夏の過酷な気候、EV普及に影響する?
KEY Findings:
- 環境への懸念が高まっています。
- 全体的な電気自動車(EV)受容度は前年から伸びていません。
- 主たるサステナビリティ・セグメント(持続可能性への意識が高い層)ではEVへの関心が高くなっています。
- EVについて啓発を高めることは、EV受容を高めることにつながります。
2023年の夏は、多くのアメリカ人が異常気象にあらためて目を向けるきっかけになりました。2023年7月は記録上最も暑い7月になりました。フロリダ州などでは海水温が38℃を記録し、サンゴや微生物、魚が死滅しました。8月にハワイ・マウイ島やカナダのブリティッシュ・コロンビア州、ノースウェスト準州で発生した山火事は、気候変動がもたらす影響についてより多くの関心を集めました。
こうした異常気象は、米連邦政府が示す新たな排ガス規制強化に向き合う自動車業界をはじめ、あらゆる産業に影響を与えます。米環境保護庁は4月、新しい厳格な排出量基準 を提案しました。2032年までに新車販売の67%を電気自動車にすればこの新基準は達成されるとしています。
政府が気候変動対策としてEV普及を推し進める一方、消費者のEVに対する興味には多面的な課題があります。ここからはイプソスの調査結果を見て行きましょう。
クリーンエネルギーは必要、でも消費者にシフトする気はある?
多くの消費者にとって電気自動車は未来の乗り物かもしれません。しかし、よりクリーンな未来が約束されているにもかかわらず、消費者はEVのバッテリー生産とバッテリーが環境に与える影響に懸念を抱いていることが、イプソスの調査で明らかになりました。バッテリー原料の採掘にはしばしば自然生息地の破壊が伴い、またバッテリーの寿命が尽きた時には廃棄の問題が発生します。

出典:イプソス世論調査、n=1,000、米国の18歳以上
電気自動車関連企業は、よりサスティナブルかつ高性能なバッテリーの開発に粘り強く取り組むべきです。企業はまた、こうしたバッテリーの開発が、原料の採掘やリサイクルを通じ、社会にどのようなプラスの影響を与えるかを消費者に伝え、啓発する必要があります。
カーボンフットプリントの削減
イプソスの2023年ナビゲーター調査によると、消費者はサステナビリティを支持し、CO2排出量に関心を寄せており、その割合は2022年と比較して増加しています。また、消費者の大半が環境の持続可能性に関心を示していると言えます。

出典:2023年イプソス・ナビゲーター調査モジュール2、n=2,000、米国の18歳~74歳の自動車保有者
しかし、消費者は行動を変えようとするでしょうか? 自動車所有者におけるイプソスの「サステナビリティ・セグメント」の構成比を見ると、消費者のおよそ3分の1は自らを「プラグマティスト(実用主義者)」と考えており、「アクティヴィスト(実践主義者)」と考える消費者は10人に1人程度となっています。
イプソスのサステナビリティ・セグメント

EV購入の検討度は2022年夏から2023年にかけて横ばいとなっています。消費者がEVやバッテリーの影響について認識し、より持続可能な選択をすることで自らがどのように貢献できるかを理解するには、さらなる啓発活動が必要です。
電気自動車の検討度 Top2 box(5段階評価) 年ごとの合計

出典:2023年イプソス・ナビゲーター調査モジュール2、n=2,000、米国の18歳~74歳の自動車保有者
全体的なEV受容度・検討度は前年比横ばいとなっていますが、イプソスのサステナビリティ・セグメント別で見ると、より意識が高く積極的に関心を持つ層ほどEVを検討する傾向があることがわかります。消費者の知識を深め理解を高めることは、EVの普及拡大につながると言えるでしょう。
イプソスのサステナビリティ・セグメント別 電気自動車の検討度 Top2 box(5段階評価)

出典:2023年イプソス・ナビゲーター調査モジュール2、n=2,000、米国の18歳~74歳の自動車保有者
次なる課題
地球温暖化は現実であり、記録的な気温の上昇から種の絶滅に至るまで、さまざまな影響が出ています。その責任の大部分は、企業のエネルギー生産、消費者に与えられる選択肢、そして消費者の消費パターンにあります。特に自動車産業において、企業は自らに厳しく問い続ける必要があります。
- 企業は従来どおりにビジネスを続け、相次ぐ嵐と干ばつにより地球が破壊されるのを黙って見過ごすのか?
- それとも、新しい提案や教育が必要となる道なき道を行き、一定の困難が伴うことを覚悟して、未来をよりクリーンで緑豊かにするエネルギー革命に取り組むのか?
イプソスでは、企業の皆さまが検討している異なる選択肢について関心や影響を測定し、ビジネスの意思決定をサポートします。消費者の環境に対する意識は変化しており、思い切って賭けに出る意欲もありますが、さらなる啓発と選択肢が必要とされています。イプソスは現在、電動化、先進技術、シェアードモビリティをテーマにしたイプソス・ナビゲーター調査で自動車業界の主要トレンドをモニターしています。詳しくは以下をご覧ください。
イプソスUSの自動車チームでは、消費者の選択にある真のモチベーションを深く理解する調査も行っています。この新しい調査は自動車の先進技術に焦点を当てており、今後は電動化についてもカバーする予定です。詳しくは以下をご覧ください。