Ipsos Views:第9回 若者がSDGsに敏感なのは何故か?
今回は、SDGsの17目標中、各年代がどれに最も関心を持っているかを聞いた今年(2021年)5月実施調査*結果から、特に「若者がSDGsに関心が高い」と言われている理由を分析しました。
まず、各年代で関心度が高かったSDGs目標をご覧ください。
●10~20代の若者は、世界で起こる問題をそのまま素直に、そして前向きに受け止めている
「日本は恵まれているので、世界の困っている人を助けたい」
「生まれた環境によって生活の質に大きな違いが出ていることに心が痛む」
「日本は環境問題やジェンダー平等などへの取組みで世界に遅れを取っているが、負けずに変わって行ってほしい」「人種、国、性別、障がい者や高齢者。様々な違いを持つすべての人々にとって優しい世界を目指したい」
「世界中で質の高い正しい教育が受けられれば、環境問題や政治、ジェンダー平等などは正しく解決されていくと思う」
●50~60代の高齢層は、SDGsを特にコロナ禍の現実と照らし、「かけ離れている」と受け止める人も多い
「このコロナ禍を抜け出せない限り、実現どころか実行も無理」
「今日明日の生活がままならない人が、持続可能な社会とやらを考える余裕はない」
「地位や収入など不平等、理不尽だらけなのが現実」
SDGsに共感はするが、現実の厳しさを良く理解しており、若者ほど希望を持っていない
「貧困をなくそうは理想論としてとは共感するが、貧困国では子供が労働力として必要とされ、そうすると貧困が再生産されるため、悪循環から抜け出せない」
「クリーンエネルギーが気になるが、原発問題と安定供給の両方をクリアするのは非常に難しい」
また、前向きにとらえる人でも50~60代は若者と比べ、国内の現実と結び付けて考える傾向がある
「スキューバダイビングをするので海の豊かさが一番気になる」
「レジ袋が有料化されたけれど、まだまだ無駄な包装は多くリサイクルに回せないときは心が痛む」
「私は農業をしているので、海と陸の豊かさが一番気になる」
「母子家庭や父子家庭などの貧困がコロナ禍で深刻になった。子ども食堂が注目されているが、公共の貧困対策が必要不可欠だ」
「高齢化社会で空き家が増えている。歳を取っても住み続けられる街づくりをしてほしい」
「日本について考えることはあっても世界や地球など大きなものへの意識はない」
●30~40代は、純粋に理想的な世の中を目指し何ができるかを考える人と、高齢層に近い現実的な見方をする人が混在する。
若者がSDGsに敏感なのは、世界を脅かす問題を知り、純粋に何かしたいと感じるから。それらを解決する際に直面する障害や自分が出来ることの限界を現実の壁と捉えず、希望を持って受け止めていることに加え、デジタルメディアを通し地球規模の情報にリアルタイムで接して来た世代であることも大きいと思われます。
28歳女性が、「自然災害が年々ひどくなっているのは、環境に問題があるからと聞きました」と、最近初めて深刻な社会問題を知り意識したと告白しています。プラスチック容器の使い捨てや家畜環境問題など、日本人の意識が国際的に際立って低い問題も、「知らないこと」が原因になっていると思われます。
因果関係が分からなければ重要性に気付かず、行動に移す人は少ないでしょう。若者が純粋に問題に取り組みたいと感じる教育と啓蒙は、教育機関のみならず製品をつくる企業の「つかう責任」を分かり易く伝えることにも求められます。希望を持った若者が前向きに未来を変える原動力に、政府も企業も、そして社会全体がなることが望まれます。
*一般消費者調査詳細:イプソスのシンジケート・オンラインコミュニティによる国内16~69歳一般男女613名を対象とした定性調査。人口統計に合わせた代表サンプルではなく、性年代別に定性的な意見を収集。男性239名、女性374名、10~20代48名、30~40代315名、50~60 代250名。
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