カスタマーエクスペリエンス(CX)向上に不可欠な2つのリサーチ法:MemoryとMomentの戦略的活用ガイド

リレーション調査とトランザクション調査を組み合わせたCX測定・改善の実践フレームワーク をご紹介。

カスタマーエクスペリエンス(CX)とは? 

ビジネスマンがタブレットを使用しデータ集計をしている画像

 

カスタマーエクスペリエンス(CX)とは、顧客が企業やブランドとの全接点において体験する総合的な印象や感情のことです。競争が激しいマーケットにおいては、CXの最適化によってビジネス成果を大きく向上させることができます。具体的には、顧客の維持・ライフタイムバリューの向上・クチコミによる認知の拡大、そしてマーケティングコスト削減によるROI向上につながります(ROCXI = Return on CX Investment)。 

 

では、どのようなリサーチを行えば現状のパフォーマンスレベル・CX向上や改善に向けた課題の把握ができるのでしょうか。 

 

 

CX形成プロセスを知るとやるべき調査が見えてくる 

記憶と瞬間の図

 

企業やブランドに対する感情は、顧客とのすべてのタッチポイントでの体験の積み重ねによって形成されます。ひとつの体験における印象的な瞬間(Moment)によって、その体験前までに形成されていた記憶(Memory)が上書きされます。そしてその記憶は体験を重ねるごとに変化し続けていきます。良質な瞬間(Moment)が得られるごとに、顧客の企業・ブランドとの絆はより強固になっていくのです。 

 

また記憶(Memory)の変化に応じて、顧客の企業・ブランドに対する期待の内容も変化します。その記憶の変化は自社との体験によるものもあれば、競合他社との体験・市場環境の変化によるものも含まれます。 

 

 

CXをとらえる2つのリサーチ 

CXの現状把握と課題特定を行うためには、以下の2つのリサーチを実行することが重要です:

 

1. リレーション調査(=健康診断) 

すべての顧客接点を対象に満足度評価を取得し、組織全体のロイヤルティレベルとCX向上への主要ドライバーを特定する、包括的な視点で行うリサーチです。特定の体験に限らず、これまでの企業・ブランドとのすべての体験を踏まえて記憶ベースで顧客に評価いただくものです。 

 

評価項目は以下のような構造で設定します。 

 

  • 大項目:総合評価 

  • 中項目:タッチポイント評価 

  • 小項目:各タッチポイントにおけるアクションアイテム評価 

 

また、リレーション調査においては主要競合とのパフォーマンス比較を行うことも有効です。アンケートモニター登録者から調査対象の条件に合致する自社・競合各社ユーザーをリクルートし、同じ評価項目を各ユーザーに聴取することで、業界における自社の立ち位置の確認が可能となります。 

 

 

2. トランザクション調査(=体験管理) 

ひとつの体験ごとのパフォーマンス評価を行います(例:前回の店舗ご来店時の体験、前回のカスタマーサポートへのお問合せ時の体験、前回の営業担当者との面談時の体験など)。こちらは通年で行い、週次・月次など短いスパンでパフォーマンス推移を確認します。 

 

改善状況の確認と合わせて、急なパフォーマンス低下を探知するアラート機能の役割も有しています。年1~2回のペースで行うことの多いリレーション調査の次回結果を待たずに、問題が発生したタッチポイントにおける顧客体験への手当てを行うことが可能です。 

 

また、体験ごとの良質な瞬間(Moment)の有無や程度の測定になるため、顧客の記憶が薄れる前にフィードバックを取得する必要があります。 

 

<顧客へのアンケート依頼方法の例> 

  • 各顧客に対して、体験の1~2日後にEメールにてアンケート協力依頼メール配信(メールは毎日配信) 

  • オフラインのタッチポイントにおいて、体験終了後にアンケート回答用QRコードを顧客に配布(台紙のお渡し、レシートに印字など) 

 

 

CXリサーチの運用方法 

業種にもよりますが、標準的な立ち上げのプロセスは以下のようになります。 

  1. まずはリレーション調査を行い、現状把握および課題を整理 

  2. 上記1でドライバーとして特定されたタッチポイントを中心にトランザクション調査のローンチ、改善アクションの効果をショートスパンで確認 

  3. リレーション調査は年1~2回で定期的に継続実施、自社の立ち位置やドライバー構造の変化(=顧客期待の変化)の有無をチェック 

 

 

まとめ:Memory(記憶)とMoment(瞬間)の把握がCX向上のカギ 

カスタマーエクスペリエンス(CX)リサーチは、企業が競争優位を築くための重要な手法です。リレーション調査によって全体の満足度と改善すべきドライバーを特定し、トランザクション調査で個別体験を評価することで、顧客の期待に応えるための具体的な改善アクションが可能となります。これらの調査方法を適切に組み合わせることにより、顧客の記憶(Memory)と瞬間(Moment)を理解し、CX向上につなげることができます。さらに、業界の動向や顧客の変化を敏感に探知し、即応する仕組みを持つことが成功の鍵です。 

 

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