アースデイ 2023 – 気候変動への懸念や関心が薄れつつある?
21,231 人を対象に実施した新たな調査によると、気候変動に対し政府、企業、個人がどのように協力していくかについて、政府が明確な計画を立てていると思う人は、29 か国の平均で3分の1弱(31%)にとどまることが明らかになりました。 なお、同意の度合いは、2022年、2023年の両年ともに調査対象であった26カ国で比較すると、昨年より平均8ポイント低下しています。
主な調査結果
- 誰が行動すべきかについては、個人(63%)、政府(61%)、企業(59%)がほぼ同じ割合で推移しているが、その割合は世界の人々の間でいずれも減少傾向にある。
- 今が気候変動に投資するのに適切な時期であるかどうかについては、世界の意見が分かれている (38% が適切な時期、30% が不適切な時期であると回答)。しかし「気候変動の悪影響が懸念されるのはあまりにも先のことである」という意見への反対が半数を占めている(52% vs 23%)。
- さらに「気候変動そのものがもたらす経済的コストは、それを軽減するための施策のコストよりも大きい」とする意見への同意は、反対よりも優勢である(42% vs 26%)。
- 気候変動に対処するための行動については、全世界の市民のほぼ3分の1(30%)が、気候変動を防ぐためにもっと税金を払ってもよいと回答している。さらに、環境に配慮した購買に対する金銭的なインセンティブや減税(38%)や、気候変動に対処するための情報へのアクセスが容易になること(36%)が、気候変動に取り組むための行動を促すと答えた人がやや多い。
- 家庭が二酸化炭素排出量を削減するためにできる行動についての理解は、昨年以来向上している。特に、再生可能エネルギーの購入に切り替えることがもたらすプラスの影響についての認識は、8ポイント増加した。
計画は?
インドと東南アジア以外では、気候変動に取り組む政府の計画に対する認知率は 2023 年時点でも低く、グローバルの平均で 3 分の 1 (31%) です。 29 か国全体では、市民は引き続き、その行動を個人 (63%)、政府 (61%)、企業 (59%) の間で共有されるべき責任として認識しています。しかし、昨年と今年の両方で調査した 26 ヵ国を見ると、2022年と比較して、次世代の人々、顧客、従業員などを失望させないために気候変動に対処する必要がある、という信念は薄れつつあります。
一般的に、気候変動そのものがもたらす経済的コストは、それを軽減するための対策のコストよりも大きくなると言う意見が増えています。しかし、これは一致した見解ではなく、世界の 5 分の 2 (42%) がそう回答しているのに対し、4 分の 1 (26%) は気候変動を軽減するためのコストの方が大きいと回答しています。日本 (それぞれ 23% と 30%) を除いて、調査対象国のすべてで、気候変動自体の経済的コストは、それを軽減するための施策のコストよりも大きくなるという考えが強くなっています。
リードしているのは誰か?
調査対象国のほとんどの市民は、自国が気候変動への取り組みにおいてリーダーであるとは考えていません。グローバルの平均で 3 分の 1 強 (31%) がこのように考えており、インド (71%) とマレーシア (51%) で最も高い割合となっています。気候変動に対処するために各国がさらに努力すべきであり(世界平均で 66% が同意)、より大きな負担は、歴史的に気候変動への影響が高い国(62%)と現在経済的に発展している国(70%)が負うべきという意見で一致しています。しかし、すべての国が協力しなければ気候変動に完全に立ち向かうことはできないという点では、29 カ国 (平均 75%) で意見が一致しています。
何をすべきか?
人々は個人の行動の重要性を否定しておらず、世界の 10 人に 7 人 (70%) が、誰もが日常生活の中で小さな変化を起こせば、気候変動への取り組みに大きな影響を与えると考えています。しかし、気候変動が私たちの手に負えないものであるかどうかについては意見が分かれるところです。ほぼ半数 (48%) がこの意見に反対し、賛成はわずか 4 分の 1 (24%) ですが、国によって見解は大きく異なります。反対意見が最も多いのは南アフリカ (60%)、英国 (57%)、ポーランド (57%) で、最も少ないのはインド (14%) と日本 (32%) です。
厳しい経済状況を考えると、今が気候変動に投資するのに適切な時期かどうかについても同様に意見が分かれています (38% が適切な時期であると回答し、30% が不適切な時期であると回答 ) 。しかし、気候変動の悪影響が懸念されるのはあまりにも先のことである、という意見には過半数(52%)が賛同していません。
世界的に見ると、 10 人に 3 人 (30%) が、気候変動防止のために所得の多くを税金で支払うことに同意していますが、それ以上の人 (38%) が同意していません。様々な選択肢のうち、どれが変化を起こす動機になるかという問いに対しては、環境に配慮した購買に対する金銭的インセンティブや減税(38%)、日常生活において実行できる対策に関する情報への簡単なアクセス(36%)、気候変動が引き起こす気象現象が自国に及ぼす影響を目の当たりにすること(34%)と回答する人が最も多くなっています。気候変動に対処するために、すでにできる限りの行動を起こしていると答えた人は、わずか14%でした。
認識の危険性
一般的に、人々は、多くの行動が実際よりもはるかに大きな影響を排出量削減にもたらすと認識する傾向があります。世界的に、「認識と現実のギャップ」は続いています。昨年と比較すると、家庭が二酸化炭素排出量を削減するためにできるいくつかの行動について理解が深まっていることがわかります。再生可能エネルギーの購入に切り替えることが、排出量を削減するための最善の方法であるとの認識(実際の影響度では4位)は、8ポイント増加しました。しかし、リサイクル (32%) と包装の削減 (24%) (実際の影響度ではそれぞれ 60 位と 38 位) は、車を使わない生活 (18%) よりも、排出量を削減する最も効果的な方法として、温室効果ガス排出量の削減に大きな影響を与えると認識されています。
また、どの分野が地球温暖化に最も影響を与えているかについても、人々の意見はかなり分かれており、オゾン層を破壊する製品を、工業や森林破壊など、より汚染度の高い他の分野よりも重視しています。
「今年、個人、政府、企業による気候変動への取り組みへの期待が低下していることは懸念される。おそらく、個人が日常的に家族を養い、生活していくことに影響を与える、より緊急性の高い問題に注意が向けられているのだろう。インフレ、エネルギーと食糧の安全保障、紛争などの問題が、気候変動に取り組むべき時が今かどうかという意見の対立に一役買っていることは間違いない。
しかし、気候変動による悪影響が差し迫っていると考える人が増えており、依然として緊迫した状況は続いている。そして、気候変動に取り組むためのコストは、その影響によるコストよりも少なく済むだろう。また、気候変動は私たちの手に負えないものではないという楽観的な見方もあり、我々が一丸となって日常生活に小さな変化を加えることができれば、気候変動に取り組む上で、大きな役割を果たすことができるという強い信念もある。
また、我々が本気で気候変動に取り組もうとするならば、すべての国が協力する必要があり、この活動の資金は、これまで気候変動に最も大きな影響を与えてきた国が負担すべきであると明確に認識されているのである。」
Pippa Bailey
イプソスの気候変動およびサステナビリティ事業責任者
本調査について
これは、イプソスのグローバルアドバイザーオンライン調査プラットフォームと、インドのIndiaBusプラットフォームで実施された29カ国の調査結果です。スイスでは2023年2月17日~3月3日、その他の28カ国では2023年1月20日~2月3日の間に、の21,231人(インドの18歳以上、カナダ、マレーシア、南アフリカ、トルコ、米国の18~74歳、タイの20~74歳、インドネシア、シンガポールの21~74歳、その他すべての市場の16~74歳)の国際サンプルを対象に、オンライン調査を実施しました。