ウクライナ紛争から一年…世界の人々の意見は驚くほど安定

若干の軟化は見られるものの、ウクライナに対する欧米諸国の支持は依然強いものとなっています。

ウクライナでの紛争から1年が経過しようとしていますが、28カ国のほぼ3分の2(64%)が依然としてこの紛争に関するニュースを注視していると回答しています。イプソスの新しい調査によると、この紛争に関する世界の世論は、ウクライナ侵攻後の数週間からあまり変化しておらず、ほとんどの西側諸国の市民はウクライナへの支持を堅持していることがわかりました。

調査結果のサマリー

Ipsos | Global advisor war in ukrain | society | terrorism

この調査は、2022年11月25日~12月9日に75歳以下の成人19,003人を対象に、イプソスのグローバルアドバイザー オンライン調査プラットフォームで実施したものです。その調査結果は、1月24日にワシントンで開催される会議で発表され、駐米ウクライナ大使のOksana Markarova氏がコメントする予定です。

主な調査結果

「他の主権国家が攻撃された場合、自国は支援しなければならない」という意見に多くが同意(世界平均70%、2022年3月~4月の調査と比較して1ポイント減)しました。一方で「ウクライナ紛争への軍事的関与は避けるべきだ」という意見にも多く(71%、1ポイント減)が同意しています。

依然として半数以上が、ロシアに対する制裁のために燃料やガス代が高くなることは、他の主権国家を守るために必要なことだと考えています(53%、2ポイント減)。イプソスの調査では、世界中でインフレが最大の懸念事項であるにもかかわらず、エネルギーや食料の価格に影響があってもウクライナを支援するためにロシアへの経済制裁は必要だと考える人が、ロシアへの制裁が自国に与える経済的影響に見合わないと感じる人より多く、調査した28カ国で平均15ポイントの差がありました(40% vs 25%)。

しかし今回の調査では、疲弊の懸念も指摘されています。世界的に見て「自国はウクライナ難民を受け入れるべきだ」(66%、2022年3月~4月期から7ポイント減)、「ウクライナに対して何も行動を起こさないことは、ロシアが欧州やアジアの他の地域でさらなる軍事行動を起こす引き金となる」(63%、5ポイント減)と考える人が減少しています。また、「ウクライナの問題は我々には関係なく、干渉すべきではない」(42%、3ポイント増)という意見もやや多くなりました。

しかし、EUやNATOに加盟している13カ国とオーストラリア(つまり「西側」)では、ロシアの石油やガスの輸入を制限することは、たとえこの冬の暖房を制限しなければならないとしても、維持することが重要であるという意見が3分の2を占めています。この見解は、ハンガリーを除く13カ国すべてで過半数を占めています。

米国でも同じ13カ国の平均でも、ロシア軍がウクライナの領土から撤退するまでウクライナを支援し続けることに57%が賛成しています。ここでも、スウェーデンの69%からハンガリーの37%にまで、支持についての差は大きく広がっています。

NATO加盟国のうち、米国、カナダ、英国、フランス、オランダ、ポーランドでは、自国がウクライナ軍に武器や防空システムを提供することを支持する意見が過半数を占めました。

調査結果の詳細

世界は依然として注視している

戦争が始まってから約1年、調査対象の28カ国の平均で64%が、ロシアのウクライナ侵攻に関するニュースを注視していると回答しています。一方、インフレや物価上昇に関するニュースは82%、気候変動や悪天候に関するニュースは70%が注視していると回答しています。

2022年3月~4月に調査した25カ国全体では、ウクライナ紛争を注視している成人の割合は平均5ポイントしか低下していません。米国やそれに次ぐNATOの8大国では、5ポイント以上低下していません。ラテンアメリカは、この紛争への関心が大きく後退している唯一の地域です。

制裁に対する温度差   

ウクライナへの侵攻は対応に値するというのが、多くの国における一般的な見方です:

  • ロシアを主要な国際スポーツ大会から排除し続けるべきだという意見に、グローバルで66%が同意しており、3カ国を除くすべての国で過半数が同意している。
  • ウクライナで何もしなければ、ロシアが欧州やアジアの他の地域でさらなる軍事行動を起こすことを助長するとの意見に63%が同意し、2カ国を除くすべての国で過半数を占めた。

しかし、「ウクライナの問題は我々には関係ない、干渉すべきではない」という意見には平均で58%が同意していないものの、アジアやラテンアメリカの多くの新興国ではその意見に過半数が同意しており、トルコ(13ポイント増)やドイツ(11ポイント増)では2022年3月~4月の調査以降、その傾向が顕著になってきています。

ロシアに対する経済制裁については、世界の世論はさらに二分されています。

平均で45%が自国がロシアに対して最も厳しい経済制裁を適用すべきだという考えを支持し、25%が反対しています。米国、カナダ、オーストラリア、日本、英国、ハンガリーとイタリアを除くすべてのEU加盟国で賛成が多数を占める一方、それ以外の国ではそうではありません。トルコとハンガリーでは、厳しい対ロシア制裁に反対する人が賛成する人を2桁の差で上回りました。

平均で53%が、対ロシア制裁のために燃料やガス代が高くなることは、他の主権国家を守るために価値があると回答していますが、チリの34%から韓国の72%まで、ここでも同意には大きなばらつきがあります。

ウクライナ支援のコストへの懸念

グローバルの平均で3分の2近く(64%)が、「現在の経済危機を考える」と、自国が「ウクライナに財政支援をする余裕はない」と考えており、スウェーデン、オランダ、カナダを除く調査対象国のすべてで過半数を占めています。2022年3月~4月の調査以降、この意見への同意は、多くの欧米諸国、特にフランス、ドイツ、ポーランド、日本で大幅に増加しています。

しかし、「エネルギーや食料の高騰がしばらく続くとしても、ウクライナを支援し、ロシアに戦争終結を促すために経済制裁は必要」、または、「ロシアへの制裁は、(自国の)エネルギーや食料価格に与える経済効果に見合わない」という二つの意見のうちどちらの意見に賛同するか尋ねたところ、世界全体で40%が前者を選択、25%が後者を選択しました。スウェーデン、ポーランド、英国、オーストラリア、日本、韓国、カナダでは、制裁賛成派が30ポイント以上リードしています。一方、ハンガリー、インドネシア、マレーシアでは、反対派が圧倒的に多くなっています。

ウクライナ難民の受け入れに対する意欲の低下

平均で3分の2(66%)が、自国はウクライナ難民を受け入れるべきだという意見に同意しています。戦争から逃れてきたウクライナ人を迎え入れる意向は、英国(81%)、オランダ(80%)、スウェーデン(79%)で最も高くなっています。しかし2022年3月〜4月の調査以降、調査対象となったEU10カ国のすべてで、ウクライナ難民の受け入れに対する支持率が少なくとも6ポイント低下しており、中でもドイツとベルギーで14ポイントも低下し、米国においても同じことが言えます。

NATO諸国の多くで、ウクライナへの軍事支援を支持する声が優勢

調査対象のどの国でも、自国が軍事的に関与することは避けるべきだという意見が引き続き大半を占めています(平均で71%)。さらに、ウクライナへの軍隊派遣を過半数が支持する国はありません。

しかし、自国がロシアとの外交関係を維持することを支持する人は世界平均で40%に過ぎず、この割合は2022年3月~4月からほとんど変化していません(わずか2ポイントの上昇)。ロシアとの国交維持への支持は、インドネシア(73%)、インド(66%)、トルコ(62%)の3か国のみで強固な割合を占めています。ポーランド(21%)では最も低く、米国(33%)では平均以下です。

さらに、西側のほとんどの国ではウクライナへの軍事支援を支持する意見が多くなっています。

調査対象となったNATO加盟12カ国の平均で:

  • ウクライナに隣接するNATO諸国への部隊派遣について、44%が支持し、反対は31%。反対が賛成を上回るのは、ハンガリー、イタリア、トルコ、ドイツの4カ国。最も支持率が高いのはカナダ(59%)で、米国は48%である。
  • 自国がウクライナ軍に武器や防空システムを提供することに48%が支持し、反対は29%。反対が賛成を上回るのは、ハンガリーとイタリアだけである。最も支持率が高いのは、英国(63%)で、米国は54%である。

本調査について

これは、2022年11月25日~12月9日に、カナダ、マレーシア、南アフリカ、トルコ、米国の18~74歳、タイの20~74歳、インドネシアの21~74歳、その他20カ国の16~74歳の成人19,003人を対象に、イプソスのグローバルアドバイザー オンライン調査プラットフォームで実施した28カ国の調査の結果です。

社会