ESG: 企業にとっての道しるべ

目的の達成のために:自社がどのような企業であるかについて明確なビジョンを持つことは、「人材獲得競争」において、日常生活に変化を求める世代でますます重要となっています。

Ipsos Reputation Council | ESG: The Corporate North Star

レピュテーション協議会のメンバーにとって、企業目的とは、財務的な価値創造を超えた、企業の存在理由を示すスローガンであり、公的な声明でもあります。その価値は、共通の目標に向かって人々を動かし、企業文化を強化し、ひいては業績と成長を後押しする能力にあります。また、協議会のメンバーは、日常生活に変化を求める世代間で、「人材獲得競争」が激化する中、自社がどのような企業であるかについて明確なビジョンを持つことがますます重要になると考えています。

「企業の目的とは、何よりも『なぜ事業を行っているのかをどう定義するか』です。世の中に残したいものは何なのか?ここでビジネスをする意義は何なのか?」

より広い目的を持つことが期待される一方で、企業は関与する問題を選別する必要があります。社会の問題に対処するのは政府だけの責任であると考えるメンバーは9%に過ぎませんが、彼らはまた、ますます偏向する社会的・政治的議論に巻き込まれる危険性を強く認識しています。

「ロー対ウェイド事件に対して、我々は立場を表明すべきでしょうか?企業の立場から言えば、何も構える必要はありません。明確で道徳的に正しい側、というのはありませんが、難しくても明確な善し悪しがある場合もあります。」

ESGと目的との関連性

Ipsos Reputation Council | MicroscopeESGは、ますます企業の目的を果たすためのものとなってきています。企業のビジョンが事業計画にどのように組み込まれ、日々の活動とどう連携しているかを表すものです。目的が日々の決断のための北極星であるならば、ESG基準は、企業がその選択に対してどのように評価され、責任を負うかということです。

「目的とは、あなたの会社が社会または環境にどのように建設的な影響を与えるかに基づいて、定義されることです。それはあなたの会社の定義に関わるものです。ESGは、主に財務報告のテクノクラシーの一部である、企業に対するリスクに基づいて作成され、課された一連の基準です。」

グローバルな事象がESGを高めている

新型コロナウイルスのパンデミック、気候変動、ウクライナ紛争、サプライチェーンの混乱、文化闘争、商品価格の高騰とそれに続くインフレの緊張など、世界中に波及した一連の環境・社会・政治ショックは、企業への期待を高め、企業のESG行動と意欲がどう評価されるかを形成しています。

「グリーンウォッシング、ウォークウォッシングで簡単に逃げられた時期がありました。これらをパーパスウォッシングと呼びましょう。しかし今では、その境界を越えて逃れることはますます難しくなっています。」

ESGは遍在している

ESGの義務化により、企業は潜在的な問題に先手を打つために、より機敏に行動することを余儀なくされています。その結果、企業コミュニケーターの一日のあらゆる側面にESGの考慮が浸透しています。ESGは、企業の社会的事業ライセンスを保護し、維持するために、すべての業務に通じる赤い糸です。

「数年前まで、ESGに関する企業レベルのコミュニケーションは年次サステナビリティレポートだけでしたが、近年はコミュニケーションの半分近くがESGに関するものです。」

「おそらく ESGは企業の評価の9割を占めると思います。本当に大きな影響力を持っていると思います。」

「 ESGの要件を満たさないパフォーマンスも容認されません。ウクライナの恐ろしい紛争では、多くの企業が正しいことを行い、迅速に事業売却を行いました。現場で起きていることを無視し続けることは不可能でした。」

半数以上の協議会メンバーは、ESGが自社の事業運営を根本的に変えたと回答し、5人に4人は、ESGパフォーマンスの低下は重大な結果をもたらすと考えています。

HasESGは、私たちのビジネスのあり方を根本的に変えたか?

Ipsos Reputation Council | ESG and business

ESGパフォーマンスの低下は、今や重大な影響を及ぼすのか?

Ipsos Reputation Council | ESG and performance

以前は、企業の責任に関するコミュニケーションを、単に企業目標に結びつけるだけでよいという自由度があったかもしれません。しかし現在では、コミュニケーションと測定可能な行動とを結びつけなければならないという、 より大きな圧力にさらされています。これは重要な変化であり、ESGが何を意味し、何を実現するのか、その基本が明らかにされつつあります。一部の協議会メンバーにとっては、まだ構造的な疑問が残っているようです。「私は、ESGの文化やレトリックに魅了されています。ESGは、企業にとって問題のある組織原理になっています。ESGは人工的な構造物であり、3つの要素や組み合わせに固有の論理はなく、人々はそれを集団や企業の意思決定のための自然で賢明な組織力として受け入れているのです。」 

Ipsos Reputation Council | Windfarm

 

ESGに関する3つの不快な真実

測定の迷路

協議会メンバーの半数が、ESG規則の遵守は大きな頭痛の種であると回答しています。目標や実績の進捗を報告するためのフレームワークが標準化されていないため、開示が主観的で異なる解釈を受ける可能性があり、検証が課題となっています。

例えば、格付け会社は、自己開示された企業のデータや情報に基づいてリスク評価を行います。企業は複数のカテゴリーにまたがる様々なESG指標を採用しているため、比較は困難であり、時には疑問が残ることもあります。

「課題の一つは、明確な客観的基準(測定基準)がないことで、その多くは主観的です。我々は、ESG投資家が評価するのに有用ないくつかの事項を報告しますが、それはコミュニケーションに依存し、しばしば人の眼によります。」

「目標がなく、目標に対する進捗もないため、必然的にグリーンウォッシングの非難を受けることになります:“素敵な約束をしているが、実際にはやっていることに実態がない”ということです。データが保証され、信頼できるものであるということは、今後ますます重要になるでしょう。」

変化するESGのルールや基準を常に把握することは、大きな頭痛の種か?

Ipsos Reputation Council | Keeping up with ESG

PwCは、ESG課題の社会的要素は、他の要素に比べて具体的でないことが多いため、ステークホルダーが評価し、企業が進捗を示すことが最も困難であると指摘しています。インクルージョンと多様性はその一例であり、その指標は成熟しておらず、定義するのが難しい場合が多いのです。大企業が役員会の多様性にどの程度真剣に取り組んでいるかについて、協議会メンバーの意見は分かれており、5人に2人がまだ取り組んでいないと答え(2019年の半数から減少)、同じ割合が取り組んでいると考えています。

大企業はいまだに役員会の多様性に真剣に取り組んでいないのか?

Ipsos Reputation Council | Business and diversity

 

気候変動は大変な問題だ。炭素排出量と温室効果ガス排出量を測定しただけで、何とどう比較したらいいのかわからない。基準点を見つけるのがとても難しい。

規制の潮目

Ipsos Reputation Council | Drone controls規制は急ピッチで進んでいます。EUのCorporate Sustainability Reporting Directiveや米国ではSecurities and Exchange Commission (SEC) の提案により、上場企業は気候関連のリスク、排出量、ネットゼロの移行計画について報告することが求められています。また、EUのサステナブル活動の分類法は、投資家がより環境に配慮した選択をできるようにすることを目的としています。協議会メンバーの多くは、絶えず現状に追いつこうとしているように感じています。ESG報告の義務化が進み、企業に対する情報開示の要求が高まるにつれ、コミュニケーターに対するプレッシャーも高まっています。

「また、これらすべてには規制上の意味合いもあります。自主的なものもあれば、情報開示の観点から強制されるものもあります。これは全く新しい世界ですが、私たち次第で、最も意味のあることにフォーカスしようと思っています」

「CSRは、どちらかというと " あったらいいな " というもので、希望し、余裕があればできるものでしたが、今はESGが目的ベースの活動の多くを支えています。なぜなら、より多くの基準が設けられ、レポートに対する期待が高まっており、今後ますます増えることが予想されるからです。」

サプライチェーンへの依存

Ipsos Reputation Council | Drone in forest気候変動リスクの課題の最大の部分はサプライチェーンにあります。協議会メンバーの間では、この点については、まだ信頼に足る取り組みがなされていないとの認識があります。Scope3排出量(報告組織が所有または管理していない資産からの活動)の報告は、大企業にとって最大の試練となります。複雑なサプライチェーンに責任を持つ企業は、その最も弱い結びつきによってのみ強くいられるのです。

「2040年までにサプライチェーンをカーボンニュートラルにするという要件は、製品、生産、サプライチェーン、事業運営方法、サービス全般について難しい選択を迫られることを意味し、これらの選択の中には容易ではなく、コミュニケーションが困難なものもあるでしょう。このようなコミットメントをどのように進めているのか、多くの企業が明らかにしていないように思います。」

ESGの成功とはどのようなものか?

Ipsis Reputation Center | ESG prism

ESGは、雇用者として、投資先として、また善良な市民として、企業を評価する上でますます中心的な存在となっています。しかし、多くの組織がまだESGを直接企業戦略に組み込んでいないため、進展が遅れているという見方があります。

どのような段階であれ、この道筋を進むにあたって、協議会メンバーからどのようなアドバイスがあるのでしょうか?

  • " 日光は最高の消毒剤 " – 透明性が重要。コミットメントとその達成に向けた道筋の障害についてオープンにする。
  • 専門家や専任のリソースを雇用する。これは、コミットメントを示唆するものである。Chief Sustainability Officerは、コミュニケーション部門に、より具体的なアウトプットを提供する。
  • ESGの責任を分散・拡大し、より結束力のある、機敏で反応性の高いアプローチを実現する。
  • キャンペーンの永続性を認識する  – 粘り強く、幅広く、しかし厳選して活動する。すべての原則的な姿勢を公にする必要はない。
  • 共通の目的を浸透させる。 強い目的意識のもとに従業員を結集させる能力が評価される。
  • サステナビリティ年次報告書だけに依存してはならない。期待されることが変化しており、統合的なアプローチが必要である。
  • 職場のバランスについて考える.。 職場におけるデジタルネイティブの増加により、透明性と社会的公正が高い次元で課題となっている
  • ネット・ゼロの成功を決定するのは、野心的な発言ではなく、着実に実行することである。
  • カーボンオフセットについて熟考する。単に良心の呵責に耐えているだけなのか?
  • あなたが掲げている課題は、あなたの目的、あなたの財産、そしてあなたが貢献できることと本当に一致し、関連性があるか?

ESGの行動に関する基本的なルールは、透明性、信頼性、スピードという、デジタル時代のすべての人に共通するルールのようです。これを実現できる企業は、不確実性が高まる中で、一定の安心感を与えることができるでしょう。


Quickfire - 目的

多くの企業が、真の変化を約束することなく、社会的目的の言葉を使用しているか?

Ipsos Reputation Council | Language and commitment

10人に7人の協議会メンバーが依然として中身のない、企業のパーパス ウォッシングが多すぎると考えており、2020年の10人に8人よりもわずかに少なくなっています。.

しかし、真の意味で共有された目標のもとにステークホルダーを集めることは重要であると考えています。協議会メンバーの4人に1人は、目的ステートメントは自社の従業員にとってのみ重要であると回答しており、10人に7人はそうではないと回答しています。

「目的ロゴやウェブサイト上の目的ステートメントに固執する組織は、もはや基準を満たすことはできません。今、大きな課題となっているのは、目的と戦略を真に結びつけることです。」

社会の問題を解決するのは、企業ではなく、政府の仕事か?

Ipsos Reputation Council | Society, Government and Businees

4人に3人の協議会メンバーが、ビジネスの社会的役割として、ボトムラインを超えた明確なものを見出しており、2019年と同程度の水準です。

63%はさらに踏み込んで、ビジネスリーダーが世界を進歩的に変える力として政治家を追い越していると述べており、2019年の57%から上昇しました。

昨年は、10人中7人のメンバーが、ビジネスコミュニティが新型コロナウイルスに率先して取り組んできたことに同意しました。明らかに、彼らは自分たちのビジネスがすぐに傍観者に戻るとは思っていないようです。

「パンデミックから私たちを救ってくれたのは誰でしょう?ファイザー、アストラゼネカ、モデルナ...これらの製薬会社は、新しい病気が見つかってから6ヶ月以内に複数のワクチンを提供できる能力を構築してきました。もちろん、政府の支援や資金提供などがありますが、その解決策を見出したのはビジネスなのです。」

目的に焦点を当てることで、管理職や彼らの注意を利益に集中させることができるのか?

Ipsos Reputation Council | Focus on purpose

協議会のメンバーは、「ビジネスにおける唯一の社会的責任は利益を上げることである」というフリードマンの教えに同意しているのでしょうか?

圧倒的に「ノー」です。彼らは、これは間違った区別だと考えています。利益と目的は、「車の両輪」であり、どちらか一方が欠けても、ビジネスはうまくいかないと思うのです。

しかし、10人中6人は、厳しい時代には利益を優先させるべきだという意見を持っています。しかし、そのような場合でも、企業には明確な姿勢が求められます。目的について、何が交渉可能で、何が交渉不可能なのでしょうか?

「排他的 であってはなりません。仕事をきちんとこなし、使命や目的を果たす会社は利益を上げるべきです。それが資本主義というものではないのでしょうか。」

いま社会は分断され、企業はどちらかを選ばなければ生き残れないのか?

Ipsos Reputation Council | Pick a side

多くの社会問題で両極化が進んでいるにもかかわらず(あるいは進んでいるからこそ)、協議会のメンバーは、対立的な「文化戦争」に関与しないよう助言しています。

企業がどちらかを選ぶ必要があると答えたのはわずか15%で、2018年の23%から減少しています。

「私たちが活動している環境は、非常に偏ったものです。どこで線を引くのか、企業としてどこに立ちたいのか、非常にオープンでなければなりません。一貫性を持たなければならないし、もし一線を越えてしまったら、引き返すことはできないのです。」

コンテンツ一覧

  1. レピュテーション協議会レポート 2022
  2. ソーシャルメディアの難題:投稿するか、しないか
  3. 危機管理:不安定な環境下でのコミュニケーション
  4. ビジネスの規制:ESGが介入を促す
  5. ESG:企業の道しるべ

⬅︎ ビジネスの規制

 

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