を上回っています。2位のインド(18%)を除き、不平等がただ1つの最も重要な問題であると答える傾向が高い上位7カ国はすべてラテンアメリカに属しています。
ブラジル人のほぼ4人に1人(24%)が、不平等が自国が直面しているただ1つの最も重要な問題であると答えている。
平等を推進するための取り組みは十分に行われているのか?
全体として、人々はまだやるべきことがたくさんあると考えています。29カ国のほぼ2人に1人 (47%) が、あらゆる人々に対する平等を推進するために、さらに努力すべきであると回答する一方で、5人に1人 (19%) はやりすぎだと回答しています。
平等を推進する取り組みが行き過ぎているという見方は、アングロスフィア(英語圏)でより一般的です。ポーランドとスウェーデンを除くと、これに同意する傾向が高い国はすべて英語圏の国です。米国 (29%)、ポーランド、カナダ (ともに 27%) がトップ3を占めています。
ポーランドのみが、取り組みが行き過ぎている(27%)と答えた人が、さらなる取り組みが必要である(21%)と答えた人を上回っています。
Z世代の男性
この調査では、自国での取り組みが行き過ぎていると考えるZ世代男性が急増していることが明らかになりました。29カ国平均では、すべての人々に対して平等を推進する取り組みが行き過ぎていると答えた人は19%でしたが、Z世代の男性ではこの割合は27%に上ります。
最も差別を受けているのは誰か?
29カ国全体で、現在最も不平等または不公平な扱いを受けているグループとみなされているのは身体障がい者です(33%が同意)。これに続いて女性(26%)、高齢者、メンタルヘルスに不調を抱える人(ともに24%)が続きます。
女性の10人に3人(31%)は、現在最も差別を受けているのは女性であると答えている一方で、男性では10人に2人(20%)に減少しています。とはいえ、自国で女性が不当な扱いを受けていると回答する割合は、男性(11%)の2倍です。
一般的に若者は、年配者よりも、女性(Z世代では31%、ベビーブーマーでは23%)、レズビアン、ゲイ男性、バイセクシャル(28% vs 20%)、ニューロダイバーシティを持つ人々(23% vs 17%)、特定の宗教の人々(15% vs 9%)が直面する差別を指摘する傾向が高くなります。またZ世代は、同性の年配者と比較して、自分たちの性別が不平等な扱いを受けていると考える傾向が高いようです。
Z世代内でも男女差が見られます。Z世代女性の35%は、女性自身が現在自国で最も不当な扱いを受けているグループの一つであると考えていますが、Z世代男性では25%で、10ポイントの差があります。
同様に、身体障がい者に関しても、Z世代女性の35%とZ世代男性の25% が同様の回答をしており、またトランスジェンダーやノンバイナリーの人々が最も不平等な扱いを受けていると回答したのは、Z世代女性の 31% とZ世代男性の21% でした。
全体的に、Z世代の女性は 29カ国の平均とは非常に異なる考え方を持っていることがわかります。一方、Z世代の男性の考え方は、依然として年上の世代に近いものとなっています。
これは、Z世代の男性とZ世代の女性の間で拡大しつつある相違の一部です。Z世代の分析の詳細については、 イプソス ジェネレーションレポート 2024をご覧ください。
政府に行動を求める
政府は、不平等を低減する責任を最も負っているとみなされています。調査対象となった 29カ国すべてにおいて、50% 以上が自国の政府が行動を起こす第一義的な責任を負うべきだと回答しています。
これは米国(51%)では最も低く、29カ国平均の67%と比較して、インドネシア(82%)、ペルー、韓国(ともに77%)では最も高くなっています。
上の世代は若者よりも、自国の政府が主な責任を負うべきだと考える傾向が強くなっています。ベビーブーマー世代の10人に7人(71%)とX世代の69%は政府が行動を起こすべきだと答えていますが、ミレニアル世代では66%、Z世代では63%となっています。
29カ国の4分の1の人が、不平等に対処するのはメディア(26%)と雇用主(24%)の責任であると考えています。
一方、個人が主な責任を負うべきであるという考え方は、英語圏で特に広く普及しています。
米国、オーストラリア(両国とも 31%)、アイルランド(29%)、英国(28%)、カナダ(27%)では約 10 人に 3 人がこの見解を抱いており、29 カ国平均は 21% です。
本調査について
イプソスは、2024年2月23日~3月8日に以下の国で21,759人を対象にオンラインでインタビューを実施しました。代表性を確保するためにクォータが設定され、データは各国の既知の人口プロフィールに重みづけされています。サンプルは、オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、英国、イタリア、日本、メキシコ、スペイン、米国の各1,000人、アルゼンチン、ベルギー、チリ、コロンビア、ハンガリー、インドネシア、アイルランド、マレーシア、オランダ、ペルー、ポーランド、シンガポール、南アフリカ、韓国、スウェーデン、タイ、トルコの各500人で構成されています。インドのサンプルは約2,200人で、そのうち約1,800人が対面インタビュー、400人がオンラインインタビューとなっています。