インド自動車市場の最新動向2025年──EV化、グローバリゼーションの分断、AIがもたらす革新
インドの自動車業界は2025年に大きな転換点を迎えます。タタ・モーターズの大規模投資やマルチ・スズキのEV計画、EVコンバージョンやADAS/AI導入など、気候・グローバル化・技術の3つの潮流から将来像を読み解きます。
インドは世界で最も注目される自動車市場の一つです。人口増・所得拡大に伴う需要拡大に加え、気候変動対策や地政学的変化、AIなどの技術進化が業界構造を大きく変えつつあります。この記事では、イプソスの調査結果を基に「Climate Convergence(気候収束)」「Globalisation Fractures(グローバリゼーションの断裂)」「TechnoWonder(技術礼賛と懸念)」の3つの潮流がインド自動車市場に与える影響を整理します。レポートはこちらからご確認ください。
1. 気候収束(Climate Convergence)──EV化と持続可能な製造の加速
インドでも再生可能エネルギー投資の増加と気候意識の高まりが、自動車分野の脱炭素を後押ししています。イプソスの調査では多数の消費者が環境問題を懸念しており、企業の環境対応を厳しく見ています。
産業側の動き
タタ・モーターズはEV関連に約1,600億〜1,800億ルピーを投資予定、マルチ・スズキ(Maruti Suzuki)は2030年にインド販売の約15%をEVにする見込みと発表。さらに2030年までに約41モデルの新車投入が見込まれており、各社がEVラインナップを拡充しています。
ポイント
充電インフラ拡充、バッテリー価格低下、現地生産(ローカライゼーション)によるコスト削減が普及の鍵。中古車のEV化を促す「EVコンバージョンキット」も価格の壁を下げる有力な選択肢です。
2. グローバリゼーションの断裂(Globalisation Fractures)──「メイド・フォー・インディア」が主流に
世界の分断化が進む中、インド消費者は「国内生産・国内仕様」への誇りを持ちつつ、同時に国際競争力のある製品を求めています。グローバル化を歓迎しつつも“インド向け最適化”が重視される傾向です。
事例
マヒンドラはフォルクスワーゲンと電気部品で提携するなど、国際協業と現地生産のハイブリッド戦略が増加。
ポイント
メーカーは「Make for India(インド向け設計)」と「Make in India(インドで生産)」を両立させることで消費者信頼を獲得できます。サプライチェーンの強化と循環型経済の導入がリスク対策にもなります。
3. TechnoWonder──AI・コネクテッド技術が安全性と体験を変える
技術信奉と技術への懸念が共存する中、AIやADAS(先進運転支援システム)、車載コネクティビティが自動車の差別化要因に。イプソスによると、約42%が技術を未来の課題解決に不可欠と考える一方、約33%に懸念があるなど受容の幅があります。
導入効果
AIを活用したADASは事故削減や保険料低下のポテンシャルを持つ。コネクテッド機能や個別化されたUXは若年層(Gen Z)を中心に需要を後押しします。
ポイント
データプライバシーとサイバーセキュリティ対策を強化したうえで、段階的に機能を導入し、教育やサポートで消費者の不安を和らげることが重要です。
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インドの自動車業界は、世界的なトレンドと地元の好みの両方に応えながら、イノベーション、持続可能性、手頃な価格のバランスを取る必要があります。これには、研究開発への多大な投資、パートナーシップの強化、そして成長と変革を促す環境づくりのための政策立案者との緊密 な連携が含まれます。