世界が懸念していること - 2023 年9月:犯罪への懸念がパンデミック前以来の高水準に
犯罪と暴力に対する懸念は、新型コロナウイルスのパンデミック以前の2015年以来、最高水準にあり、3人に1人(32%)が自国における大きな懸念事項であると答えています。
過去 18 カ月間、29カ国で懸念事項のトップとなっているインフレに次いで 2 位にランクされています。
イプソスが毎月実施している「世界が懸念していること調査(What Worries the World)」では、一般の市民が現在最も重要な社会問題や政治問題は何であると考えているのかを調査し、最新のスコアとその背景を10年分のデータをもとに探ります。今ウェーブは2023年8月25日~9月8日に実施されました。
主な調査結果:
- 犯罪に対する懸念はパンデミック以前に比べ最高水準にある(32%)。
- しかし、インフレは依然として最大の懸念事項であり、38% がインフレを懸念事項に挙げている。
- ドイツは、 「正しい方向に向かっている」および経済状況を「良い」とするスコアで最低を記録している。
- ベルギーは、経済状況を「良い」とするスコアで過去最高を記録し、ベルギー国民の経済に対する見方は過去12カ月で全29カ国中最も改善した。

犯罪と暴力
犯罪と暴力に対する懸念はパンデミック以前に比べ最高水準にあり、29 カ国の 3 人に 1 人 (32%) が懸念事項として挙げています。 新型コロナウイルスが懸念事項として、世界が懸念していること調査に追加される前月の2020年3月にさかのぼると、33%が犯罪と暴力を最大の懸念事項だと考えていました。
世界的にみると、今年は犯罪に対する懸念が着実に高まっています。今年の初めには、4 人に 1 人 (26%) が、犯罪は自国における主要な問題であると回答し、今月は犯罪に対する懸念は過去 8 年間で最も高い水準の 1 つとなっています。 2018 年 2 月には、35% が懸念事項として犯罪を選択しており、2015 年以来最も高いスコアとなっています。
2023 年 9 月の各国の様子をみると、韓国での懸念が 18 ポイント上昇し、最も懸念が高まりました。 10人に4人以上(42%)が、自国に影響を与える最大の懸念事項の1つであると回答しています。これは、 韓国での一連の暴力事件が背景にあります。今年2月には犯罪に対する懸念はわずか7%で、インフレや失業などに比べ低い順位にありました。過去8年間で、犯罪と暴力が韓国人にとって最大の懸念事項となったのは今回が初めてです。
ペルーは現在、犯罪を最も懸念している国です。 9 月には懸念が 6 ポイント上昇し、63% が懸念事項として選択しています。
インフレ
29 カ国のほぼ 10 人に 4 人 (38%) が、インフレを自国におけるの最大の懸念事項の 1 つとして挙げており、過去 18 カ月間、世界が懸念していること調査において最大の懸念事項となっています。
グローバルレベルで見ると、物価上昇に対する懸念は、42% が自国の懸念事項として挙げた 6カ月前のピーク時に比べて 4 ポイント低下しています。
最も懸念を示している国はアルゼンチンで、3分の2(66%)が懸念していると回答しました。シンガポールは先月から懸念が10ポイント上昇し現在第2位で、10人中6人(59%)が生活費を問題として挙げています。
カナダ、トルコ、オーストラリアが残りのトップ 5 を占めています。
インドネシアは依然としてインフレに対する懸念が最も低い国であり、同国が直面する最大の懸念事項の一つとしてインフレを挙げる人は5人に1人(17%)未満でした。

気候変動
5 人に 1 人 (19%)が気候変動を自国の最大の懸念の 1 つとして挙げており、18 の調査項目の中で 7 位にランクされています。
ここ数年、北半球が夏を終える9月になると、毎年、懸念が前年に比べわずかに上昇しています。昨年の今頃、世界的な懸念は 18% でしたが、2021 年には 16% でした。
今月、最も懸念を示している国は日本で、3 人に 1 人 (32%) が懸念事項として挙げています。スペインでは今月、気候変動に対する懸念が過去最高レベルとなっており、26%が気候変動を懸念事項として挙げています。これは昨年9月に記録した、同国のこれまでの最高記録だった25%を上回るものです。
正しい方向/間違った方向
世界のほぼ 10 人に 4 人 (38%) が、自国は正しい方向に向かっていると答えています。これは8月に比べて2ポイントの微増となっています。
9月、ドイツは過去10年間で最も低いスコアを記録し、 4 人に 1 人 (24%)しか自国が正しい方向に進んでいると回答しませんでした。ドイツの同スコアは、46%が自国が正しい方向に進んでいると答えた2022年3月以来、着実に低下しています。過去 2 カ月でスコアは 16 ポイント低下しました。
これはドイツ人が自国の経済状況をどのように捉えているかに反映されています。 自国の経済は良いと回答したのは36%で、これはドイツで過去最低のスコアとなっています。
一方、南アフリカでは自国の方向性について、先月29カ国の中で最低の14%を記録しましたが、現在は27%が自国は正しい方向に進んでいると回答しています。ペルーは正しい方向に進んでいるというスコアで6ポイント減少し、現在最下位となっています。
経済に対する満足度
29 カ国の中で、シンガポールは依然として現在の経済について最も前向きであり、4 分の 3 (75%) が現在の経済状況を良いと回答しています。
今月、タイ (+9 ポイント) とマレーシア (+8 ポイント) では、前向きな経済認識が最も大きく上昇しました。南アフリカ (7 ポイント増の 25%) も上昇し、2022 年 4 月 (同じく 25%) 以来の最高スコアを記録しました。
一方、4カ月にわたる安定と回復の後、スウェーデンの経済状況を良いとするスコアは9ポイント低下しました。ペルーとドイツも今月7ポイント低下しました。
先月から3ポイント上昇し、ベルギーは2022年2月以来最高の経済を良いとするスコアを記録しました(いずれも42%)。ベルギーでは過去 12 カ月間、調査対象のどの国よりも経済に対する満足度が高まっています。