世界が懸念していること – 2023 年 4 月

インフレは、過去 13 か月におよぶ「世界が懸念していること調査(What Worries the World)」で、世界の懸念事項のトップとなっています。

物価上昇は、29カ国の平均で10人に4人(41%)が懸念しています。

イプソスが毎月実施している「世界が懸念していること調査(What Worries the World)」では、一般の市民が現在最も重要な社会問題や政治問題は何であると考えているのかを調査し、最新のスコアとその背景を10年分のデータをもとに探ります。今ウェーブは、2023年3月24日~4月7日に実施されました。

 

イプソス |世界を悩ませているもの |インフレ |気候変動 | 気候変動経済

主な調査結果

  • 今月もインフレが最大の懸念事項となる。しかし、先月に引き続き歴史的な高水準ではあるものの、懸念のレベルは安定しており、今月は 1 ポイント減の 41% であった。
  • アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、コロンビア、フランス、ドイツ、英国、ポーランド、シンガポール、韓国、スペイン、トルコ、米国の 13 か国は、物価上昇を最大の懸念事項としている。
  • 調査対象国全体では、インフレに次いで、貧困/社会的不平等(32%)、犯罪と暴力(30%)、失業(27%)、金融/政治腐敗(27%)が続く。これらが世界の懸念事項のトップ5となっている。
  • 国家間の軍事衝突は依然として12位に位置しており、最も懸念している国はポーランド(31%)で、日本とドイツ(ともに20%)との差は歴然としている。
  • 新型コロナウイルスに対する懸念は再び低下し、18 項目中17 位に低下し、10 人に 1 人未満 (6%) が懸念事項に上げた。
  • ほぼ 3 分の 2 (64%) が自国は間違った方向に向かっていると回答し、先月から 2 ポイント上昇した。
  • アルゼンチン (90%) と南アフリカ (89%) は最も悲観的な見通しを持つ国で、アルゼンチンの、自国が間違った方向へ向かっているという回答は 2 ポイント、南アフリカの同スコアは 1 月から 6 ポイント上昇している。

インフレ

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10 人中 4 人 (41%) が、インフレは自国に影響を及ぼす最大の懸念事項の1つであると回答しています。 4 月の数値は先月より 1 ポイント低下しています。アルゼンチンはインフレを最も懸念する国となっており、今月の 71% のスコアは、「世界が懸念していること調査(What Worries the World)」において物価上昇を懸念するレベルと同等で過去最高となりました。(過去には昨年8月に71%のアルゼンチン人がインフレを自国の最大の懸念事項のひとつと回答しています)。 インフレを最も懸念している上位5カ国の残りはすべて、4月に懸念のレベルが低下しました。ポーランドは 3 ポイント減、トルコは 8 ポイント減、カナダは 5 ポイント減、フランスは 2 ポイント減となっています。現在インフレを最も懸念している国として第6位の米国は、懸念レベルが5ポイント上昇しました。

気候変動

アースデイを背景に、気候変動は「世界が懸念していること調査(What Worries the World) 」で 7 番目に大きな懸念事項であり、先月から 1 つ順位を上げました。 29 の市場で 16% の人が、自国に影響を及ぼす最大の懸念事項の 1 つとして気候変動を選択しています。

オランダは気候変動について最も懸念している国で、 10 人中 3 人が懸念事項として挙げています (+4ポイント)。オーストラリア (28%)、ドイツ (28%)、フランス (26%)、カナダ (25%) が上位 5カ国をしめています。しかし、気候変動はどの国でも最大の懸念事項ではありません。

イスラエルは気候変動への懸念が最も低く、気候変動を問題として選択したのは 50 人に 1 人 (2%) のみでした。アルゼンチンは29カ国中28位で、4%が気候変動を懸念しています。

国家間の軍事衝突

国家間の軍事衝突は、調査対象 18 課題中 12 位です。

11 人に 1 人 (9%) が、今月自国に影響を及ぼす 3 大懸念事項の 1 つとして挙げています。

2023 年 4 月時点で、ポーランドは軍事衝突を最も懸念している国であり、ほぼ 3 人に 1 人 (31%) が懸念事項として選択しています。

2022 年 4 月に「世界が懸念していること調査(What Worries the World)」の項目に追加されて以来、この問題に関して最も懸念している国のトップ2にドイツが入っていないのは今月が初めてです。

日本は現在、5 人に 1 人 (20%) が自国に影響を及ぼす最大の懸念事項の 1 つとして選択しており、現在2 位となっています。

新型コロナウイルス

世界の人々は、自国に影響を及ぼす 18 の懸念事項のうち、新型コロナウイルスを 17 位にランク付けしています。 20 人に 1 人 (6%) のみが、パンデミックを自国の最も差し迫った懸念事項の 1 つとして挙げています。

パンデミックに関する懸念の減少は急激です。 2022 年 2 月、世界の 3 人に 1 人 (33%) が、新型コロナウイルスが自国に影響を及ぼす最大の懸念事項であると回答しました。 これは2022 年 4 月までに18% に低下し、2023 年の初めには 13% でした。

この13%という数字は、現在どの国でも最も高い懸念レベルです。マレーシアと日本では、13%がパンデミックを最大の懸念事項として挙げています。

ハンガリー、アルゼンチン、南アフリカの 3 か国では、パンデミックを懸念事項として選択したのはわずか 1% でした。

貧困と社会的不平等

29 カ国の 3 人に 1 人 (32%) が、自国に影響を及ぼす最大の懸念事項の 1 つとして貧困と社会的不平等を挙げています。 4 月の数値は先月から 1 ポイント上昇しています。

2022 年 3 月には不平等が 18 の懸念事項の中でトップでしたが、それ以降はインフレが最大の懸念事項となり、不平等は 2 位となりました。

インドネシアは現在、不平等に関して最も懸念している国であり、 2 人に 1 人 (49%) が不平等を問題として挙げています (+8ポイント)。トルコでは、5月の選挙を前に今月最も懸念が高まり、17ポイント増となっています。

この 12 か月間の推移をみると、 2022 年 4 月の時点で、コロンビアは不平等に関して最も懸念している国でした (44%)。現在、37% がそれを問題として選択しています。

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経済に関する満足度

29 か国の平均で、3分の1の人が自国の現在の経済状況を「良い」としています。特に東南アジアでは、シンガポール(78%)、インドネシア(64%)、マレーシア(56%)がトップ5にランクインしており、好意的な意見が多く見られます。

前月比で、スペインとペルー (両国とも +5 ポイント)で経済状況に関する「良い」スコアが最も上昇しました。ブラジルは先月から4ポイント上昇し、過去10年間で最も好い経済スコアを記録しました。

一方、アルゼンチンは先月から 4 ポイント減少し、ランキングの最下位に後退しました。アルゼンチン人のわずか 5% のみが、自国の経済状況を「良い」としており、これは過去最低のスコアとなりました。


本調査について

イプソスの「世界が懸念していること What Worries the World調査」は、世界29カ国の市民が現在最も重要な社会問題や政治問題は何であると考えているのかを調査し、最新のスコアとその背景を10年を超えるデータをもとに探ります。

2022 年 12 月 22 日~ 2023 年 1 月 6 日に、カナダ、イスラエル、マレーシア、南アフリカ、トルコ、米国の18~74歳、インドネシア、タイの20~74歳、その他21カ国では16~74歳の成人を対象に、20,570人のオンライン調査を実施しました。

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