日本のLGBT+の割合は約5%、世界26か国の最新LGBT+調査レポート

近年、日本におけるLGBTの認知度や存在感は、着実に拡大しています。伝統的な価値観が変化する中、企業、メディア、様々なところで多様性が認められるようになり、特に若い世代を中心に、LGBTに対する理解が深まっています。今回はイプソスが実施した世界26か国調査「LGBT+プライドレポート」から国別・世代別のLGBTの割合を最新データを交えて解説します。

LGBTとは

LGBT(エルジービーティー)は、レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の頭文字を組み合わせた略称です。これらは性的指向や性自認の多様性を表す代表的な言葉です。LGBTは最も基本的な頭字語で、主要なセクシュアル・マイノリティのグループを表しています。

名称意味詳細

Lesbian
(レズビアン) 

女性同性愛者女性に性的・恋愛的に惹かれる女性のこと

Gay
(ゲイ)    

男性同性愛者男性に性的・恋愛的に惹かれる男性のこと

Bisexual
(バイセクシュアル) 

両性愛者性にも女性にも性的・恋愛的に惹かれる人のこと

Transgender
(トランスジェンダー)   

性別移行者生まれた時に割り当てられた性別と異なる性自認を持つ人


 

LGBTQとは

LGBTに加えて、以下の頭文字Qを加えた略称です。

  • Queer(クィア)

    従来の性別や性的指向の枠に当てはまらない、または当てはめたくない人々を包括的に表す言葉です。
     

  • Questioning(クエスチョニング)

    自身のセクシュアリティや性自認について探索中または不確かな人を指します。

 

LGBT+、LGBTQ+とは

「+」が加わることで上記のカテゴリーに含まれない多様なセクシャリティや性自認を持つ人々を包括的に表現するものです。

  • インターセックス(性分化疾患を持つ人)
  • アセクシュアル(無性愛者)
  • パンセクシュアル(全性愛者)
  • ノンバイナリー(男女の二元論にとらわれない性自認を持つ人)

などが含まれます。LGBT+は、LGBTをより包括的にしようとする初期の試みとして使用されました。その後、クィアコミュニティの可視化の重要性が認識され、LGBTQ+という表現が広まりました。

 

世界26か国のLGBT+の割合は約11%:2024年最新調査結果


世界26か国の成人18,515人に実施した「イプソスLGBT+Pride2024」の調査では、世界のLGBT+の割合の平均は約11%、日本の割合は5%で調査国の中で最も少ない結果となりました。

 

1位

オランダ

17%

2位

タイ

15%

3位

ブラジル

14%

4位

カナダ

13%

4位

英国

13%

6位

オーストラリア

12%

6位

米国

12%

6位

チリ

12%

6位

ドイツ

12%

10位

ベルギー

11%

10位

スペイン

11%

10位

スウェーデン

11%

13位

アルゼンチン

10%

13位

コロンビア

10%

13位

フランス

10%

13位

ポーランド

10%

17位

トルコ

9%

17位

アイルランド

9%

19位

イタリア

7%

19位

メキシコ

7%

21位

シンガポール

6%

22位

ハンガリー

5%

22位

日本

5%

22位

ペルー

5%

22位

南アフリカ

5%

22位

韓国

5%

出典:イプソス「LGBT+プライドレポート 2024」詳細はこちらからダウンロードください

1位はオランダの17%、2位はタイの15%、ブラジルの14%が続きます。上位国にはどのような特徴があるのでしょうか。

1位オランダ、LGBT+の割合は17%

2001年に同性婚を世界で初めて合法化した国として知られています。LGBTの権利に関して長きにわたり進歩的な政策を実施しています。また、社会的に寛容で開放的な文化があるためLGBT+の可視性が高いです。

2位タイ、LGBT+の割合は15%

「第三の性」としてのカトゥーイ(トランスジェンダー女性)の文化的受容があります。観光産業においてLGBT+フレンドリーな環境を積極的に推進しています。仏教の影響で、性的多様性に対する寛容さがあると言われています。

3位ブラジル、LGBT+の割合は14%

大規模なLGBTプライドパレードで知られ、サンパウロのパレードは世界最大規模です。また、多様性を尊重する文化があり、LGBTコミュニティの可視性が高いです。同性婚が2013年に合法化され、法的な保護も進んでいます。

世代別LGBT+の割合はZ世代が最も高い17%

社会的な変化も反映されているのか、Z世代は、LGBT+コミュニティの一員であると自認する傾向が最も高い世代です。またZ世代の女性は、Z世代の男性よりもLGBT+の権利や保護に関する権利を支持する傾向があることが分りました。
 

世代LGBT+の割合

Z世代(1996年~2012年生まれ)

17%

ミレニアル世代(1980年~1995年生まれ)

11%

X世代(1966年~1979年生まれ)

6%

ベビーブーム世代(1945年~1965年生まれ)

5%

 

若い世代にLGBT+の割合が多い理由

1969年のストーンウォールの反乱はLGBT+コミュニティに公然と属するという現実を変え始める転機となりました。しかし、ベビーブーム世代やX世代の多くは、カミングアウトをしないことがより現実的で安全な選択だった時代に育ちました。そのため、上の世代はLGBT+コミュニティの一員であるという自認する可能性が大幅に低く、若い世代は以下の点からLGBT+の割合が多いと推察されます。

1. グローバル化とデジタル環境の影響

Z世代は、インターネットやソーシャルメディアを通じて世界中の多様な価値観に触れる機会が多い「真にグローバルな世代」です。オンライン上のインフルエンサーや豊富な情報へのアクセスにより、従来の性別やセクシュアリティの概念にとらわれない視点を持ちやすくなっています。

2. 社会的受容度の向上と教育

LGBT+に対する社会的理解と受容が進み、より開放的な環境で成長する機会が増えています。家族や周囲の人々の考え方も変化してきており、多様性を肯定的に捉える教育や情報に触れる機会が増えています。

3. アイデンティティ探求と自己表現の自由

若い世代は自己のアイデンティティを探求する過程にあり、より柔軟に自己を定義する傾向があります。セクシュアリティやジェンダーを表現する言葉や概念の多様化により、より細かな自己表現が可能になっています。また、カミングアウトに対する心理的障壁も低くなっています。

4. 世代間の意識の差

上の世代に比べて、Z世代はLGBT+に関する偏見や差別が少ない環境で育っているため、自己表現がしやすくなっています。ただし、この傾向が長期的に続くかどうかは不確実であり、今後の社会変化や個人の経験によって変わる可能性があります。

これらの要因が複合的に作用し、Z世代のLGBT+の割合が他の世代に比べて高くなっていると推察されます。

LGBT+の割合5%の日本、調査国で最も低い理由とは?

日本でのLGBT+の割合は5%で、ハンガリー、ペルー、南アフリカ、韓国と同着の最下位です。このことから日本はLGBT+後進国であると言えます。これらの国々は、LGBTの権利と受容に関して多くの共通の課題に直面しています。

1.社会的意識の変革

社会的な保守性が顕著であり、伝統的な家族観や性役割に関する価値観が根強く残っています。このような環境では、LGBTの人々が自己表現をすることや、社会的に認められることが困難になっています。

2.法的保護の強化

法的保護の不足も大きな問題です。LGBT+の権利に関する法整備が十分に進んでいないか、その進展が遅いことが、LGBT+コミュニティの社会的地位向上を妨げています。これにより、差別や不平等な扱いが続く結果となっています。

3.可視化の向上

さらに、カミングアウトの困難さも共通の課題です。社会的スティグマや差別への恐れから、多くのLGBT+の人々が自身のアイデンティティを隠さざるを得ない状況にあります。
特に日本や韓国のような集団主義的な文化圏では、「空気を読む」ことが重視され、個人の性的指向や性自認を公に表明することへの抵抗が大きいです。

これらの課題に取り組むことで、LGBT+の人々の生活の質を向上させ、社会全体の多様性と包摂性を高めることができるでしょう。同時に、これらの変化は時間と継続的な努力を要する長期的なプロセスであることを認識することも重要です。

イプソスが公開している最新の調査「LGBT+プライドレポート2024」はこちらからご確認ください。

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