世界が懸念していること – 2023 年5月

イプソスの「世界が懸念していること調査(What Worries the World)」において、インフレは過去14ヶ月間、世界の懸念事項のトップとなっています。

物価上昇は、29カ国平均で10人に4人(41%)の人が懸念しています。

イプソスが毎月実施している「世界が懸念していること調査(What Worries the World)」では、一般の市民が現在最も重要な社会問題や政治問題は何であると考えているのかを調査し、最新のスコアとその背景を10年分のデータをもとに探ります。今ウェーブは、2023年4月21日~5月5日に実施されました。

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主な調査結果

  • 今月もインフレが最も高い懸念事項である。歴史的な高水準であるにもかかわらず、今月も懸念のレベルは変わらず、41%が言及している。
  • アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、英国、インド、ポーランド、シンガポール、米国、トルコの11カ国が、物価上昇を最大の懸念事項としている。先月より3カ国少なくなっている。
  • 調査対象の29か国平均ではインフレへの懸念がトップで、貧困/社会的不平等(30%)、犯罪と暴力(29%)、金融政治腐敗(27%)、失業(27%)と続く。これらが世界の懸念事項のトップ5を構成している。
  • 気候変動は依然として世界第7位の懸念事項であり、16%が懸念している。ドイツでは31%で、2022年10月以降で最も高くなっている。
  • コロナウイルスの懸念は先月から変わらず、18 項目中17 位で、懸念事項に挙げたのは10人に1人以下(6%)。
  • 世界の国別平均では、自国が正しい方向に向かっていると答えた人は38%で、やや楽観的な印象がある。これは、先月より2ポイント、昨年同時期より3ポイント高い数値である。
  • このように全体的にはわずかながら楽観的な方向に進んでいるが、アルゼンチンでは悲観的な見方が強まっている。アルゼンチン人の10人に9人以上(92%)が、自国は間違った方向に進んでいると考えている。また、自国の経済状態についても、「良い」と答えた人はわずか2%で、過去最低を更新した。 

Ipsos | What worries the world | the top five worries

Inflation

Ipsos | Inflation

10人に4人(41%)は、インフレが自国に影響を及ぼす最大の問題のひとつであると回答しています。これは先月と同じスコアであり、14ヶ月連続で「世界が懸念していること調査(What Worries the World)」のトップとなりました。
物価の上昇を最も懸念している国はアルゼンチンで、76%の人が「心配だ」と回答しています。これは、これまでに調査した国の中で、インフレに対する懸念の最高水準です。逆にトルコでは、生活費の懸念が2022年11月(当時64%)より20ポイント低くなっています。しかし、依然として同国のトップの懸念事項であることに変わりはありません。

アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、英国、インド、ポーランド、シンガポール、米国、トルコの11カ国で、インフレがトップの懸念事項となっています。これは先月より3カ国少なく、コロンビア、スペイン、韓国では他の問題が優先されています。

インフレに対する市民の意識については、29カ国の新しいグローバルインフレモニターGlobal Inflation Monitorをご覧ください。

経済に関する満足度

調査対象29カ国全体の平均で、自国の経済状況を「良い」とする人は35%で、先月から1ポイント増加しました。

先月と比較して「景気が良い」と答えた人が最も増加したのは、トルコ(9ポイント増の32%)とアメリカ(7ポイント増の37%)です。メキシコは3ポイント上昇し、過去最高のスコア(52%)を記録しました。

一方、景況感が最も低下したのはドイツ(4ポイント減)です。

アルゼンチンでは、現在の経済状況を「良い」とする人の割合が3ポイント低下して2%となり、悪い方から悪い方へと変化しています。これは、2010年3月の調査開始以来、ハンガリー(2011年12月)、スペイン(2012年12月)と並んで、「景気が良い」と答えた人の割合が最低のスコアとなっています。

気候変動

「気候変動」は、世界が懸念していること調査において、「医療」と「税金」の間、18項目中7位にランクされています。
ドイツは、気候変動について最も懸念している国であり、31%が気候変動を国内の懸念事項として選択しています。ヨーロッパが夏に向かい始めたこの時期、ドイツでは昨年10月以来、10人に3人以上が気候変更を懸念事項として挙げていることがわかりました。5月のスコアは、作年同月比で5ポイント高くなっています。

この春に猛暑が続いたスペインでは、今月は5ポイント上昇し、24%が懸念事項として気候変動を挙げました。スペインがこの問題に対してより高い懸念レベルを記録した月は、他に1度しかありません(2022年9月の25%)。スペインにおける気候変動への懸念は、2023年には例年の5月よりもはるかに高くなっています。昨年より11ポイント、2021年より15ポイント高くなっています。

コロナウイルス

コロナウイルスは「社会プログラムの維持」と「信用へのアクセス」の間で、18項目中17位にランクされています。

29カ国の20人に1人(6%)がパンデミックを自国の懸念事項として選んでいます。

2023年5月のスコアは、先月と同じですが、年初より7ポイント低く、昨年のこの時期より10ポイント低下しています。
シンガポールは、4人に1人(26%)が懸念事項として挙げており、急増した罹患を最も懸念している国です。先月より16ポイント高くなっています。

2位はタイ(19%)、3位はマレーシア(18%)で、今月はそれぞれ8ポイント、5ポイント増加しました。

貧困と社会的不平等

貧困と社会的不平等に関する懸念は18項目中2位で、30%が自国の問題であると回答しています。
これは、2022年2月に30%が懸念事項であると回答して以来、不平等に関するスコアが最も低くなりました。世界で30%を下回ったのは、パンデミックのピークだった2021年2月で、その時は52%がコロナウイルスについて懸念があると回答しています。

タイは45%が不平等を懸念事項として選択し、不平等を最も心配している国です。今月は6ポイント増加しました。またタイだけでなく、日本(38%)、オランダ(35%)でも1位の懸念事項となっています。
シンガポールは不平等に対する懸念が最も低く、12%に留まりました。

犯罪と暴力

ほぼ10人に3人(29%)が、犯罪と暴力を自国に影響を及ぼす最大の懸念事項のひとつとして選択しています。

犯罪に対する懸念は、やや高めの水準にあります。先月の30%に続き、2023年5月の数値は、2020年4月にコロナウイルスが調査に加わって以来、2番目に高い懸念レベルとなっています。2020年3月当時は、32%が犯罪を自国の最重要の懸念事項だと考えていました。

2023年5月、犯罪に対する懸念はラテンアメリカで最も高くなっています。チリ(68%)、ペルー(58%)、メキシコ(55%)が、この問題に対する懸念が高い4カ国に名を連ねています。ブラジル(39%)、チリ、メキシコ、ペルー、スウェーデン(52%)では、トップの懸念事項となっています。

この1年の変化を見ると、懸念はチリと米国で10ポイント高く、メキシコで11ポイント低くなっています。


本調査について

イプソスの「世界が懸念していること What Worries the World調査」は、世界29カ国の市民が現在最も重要な社会問題や政治問題は何であると考えているのかを調査し、最新のスコアとその背景を10年を超えるデータをもとに探ります。

2022 年 12 月 22 日~ 2023 年 1 月 6 日に、カナダ、イスラエル、マレーシア、南アフリカ、トルコ、米国の18~74歳、インドネシア、タイの20~74歳、その他21カ国では16~74歳の成人を対象に、20,570人のオンライン調査を実施しました。

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